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楽しい船の旅、地獄を見たなのです!

読んでいただき、ありがとうございます。

ブクマしてくれた方、ありがとうございます。


感想、レビューお待ちしてます。

交渉は難なく決まった。

オルトガ師匠とガナンドさんが知り合いってこともあり船に乗せてくれるようだ。

一応、船乗り見習いとして登録するらしい。

元々の船員に休暇を与え、俺達が代わりに乗ることになった。


「ありがとう、ガナンド」

「私とオルトガの仲ではないですか、気にしなくていいんですよ」

「そういうわけにはいかん、船に乗っている間は何でも手伝うから言ってくれ」


ガナンドさんは、オルトガの為だと言って無料で乗せてくれると言っていたのだ。

それは、さすがに気がひけるからと言ったら、船で雑用をするということになった。


「これで、船に乗れるのです?」

「そうですよ、ディベル御嬢さん」

「ありがとうなのです。サクジロウも、ししょーも困ってたので助かったのです」

「プヒーッ」


ディベルも心配していたようで、ガナンドさんにお礼を言っていた。

船員に案内されて、俺とディベルは船室に向かう。



「しかし、オルトガも隅に置けないな。いつの間にか弟子をつくって、さらに世界を巡る旅をするなんて。鬼のオルトガも、タダ酒飲みのオルトガも見る影がなくなりましたね」

「あぁ、こんな日が来るなんて想像もしていなかった。正直、あのまま腐って終わるもんだと思ってたくらいだからな」

「なんで、あの二人に元騎士ということを隠していたんです?」

「別に隠していたわけじゃねぇ、言う必要がなかっただけだ。たぶん、あの二人はこの国の人間じゃない、言ったところで何も変わらんさ。現に王都でも色々あったが、サクジロウは詮索してこなかった。だから、俺もあいつらのことを詮索しないと決めた」

「何かワケありな二人なのですか?」


ガナンドが、サクジロウとディベルについて聞いてくる。

だが、オルトガは首を振って答えない。


「仕方ないですね。一刻と半後に最後の船が出ますので、それまで船内でも見学でもしていてください」


そう言って笑っているガナンドに感謝した。



「凄いのです!船ってはじめてなのです!」

「プヒーッ!」


ディベルとアレキサンダーが、はしゃいでいる。

見るもの全てがはじめてなのか、あちこちを走りまくっていた。

危ないから落ち着けと言っても聞きやしない。

船倉は搬入をしているので、近づかないように注意されたので大丈夫だと思うが。


「うわーっ、凄いのです!これが全部海なのです!」

「プヒーッ!」


甲板に出て、その先を望むと広大な海が果てまで続いている。

元の世界でも、見たことない大海原が広がり感動が込み上げてきた。

本当に凄い景色だなぁ。


「おうっ、ここにいたか探したぞ」


オルトガ師匠は、ガナンドさんと話が終わったのか、船に上がってきたようだ。


「ししょー見てください、海なのです!凄いのです、大きいのです!」

「プヒーッ、プヒーップヒッ!」

「そうだろう、あの水平線の向こうに隣の国があるんだぞ」


ディベルに、海と空の境目を教えたり、その先に他の大陸が幾つもあることを話している。

女神の知識があるといっても、実体験するのはやはり違うのかディベルは興奮が収まらない。

すると、鐘の音がけたたましく鳴り響き船が動き出す。

この後、地獄のような惨劇が起こることを、誰も知らず航海がはじまる。



船は帆に風をはらみ、大海原を突き進む。

陸が見えなくなる頃には、死屍累々の光景が広がった。


「サクジロウ、ぎもぢわるいのでず」

「ま、まさかこんなことになるとは」


ディベルとオルトガ師匠が船酔いで苦しんでいる。

まぁ、はじめての船で揺れに耐性がないぽんこつ女神は別として、オルトガ師匠は勝手に甲板で酒盛りはじめて自業自得だ。


「おろろろろろろろろろろろろろっ」


とうとう、海に向かって吐いた。


「サクジロウ、あだぐじ死んでじまうのです。サクジロウどの旅だのじがったのです。」

「プヒーッ」


ぽんこつ女神は、縁起でもないことを言いはじめた。このくらいの揺れは、女神のチカラで何とかならないものなのか?

心配そうに、アレキサンダーが顔を舐めている。

あぁ、豚臭いヨダレまみれになって、ぽんこつ女神がさらに苦しみ悶えはじめた。期待を裏切らないな。


「お二人とも大変そうですね」


そういって、ガナンドさんが現れた。

手には、水と酔い止めの薬を持っているようだ。

ありがとうございますと、お礼を言いディベルに薬を飲ませる。

うっ、豚臭い。


「俺にも薬くれ」

「ダメですよ、オルトガはお酒で酔っているんですから薬飲んでは」

「おろっ、おろろろろろろろろらろろろろろっ」

「弟子には、見せられない姿ですね」


オルトガ師匠は、ガナンドさんに背中をさすってもらいながら吐き続けていた。



船に乗って二日ほど経った。

ディベルも、揺れに慣れてきたのかオルトガ師匠と甲板で釣りをしている。

俺は船の上で特訓中だ。


「また、釣れたぜっ」

「さすがししょーなのです!」

「そうだろっ、俺にかかればちょろいもんよ!」

「プヒーッ!」


楽しそうに釣りをしているオルトガ師匠が、俺に声をかける。


「サクジロウも、がんばれよっ!」

「がんばるのです!」

「プヒーッ!」


俺は、船の先で立っている。

まぁ、殆ど立っていられてないけどな。船の揺れに翻弄されながら、何度も尻餅をついて転がった。

船の中でも一番揺れる船首で、バランスを鍛える修行だそうだ。

体幹と足の筋力強化にもなるらしい。

海に放り出されないよう腰に紐を巻いているが、正直気が気でない。


「隣の大陸に着くまでには、動かず立っていられるようになれ」


また、無茶なこと言ってはじまった特訓だ。

次の日には、水の入った桶を持たされた。


船旅です。

サクジロウは、地味に強化されていきます。


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