4.こうかはばつぐんだ?!
詠唱とか皆どうやって考えてるのだろう?
先が思いやられる(笑)
クリスの身体を手に入れてから1年半が経った。
足腰もしっかりしてきて、歩くこともできるようになった。
最近はメイドのエミリーが持ってくる絵本を一緒に読んだり、この部屋にある本を見たりして文字を覚えている。
俺にとっては外国語を勉強している気分だったが、エミリーの読み上げる言葉の意味は何故か分かるので、文字はすぐに読めるようになった。
そして今日、持ってきてた本の一冊に
「魔法ー初級・中級ー」があるのを発見した。
おそらくエミリー自身が読むものなのだろう。
どんな魔法が書いてあるのか気になったので、
「まほー!まほー!」
と言うと、エミリーは、
「クリス様にはまだ早いのですが・・・。」
と言いつつも見せてくれた。
[まえがき]
魔法は4つの分野(攻撃魔法、防御魔法、治癒魔法、召喚魔法)と多くの属性(火、水、土、風、光、闇、無)に分けられる。
その中から、この本では魔法をこれから習得しようとする初心者や基礎をマスターした中級者の方向けに、攻撃魔法、防御魔法、治癒魔法の3つの分野の基礎的な魔法を纏め、・・・。
ふむふむ、成る程。
初心者向けでない召喚魔法は載ってないのか・・・。ちょっと残念。
そのままを捲っていくと初級の攻撃魔法のページを発見した。
「ファイヤー」か。
どうやら指先から火を出す魔法らしい。図も載っていて、そこには人差し指から火が出ている様子が描かれていた。
これはマッチに火をつける程度の魔法だが、こんな簡単な魔法にまで図がついているとは。
素晴らしいクオリティである。
しかしここまで威力が低いと、もはや攻撃魔法とは言えないと思うのだが・・・。
それでも、ここでこの魔法の練習は出来ない。
万が一、火事になったらヤバイし。
そう考えると、これの次に載っている「ウォーター」
これも部屋を濡らすしダメか・・・。
落ち込みながら次のページを捲るとそこには
「ブリーズ」という魔法があった。
風属性の魔法で、少し強め(扇風機の強くらい?)の風を吹かせるものらしい。
これだ!これならこの屋内でも気にせず使える!
俺は歓喜した。
とはいえ、俺がいきなりやったらエミリーがどんな反応をするか分からないし、流暢に呪文を詠みあげる俺を見たら気味が悪いと思うはずだ。
とりあえずこの場はエミリーに手本を見せてもらうだけにしよう。
「これー!」
エミリーに元気な声でその魔法を指さすと、
「クリス様?もしかして、これが見たいのですか?」と返ってきた。
「うー!」
俺は子供らしく首を縦に振りながらにこやかに返事をする。これで見せてもらえる筈だ。
「この魔法だったらこの部屋で使っても問題ないですね。もしかして、クリス様はそこまで考えて・・・。」
「うー?」
とりあえずしらばっくれる。
エミリーさんや、普通の赤ん坊はそこまで考えませんよ!私は普通じゃないですけどね!
「まぁ、そんなわけないですよね。ではクリス様、よく見ていてくださいね。」
そういうとエミリーは1メートルくらい前に開いた状態の本を置き、
「風よ吹け、ブリーズ!」
その本に向かって魔法を放った。
エミリーの手のひらから風が吹き、次々とページを捲っていく。
「すごー!」
喜んでいるふりをしつつ、俺は思った。
うわー、簡単過ぎるー、と。
まぁ初級魔法のなかでも一番簡単な部類だから詠唱が短いのは分かるんだけど、なんか拍子抜けというか・・・。
「ふふ、お褒めの言葉ありがとうございます。
さてクリス様、そろそろ眠る時間ですよ。」
と本を纏めて立ち上がるエミリー。
正直、まだ最初の方しか見れてないから持ってかれると次はいつ見れるか分からない。
仕方ないが、ここは奥の手を使わせてもらおう。
「ふぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛!」
クリスくんの駄々をこねる攻撃!
「困りましたね。でも、魔法はそんな簡単には出せませんので大丈夫なはずです。セレスティア様の許可をいただけたらここに置いておきましょう。」
どうやら効果は抜群だったようだ。
その後、母さんの許可もあっさり降りたので、
「魔法ー初級・中級ー」は俺の部屋に置かれることとなった。
俺の魔法生活はここから始まる!?
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