7.パーティー・騒ぎ!
俺を無理やり抱っこした父さんは、エミリーの部屋を訪れていた。
「ご主人様、どうかなされましたか?」
エミリーは何故ここに父さんと俺が来たのかを知らない。
でもそれは無理もないことだ。
俺が魔法を使えたなんて信じられないだろうし、第一、教えてもいないのだから。
父さんが口を開く。
「エミリー。お前、クリスに魔法を教えたりしたか?」
「いえ、クリス様に魔法を出すところを見せはいたしましたが、教えてなどはしておりません。」
「そうか…。」
余程さっきのことを信じられないのだろう。父さんは難しい顔をしていた。
何かあったのだと確信したエミリーが不安げな顔で尋ねる。
「あの、ご主人様、クリス様に何かあったのですか?」
「ああ、先ほどクリスの様子を見に部屋に行ったんだ。そしたらクリスがな、魔法を使って遊んでいたんだよ。」
「えっ?!」
エミリーも、信じられないという顔つきで俺を見てきた。
そんなに見つめんなよ、照れちまうじゃねぇか。
それと、あれは遊びじゃなくて特訓だよ、特訓!
エミリーも、ようやく自分が疑われていることに気づいたようで、
「しかし、先ほども申し上げた通り私は何も教えてなどおりません。」
と答えた。
「ああ、それは分かっているさ。クリスも「エミリーがやっているところを見た」としか言っていなかったからな。ないとは思ったんだが、クリスが嘘を言っているという可能性もあったから、念のために聴きに来たんだ。」
「なるほど、そうでございましたか。」
疑いが晴れたことに安堵の表情を見せるエミリー。
というか、俺も疑われてたのね。俺は不満を口にしようと思ったが、
「それにしても、本当にただ見ただけで魔法を扱えるようになったというのか。天才ではないか!」
「私もそんな話は聞いたことがございません!クリス様は天才ですよ!」
二人とも俺が天才だ何だと盛り上がっていたので、どうでもよくなった。
「二人とも、何をそんなに盛り上がっているのかしら?」
父さんたちが余りにもはしゃいでいたので、母さんも不思議に思って話の輪に入ってきた。
「あぁ、クリスが見ただけで魔法を覚えてしまったんだよ!」
「まあ!それは本当なの?!」
三人になったことで余計に騒がしくなってしまった。
「ねえクリス、ママにも魔法見せてくれないかしら?」
そういえば、母さんとエミリーにはまだ見せてないんだった。
まあ、父さんにはすでに見られちゃったし、今更隠す必要もないか。
練習ーといっても、数分しか出来なかったがーの成果を見せるときだ。
「うん!「風よ吹け、ブリーズ!」」
詠唱を行うとさっきよりも強い風を出すことができた。
エミリーが見せたお手本の5割程度か。
「す、すごいです!クリス樣!」
「本当に魔法が。夢でも見ているのかしら・・・?」
「いや、現実だぞ。それにしてもクリス、さっき見たときよりも威力が上がってるじゃないか!?」
三人も喜んでるようで、騒がしかったのが更に騒がしくなった。
しかし、誉められてるのだから嫌な気分ではない。
「やたーっ!」
俺としてはまだ威力に不満があるが、それでも進歩したことは確かなので喜んでおこう。
「ご主人様、奥方様。」
「どうした?エミリー。」
まだ興奮している様子の父さんと母さんにエミリーが話しかける。
何その顔は何やら真剣な顔をしていて、返す父さんもいつの間にか落ち着いた口調に戻っていた。
「クリス様には私のお手本を見ただけで扱えるようになる程の才能があります。ですので、早いとは思いますが、今のうちから本格的に魔法教育を行った方がいいと思うのですが。」
おお!エミリーさんありがとう!
早く魔法をマスターしたい俺にとっては願ってもない提案だ。
「そうだな、この才能を無駄にするのは勿体無ない!」
父さんも乗り気のようで一先ず安心する。
「でも、あなた。誰がクリスに教えるんですか?」
確かに。
エミリーも初級・中級の本を読むくらいだから上級者というわけではなさそうだし、母さんも恐らくそうなのだろう。
「そんなの決まってるだろう。外から呼んでくるのさ!・・・よし!」
父さんは急に立ち上がると、俺を見て言った。
「クリス、今から町に行くぞ。」
俺と父さんによる、先生探しのスタートである。
何故か、更新がハイペース(笑)
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