新しい旅の、はじまりなのです!
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次の日、いつものように朝飯を買って道場に向かった。
ただ、違っていたのは旅に出る準備をしてきたということだ。
「どうしても、今日じゃなきゃダメなのです?」
「プヒ」
ディベルが寂しそうな顔で俺を見る。
アレキサンダーも元気がない。
しかし、この国が女神を求めている以上、王都に身を置くことはできない。
聖騎士は、もう関わらないと言っていたが、他にも女神を探している組織があるはずだ。
「女神とばれてはダメなのです?」
「もし、女神とばれた場合に無事でいられる保証がない。
捕まって、体を調べられたり実験されたり、一生閉じ込められてしまうかもしれない。この国の目的が分からない以上は接触しないほうがいい」
もし、女神のチカラを手に入れることが目的ならなおさら危険だ。
「わかったのです」
「プヒー」
それに、あの女騎士は確実に接触しようと動くはずだ。
いつ意識が回復するか分からないが、すぐにでも離れたほうがいいだろう。
そんなことを話していると、道場はすぐそこに見えてきた。
「それで、王都を出るというのか」
オルトガ師匠がこちらを見ずに言った。
多分納得していないと思うが、俺達の理由は話すことは出来ない。
「このままだとオルトガ師匠にも迷惑かけるし、元々暑くなる頃には旅に出る予定でした」
これは本当だ。あと二十日も経たないうちに、いっきに暑くなるだろう。だから、今旅に出ても出なくても変わりないのだ。
「修行はどうするんだ?まだ、俺から一本も取れてないぞ」
「修行は続けます。ただ、オルトガ師匠の特訓に比べれば易しいものばかりになってしまうけど」
オルトガ師匠の修行は厳しいが、自分が強くなっていくのが実感できるもので、それと同じような修行はこの先受けられると思えない。
残念だが、ここは割り切らないとダメだ。
「そうか、すぐ王都を出るのか?」
「いえ、一応道具屋で携帯食料やキャンプ用品の補充をしてからです」
「なるほど、なら買い物が終わったらここにまた来てくれねぇか。せっかく旅に出るんだ、餞別でも用意しておく」
「わかりました、それなら半刻後ぐらいにきますね」
オルトガ師匠は餞別を渡したいなんて言っていたが、一体何をくれるのだろう?もしかして、物凄い強い武器とか防具とか、あまつさえ奥義を教えてくれるとか?
そんなことを考えながら、道具屋に向かう。
「わたくしは、もう貰ったのです!」
「プヒーッ!」
「えっ、なんで先に貰ってるの?」
ディベルは、左手に綺麗な腕輪している。
アレキサンダーは、真っ赤なバンダナが首に巻いてある、しかも風もないのにヒラヒラとなびいている。
なにそれ、カッコイイ!
道具屋に向かう途中で自慢されて悔しかった。
暇なとき、何度か顔を出していたのもあって、旅に出ることを道具屋のお姉さんに話したら少しまけてくれた。
今日の昼には王都を出たかったので、寄り道せずに道場に向かった。
「よう、待ってたぜ」
そう言って、大きめの革の袋持ってオルトガ師匠が待っていた。
もしかして、あれが俺にくれる餞別かな。
だが、オルトガ師匠の口からは予想外の言葉が出てきた。
「俺もついていくぜ」
「はっ?」
「お前らの旅に、ついていくって言ってんだよ」
ちょっと待てってくれ、予想外すぎて頭が働かない。
「本当なのです!?ししょーも一緒に旅に行くのです!」
「そうだぞ、お嬢ちゃんも嬉しいだろ?」
「とっても嬉しいのです!」
「プヒーッ!」
「アレキサンダーも喜んでるのです!」
マジで言ってんの?
「道場はどうするんですか?」
「あぁ、マジで言ってるぞ。お前の修行も終わってないしな」
「今度は、わたくしも一緒に修行したいのです」
ディベルが嬉しそうにはしゃいでいる。
だが、オルトガ師匠がついてくると、ディベルのことや俺のことがばれてしまう可能性が高い。
さらに、また面倒ごとに巻き込んでしまう可能性もある。
「お前らが何者か、何が目的で旅するのかは詮索するつもりはねぇ。ただ、この世界は広いからお前達と色々見たくなったんだ。それに、可愛い弟子達を最後まで面倒見たいって師匠心さ」
そんな言葉を聞かされて、泣いてしまいそうだ。
もしかすると、オルトガ師匠は俺達のことを、なんとなく勘づいているのかもしれない。
それでも、味方になってくれると言い、そして俺達を最後まで面倒見てくれると言ってくれたのだ。
「それに、道場は聖騎士のラーディンに頼んであるから大丈夫だ」
なるほど、道場は新人騎士の合宿所として貸し出すらしい。
「わかりました、正直目的は無いようなものですが、よろしくお願いします」
「あぁ、よろしくな」
「ししょーも一緒なのです、嬉しいのです!」
「プヒーッ、プヒーッ!」
ディベルとアレキサンダーが飛び跳ねて喜んでいる。
これからは、もっと賑やかな旅になりそうだ。
王都編終了
ポンコツ女神のディベルと異邦人サクジロウの旅は、まだはじまったばかりなのです!




