ぽんこつ女神様じゃないのです!
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「はぁ、どうしたらいいんだよ」
そんなことを呟きながら、途方にくれている。
あの、ぽんこつ女神様マジで使えねぇよ。
転生されたのはいいが、今いる場所は草原のど真ん中。
右を見ても左を見ても、風になびく海原が地平の先まで続いている。
ちなみに、前と後ろは山が連なってる。
「とりあえず、街か村でも見つけないと」
愚痴をこぼしたところで、何の解決にもならない。
今は、とにかく安全な所を探そう。
凶暴なモンスターがいたり、盗賊とかいる可能性がある。
転生までして直ぐ死ぬとか勘弁したい。
「女神様、助けてくれよぉ〜」
泣き言だって言いたくなる。
そう思いながら歩きはじめた矢先に、突然地面が輝き光の柱が現れた。
「えっ、なにっ?いきなり敵なの?俺襲われちゃうの?」
魔法で攻撃されたのかと、辺りをキョロキョロ見渡したが誰もいない。
もしかして、モンスターが現れるの?
あたふたしながら、逃げ惑う様は無様でしかない。
まだ死にたくない、そう思ったとき声が聞こえた。
「じゃじゃーん、女神エインディベル参上なのです!」
溢れる光の中から出てきたのは、ぽんこつ女神様だった。
あさっての方に向かって、よく分からないポーズをとっている。
全身から冷や汗がどっと溢れてくる、安心感と共に残念な気持ちも溢れてくる。
「サクジロウさん、わたくしに何か御用なのです?」
とても楽しそうな声で話しかけてくるが、俺の前にはぽんこつ女神様の尻しか見えない。
「どこ向いて話しかけてんだよ。俺はこっちだ、ぽんこつ女神!」
「えっ?声は聞こえど姿が見えない。サクジロウさんは既にステルスのスキルを身につけているのです!」
使ってねぇよ、そんなスキル持ってもいねぇ。
キョロキョロしてるぽんこつ女神様の頭に、軽く手刀をくらわす。
「ふきゅっ」とよく分からない声を出すぽんこつ女神に文句を言う。
「何の説明もなしに、いきなり異世界に転生させるバカがいるか。突然何もない草原のど真ん中に送られて途方にくれてたわっ!」
そう言いながら、何度も手刀を頭にくらわす。
その度、「ふきゅっふきゅっ」と鳴いているぽんこつ女神。
「だって、わたくしも初めての転生で興奮してたのです。だから説明しなかったことも、少しは悪いかなって思ってたのです。送った後で気付いたから、サクジロウさんの呼びかけに応じて、わざわざこっちに来たのです」
こいつ、初めてだったのかよ。しかも、少ししか悪いと思ってないのか。
「もう少し考えてから行動してくれ。モンスターや盗賊がいるとか思わなかったのかよ」
そんなことを言い合いながらも、人がいる場所を探す為に俺達は歩き出した。
「とにかく、転生させたんなら何かあるんじゃないのか?ほら、何か凄いスキルを貰えるとか、ステータスがチートな感じになってるとか!」
「ほへっ?」
なんだこのアホ面は?
「そんなのあるのですっ!?凄いのです!サクジロウさんはどんな能力貰ったんです?」
何言ってんだ、このぽんこつ女神は?
あれ、俺の耳がおかしくなったのかな?
「お前が、俺に授けてくれるんじゃないのかよ!」
「わたくしは、そんなこと出来ませんよ?」
ニコニコ笑顔で、絶望を与えてきやがった。
「ななな、何言ってるんだ?転生する時に、女神エインディベルの力とか授けてくれるんじゃないの?あっ、もしかして凄い武器とかアイテムくれるんでしょ!」
顔が引きつりながらも、穏便に聞いてみる。
そうだよな、そうだと言ってくれ。そうじゃないと、俺の中の何かが音を立てて崩れちまう。
「んー、んーとね、ちょっと待ってなのです」
女神様は、袖の中をゴソゴソと探っている!
やはりそうだったのだ!きっとレアアイテムとか魔法の武器とか出すに違いない。俺は昂ぶる気持ちを抑えきれず、女神様急かした。
「じゃーん!サクジロウさんには、これを授けるのです!」
ぽんこつ女神の手の平には、どこかで見たことあるような飴が乗っていた。
透明な包紙に包まれた、色とりどりな飴だ。
「これ、すっごく美味しいのです!特別に五個もあげちゃうのです!うーん、わたくしってば太っ腹なのです!」
太陽のような、輝く笑顔のぽんこつ女神。
俺は、膝から崩れ落ちた。
「くっそーっ、エインディベルのぽんこつ女神!」
俺は、そう叫ぶとぽんこつ女神から飴をぶんどり、全ての包紙を剥がし纏めて飴を口に放り込むと、噛み砕いて食べた。
「あー、わたくしのことは、ディベルちゃんって呼んでって言ったのです。それにぽんこつ女神じゃないのです。だいたい、飴を一気に食べちゃうなんて、もったいないのです」
頬を膨らませてながら、女神エインディベル改めぽんこつ女神ディベルが怒っている。
「お前なんか、ぽんこつで十分だ!やーい、ぽんこつ女神、ぽんこつディベル!」
子供じみた挑発をする。
「ぽんこつじゃないのです。サクジロウの方が、おたんこなすなのでーす!」
ディベルも、負けじと言い返してくる。しかも、呼び捨てになってた。
そんな、言い合いをしながらも、いつの間にか歩いていた先に小さな村が見えてきていた。
この先、ディベルのぽんこつさを上手く書けるといいのですが(⌒-⌒; )