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港街、はじめての海なのです!

いつも、読んでいただき、ありがとうございます。

ブクマしてくれた方、ありがとうございます。


感想、レビューお待ちしてます。



オルトガ師匠が一緒に旅に行くことになって道中が賑やかになった。

王都から西に向かい、港のある商業都市を目指す。


「こっからだと、途中にある町を経由して十日だな」

「途中の町は何があるのです?」

「それが、何もないんだなぁ」

「残念なのです」


ディベルは、オルトガ師匠の答えに残念そうにしている。

まぁ、その町には滞在するわけでもないし、港街に行けば新鮮な魚が食えるんだからと言ったら、目を輝かせていた。


「知ってるか、新鮮な魚は生で食えるだぜ!刺身って言って、これが冷酒がとあって美味いんだ」

「そうなのです?お魚は焼いたのしか食べたことないのです」


この国は流通は整っているが、冷蔵冷凍技術はあっても時間がかかりすぎて、内陸の町や王都は魚を生で食べることはほとんどない。

氷の魔法があるのに、この国の魔導師は生活に魔法を役立てようと考えないらしい。


「魔導師はエリート面して、王都で引き籠ってる奴らばかりだからな。自分達の研究しか頭にないのさ」


なるほど、そんな奴らが女神の力なんて手に入れたら、何するか分かったもんじゃない。


「まぁ、王宮魔導師の奴らは自分達以外を見下すから、騎士団にも嫌われてる奴が多いんだ」

「まったく、とんでもないのです」

「プヒーッ」


ディベルとアレキサンダーも、なんとなくで憤慨している。

さて、あの女騎士の情報が、そのクソ魔導師達に伝わるのも時間の問題だ。

早めに、この国を出るのがいいだろう。



その後順調に進み、途中の村で一泊し何事もなく港街に着いた。

さすが海が近いだけあって潮の香りがする。

ここが、港街ワドンか。


「これが、海の匂いなのですね」

「お嬢ちゃんは、海はじめてか?」

「はじめてなのです。知識では知ってましたが、実際に見るのははじめてなのです」


街に入る前に、手前の丘から見える海と潮の香りの風。俺も久しぶりに海を目の当たりにして感慨深い。


「早く街に入ろうぜ、美味い魚が俺を待ってるんだ!」

「そうなのです。わたくしも、まだ食べたことない料理をたくさん食べたいのです!」

「プヒーッ、プヒーッ!」


二人と一匹が、まだかまだかと騒ぎ立てる。

門で手続きをしていると、守兵さんに笑われてしまった。

本当に恥ずかしかったので、手刀をくらわす。


「ほんへぇっ」

「あがっ」

「プヒッ」


今までの手刀で一番の手応え。普段特訓中に一撃も当てることのできないオルトガ師匠の頭にも手刀が決まった。


「すげぇなサクジロウ、今のは避けられなかったぞ。修行での一撃なら、奥義を授けてもいいくらいだ」

「そんなに頭を叩くと、背が伸びなくなるのです」

「プヒーッ」


二者一匹三様の反応を見せる。

やれやれと思い、オルトガ師匠がお気に入りのだという食堂に向かった。


メニューを見ると、美味しそうに写実画で描かれた魚料理に、ディベルがよだれを垂らしている。アレキサンダーも、フンフンと鼻息が荒い。

オルトガ師匠は、飲み物を頼むと同時に刺身の盛り合わせを頼んでいた。


「きたきたーっ!美味そうな刺身ちゃんが」

「ふへぇ、これが刺身なのです?綺麗なのです!」


運ばれてきた、刺身の盛り合わせを見て興奮している二人。

アレキサンダーに取り分けた物を床に置くと、豚も興奮している。

この世界の魚は、元の世界の魚と似ていて味も変わらなかった。

まさか、本当に刺身があるとは思わなかったが。


「美味しいのです!焼いた魚とは違う美味しさなのです!」

「そうだろう、この味だけは港街に来なけりゃ味わえないからな」


オルトガ師匠は、酒を飲みながら刺身をつまんでいる。

ディベルとアレキサンダーは、後から運ばれてきた料理を夢中に食べてる。

いつもの様に、賑やかな食事風景によかったなと思う。



いい感じに腹も膨れて休んでいると、オルトガ師匠が聞いてくる。


「それで、これからどうするんだ?」


そんな問いかけに、俺は簡単に答えた。


「とりあえず、隣の国に向かいます」

「そうか、じゃあ船に乗るんだな?商船はいくらでもいるが、定期船は入国できる数が決まってるから、すぐに船に乗れるかわからんぞ」


えっ?はじめて聞く話に驚いた。

あんなに船があるのに、一般人が乗れる船は殆どないらしい。


「まぁ、簡単に言えば密入国などの面倒ごとがない様に、お互いの国が入国する船の数を制限してるってわけだ」


特に商船は厳しいらしい。

なるほど、お互いの国が信頼してないとできない管理の仕方だ。

とにかく、港に行かなければ定期船の予定も分からないので向かうことにした。


「隣の国に行く定期船は七日後ですね」


定期船の受付嬢が笑顔でそう答える。

昨日、定期船が出たばかりで次に定期船が出るのが七日後だということだ。

結構時間が空いてしまう、下手したら王都から俺たちを追って女騎士か魔導師の追っ手が来てしまうかもしれない。


「タイミングが悪かったなぁ」

「船には乗らないのです?」

「乗る船が昨日出ちまったらしい」


オルトガ師匠が、バツの悪そうな顔でディベルと話している。

何か他に方法はないだろうか?

そんなことを考えてると、オルトガ師匠に近づく影が見えた。


「オルトガじゃないか!こんなところで会うなんて珍しい!」


一人の男が、急に声をかけてきた。


「お前、ガナンドじゃないか!こっちに来ていたのか」

「久しぶりだな、ちょうど仕事で来ていたんだ」


どうやら、オルトガ師匠の知り合いらしい。


「サクジロウ、紹介するわ。こいつは、昔からの知り合いで商人のガナンドだ」


そう言って、ガナンドさんにも俺とディベルを紹介する。

少し驚いた様な顔で俺を見る。


「サクジロウ君は凄いな、オルトガの修行についていけるなんて。昔は鬼のオルトガとか言われて、他の騎士から恐れられてた奴なのに」


なにそれ?はじめて聞くんですけど?

というか、やっぱり元騎士だったのか。

オルトガ師匠を見ると、恥ずかしそうにモジモジしている。


「なにそのキャラ、気持ち悪い」


そう言われて、ショックで落ち込むオルトガ師匠。

さらに、とどめを刺すディベルの一言が笑えた。


「気持ち悪くても、ししょーはししょーなのです!」


慰めるつもりだったのだろうが、その言い方はダメだ。

ガナンドさんが、後ろを向いて笑いをこらえている。

オルトガ師匠が涙目で、ガナンドさんを睨んでる。


「それはいいとして、ガナンド頼みがあるんだが」

「なんだい?お金を貸すこと以外なら聞いてあげるよ」

「隣の国に行きたいんだが、お前の船に乗せてくれないか」


そう言って、オルトガ師匠がガナンドさんに交渉しはじめた。


なんのイベントもなく港街です。

ここは流して、隣の国に行きます。

次はの国では、冒険します。

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