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「『愛する人』は妥協できない」
まだシリアスには入ってませんね―
擬人村。
そのつっかかるような言い方に慣れたころ、近くに最近越してきた人がいることを知った。
ちょうど同じ年齢の人だった。
興味を持って会ってはみたが、とても高飛車な女の人だった。
こういう人は僕には合わない。
この村の雰囲気も彼女には合わないだろう。
いずれこの村から姿を消すだろう、と思っていた。
擬人村。
豊かな自然、深い地域の関わり、都会のビルも見えないので嫌なことを完全に忘れられる。
そうテレビでは謳われていた。
しかし、裏を返せば便利な人工物はなく、その場所に縛り付けられる。
おしゃれなものが売っている都会からは遠く離れている。
しかし、それすら僕にとっては欠点に感じなかった。
僕はネットがなくても、外に出なくても、流行りに合わせなくてもよいのだ。
擬人村。
この何もない、平穏でいい村。
しかし、一つ、たった一つだけ平穏とは真逆のものがあった。