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世界崩壊の危機

 はじめまして、小田虹里と申します。


 この作品は、「COMRADE ~信じるべきもの~」の続編となっております。


 はじめて、「COMRADE」を読んでくださる方のためにも、前作にて登場したキャラクターの説明を、少しずつ入れてはおりますが、すべてを補いきれてはいないかもしれません。


 ご了承ください。


 前作の主人公は「ラナン」という少年でした。


 今回の主人公は、前作には登場のなかった「ルシエル」という魔術士です。


 彼もまた、別作品にて既に登場しているキャラクターであり、説明が不足しているかもしれません。逆に、これまで描かれなかった彼の姿を、映し出してもいきたいと思っております。


 これまでに出てきたキャラクターたちが、思い思いに活躍してくれるよう、見守っていきたい次第です。


 


 前置きが長くなりましたが、本編の方もどうかご覧になってみてください。




 私と、そしてこの作品と出会ってくださり、ありがとうございました。



 大地が大きく揺れた。地震。この地方では、珍しいものである。私はたまたま寝付けず、「城」の中にある自室にて、揺れが収まるのを待っていた。嫌な予感がする……この、地震は、ただの火山活動でも、プレートの移動でもない気配がすると、私の第六感が訴えかけてくる。


 そう、「神」がお怒りになっているのだ。


「滅びる……このままでは、世界が崩壊してしまう」


 私は焦りを感じていた。




 ときは、西暦七一二〇年。


 レジスタンス「アース」が革命をおこそうと、奮起している真っ只中のことである。レジスタンス「アース」のリーダーの名は「ラナン」。まだ、齢二十歳という若さでありながらも、強いリーダーシップを発揮し、一度はこの城、「フロート」が誇る魔術士部隊「レイアス」によって捕まるが、それすらも自らの力と変えてしまい、ラナン処刑の日となるどころか、民衆に「レジスタンスの重要性」、「真の平和」を問う機会としたのだ。




「諦めるな! 諦めなければ、人間、何だって出来るんだ!」


 ラナンは、自由を奪われた身体で民衆に訴えた。


「俺を信じろ! 自分を……信じろ!」


 そして見事、仲間に救い出され、今もレジスタンスとして活動をしている。


「力は、間違えば戦争を招く。だけど、上手く使えば世界を変える、ひとを変える、人生を変える」


ラナンは立ち上がると、「アース」のリーダーとして言葉を紡ぎ続けた。


「小さな人間でも、みんなで力を合わせれば、平和を築くことが出来るんだ。これからも、共に戦って欲しい。正しく、力を使いながら……!」


私はこのラナン処刑執行日。処刑台が造られた城下町には居なかった。城の……そう、今、ここにある窓から城下町の方を見て……未来を見据えていた。


ラナンを囲みながら、手を前に突き出し革命を約束する「アース」たちの様子を、ただただ、見守っていた。


「ディヴァインに、真の平和を!」


 私は、彼……「ラナン」に、賭けているところがあった。


 見守らねばならない、理由もあった。




 レジスタンスに盛大に暴れられ、まんまと逃げられてしまった後のこの国の王、フロート王「ザレス」は、大層はらわたが煮えくり返るほどの怒りをにじませながら、城へと帰還した。

 正直なところ、その様子を見て私は、どこか滑稽なものを見ているように思えて、内心で笑いがこみ上げるのを抑えるのに必死であった。


 内心での要らぬ感情や欲望を、表に出さないようにするのは、剣士として生きていく上でも、魔術士として生きていく上でも……要は、「大人」としてこの「城」に居座り続けるには、必要なことであった。


 無様。


 そんなことを、誰が直接当人に言えるものだろうか。


 私は、にこやかな笑みを浮かべながら、陛下を迎えた。そしてなだめては、ラナン討伐に加わることを約束したのであった。




 この世界は、古代呼ばれていた「地球」という星の名では呼ばれてはいない。今は、「ディヴァイン」という、新たな創造の神によって、築き上げられた世界と言われている。

 第四次世界大戦後、地球で栄えていた科学技術によって、人間たちは「核戦争」を起こし、自らを滅ぼしてしまったのだ。

 今のこのディヴァインは、そのためなのか……科学技術は衰退している。古文書によると、中世ヨーロッパの世界風景に近いものを感じる。だが、明らかに違う発展を遂げたという点がある。それが、先にも出てきた「魔術士」の存在である。


 科学の変わりに、「魔力」を持って生まれてくる人間が現れた。


 彼らは、三つの魔術士に部類されていく。


 「白魔術士」とは、別称「天使」。保守的な魔術が使え、傷を癒すことを主とする、サポート的な魔術を使うのだ。


 「黒魔術士」とは、別称「悪魔」。攻撃的な魔術を扱い、対象物を破壊したりすることができる。


 「神子魔術士」とは、その名の通り「神の子」と呼ばれ、黒魔術も白魔術も扱える、まさに最強の魔術士……いや、人間とも呼べる。


 「レイアス」というのは、今、この世界を支配している「フロート国」の最強右翼であり、例の神子魔術士のみを集めた精鋭部隊である。その魔術士によって捕まったというのに、見事に逃げ出した「アース」のラナンをはじめとする、同志「COMRADE」によるレジスタンス「アース」は、まさに最強の敵とも呼べる。


 ラナン=ヴァイエル。


 彼は、孤児であった。フロート直属の孤児院で十五になる年まで、双子の弟「レナン」と共に過ごし、十五になると、フロートのもうひとつの兵士部隊……とはいっても、そちらは「傭兵組織」である、「ラバース」という組織に身を寄せ、ふたり揃ってラバースにしばらくは身を寄せていた。しかし、それから三年後。ラバースの最下位Dクラスの隊長となっていたラナンは、そのときタッグを組んでいた「リオス」と共に、ラバースを脱退し、さらには、自らが倒した王国、「クライアント」の第三皇子であった「サノイ」を仲間とし、レジスタンスを立ち上げたのだった。

 レナンだけをラバースに残し、フロートから縁を切ったラナンを、レナンは快くは思っていなかった。自らの手で、レジスタンスを破壊しようと、ラナンを追っていたようだが、ことごとく追い返され、しまいには……今では、ラナンと共に旅をしている仲だ。


 何故、ラナンがここまで力をつけたのか。


 私には、すぐにわかった。


 それは、名前に秘密があったのだ。


 「ヴァイエル」


 ラナンのファミリーネームであるが、それは本当の名ではない。何故ならば、孤児には苗字は無いはずだからだ。ただし、兵士だけは孤児でも苗字を自由に名乗れることになっている。そういう法律なのだ。

 珍しい名前ではないが、あまりにも私の近しいものと同じ名前であり、かつ、動きも「あの子」に似ていた為、私は「あの子」が隠している関係に、すぐに気づいてしまった。


 カガリ=ヴァイエル。


 私の、この世界でただひとりの愛弟子であり、私の全てを……「魔術」以外、受け継がせた「息子」同然の子である。カガリは、孤児ではないのだが、幼き頃に生まれ故郷もろとも、家族も失ってしまっている。カガリはきっと、ラナンに私がそうしたように、自分の持つ力を受け継がせようとしたのだろう。




 きっと、「家族」が欲しかったのだろう。


 ひとは、独りでは生きられない。


 どれだけ強くなろうとも、こころを鋼にすることは出来ない。




「ルシエル様」

「カガリ……どうしたんだい?」

「どうしたも、こうしたも……今の揺れは、一体」

薄い茶系の髪色に、空を思わせる瞳を持った青年が、私の部屋を訪ねてきた。私の部屋の扉には、魔術によって鍵がかけられているのだが、この青年……カガリだけは、私の許可なく出入りが自由にできるようにしている。

 空色の瞳は、輝きを曇らせ、不安げな表情を浮かべている。まぁ、カガリはいつもこのように、陰を帯びたような顔をしているのだが……。

「地震だよ」

「それは分かっています。ここのところ、多くないですか?」

「そうだね」

「……師匠」

カガリは、眉をひそめて私の顔を覗き込んだ。それを見て、私はくすっと笑みを浮かべる。

「なんだい? 私の顔に何かついているかい?」

「隠していますね、何か……知っているんでしょう? この地震が、何によるものか……」

カガリとは、長い付き合いだ。昔はとても鈍い子だったけれども、ここのところは、感が冴え渡っている。「風の狼」……「ライローク」の民の生き残りのだけは、ある。


 カガリは、生まれつき強い「風」の要素を持っていた。


 「ライ」とは魔族語で、人間界の言葉に直すと「風」。

「ローク」も同様であり、人間界の言葉にすると「狼」という意味が有る。


他には、炎のローク「ファイローク」、水のローク「シュイローク」、雷のローク「レイローク」が存在している。その事実をカガリが知ったのは、つい最近のことである。


 「魔族」と「人間」とのハーフ。


 だからこそ、カガリには強い「風」の力が宿っており、カガリを守り、カガリの意志によって、風の力が解放される。


 カガリに従う、「風の要素」……「精霊」が、多く存在している証拠である。




 カガリはこれからの世界に、必要な人材だった。


 精霊のご加護を受けているカガリにしか出来ない、役割があった。


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