13.妙な子供、妙な杖、妙な空気
妙な子供(クリス君)
授業を早く終えた俺とレティは中央街へ来ていた。
手をつないで仲良くデート、と思うじゃん?俺、乳母車に乗ってるんだぜ、畜生…。
「せんせー、どこいくの?」
「時間は沢山あるのでこの街を見て回りましょうか。クリス君はどこか行きたいところはありますか?」
そういえば2回この街を通ったけど、店に入ったりはしなかったんだよなぁ。
乳母車から周りを見回すと服屋や八百屋、宿屋など色々な建物があったが、少し奥の方へ視線を移すと「武器・魔道具」と書いてあるの看板が見えた。そういえばでかい店があったな。
「ぶきがみたい!」
「あの店ですか?いいですよ、では行きましょうか。」
俺の言葉を受け、レティは乳母車を押し武器屋に向かった。
「(広いな…。)」
店は想像以上に広かった。俺が通っていた大学の体育館くらいはありそうだ。
そして、その店内は人族、獣人族、ドワーフ族等々色んな種族の人達で溢れている。
「広いでしょう?このお店はオルディ―ヌ王国でも有数のお店なんです。」
「へー!」
オルディ―ヌ王国は一都七町十五村で構成されているが、
その中でも、ヴィッシュの中央街にあるこの店は三本の指に入る程の品揃えだとレティは付け加えた。
なんでも、王都から近く、魔法大学もあることが理由らしい。
剣、槍、弓矢、盾などの武器・防具から魔法使いが使う杖などの魔道具、更に冒険に必要な薬類まで様々な商品を取り扱っているので、この店で買い物をすれば冒険者に必要なもののほとんどが揃うだろう。
武器を一通り見て回り、俺たちは店の奥の方へと進んでいく。
「次は魔道具を見て回りましょうか」
「まどーぐ!」
俺が此処に来たかった理由、それが魔道具だ。やっぱり魔法使いと言ったら杖だし、此処にどんな物が置いてあるのか見ておきたい。
「(流石、レティがオルディ―ヌ王国有数というだけはあるな。おっ?)」
200はあるのではないかという程、数ある杖の中で俺は一つの杖が目に留まった。
随分とボロそうな…年季の入った杖だ。新品のものが多いなか、その杖は特に目立っていた。
じっとその杖を見つめていると、レティはそれに気付いたのかその杖を取り俺に渡してくれた。
「(うわっ、なんだこの杖。すっげぇ軽い!それにこれ、金属なのか?!)」
手に取った瞬間、その軽さに思わず変な声が出そうになった。
そして、遠くから見ると木製に見えたこの杖だが、実際にはグリップに使われている皮以外は金属製であることに二度驚く。
「せんせー、これ、かるーい!」
「そうですね、私も驚きました。これはもしかするとオリハルコンかもしれません。」
まじで?!見た目が古いとはいえ、オリハルコンなんて希少なものを使った杖があるとは思わなかったぞ。
「いらっしゃい、何かお探しかい?」
二人してこの杖に夢中になっていると、急に後ろから声をかけられた。
「おや、レティではないか。」
「お久しぶりです、店長さん。」
背丈の低い顎髭を蓄えたそのドワーフはレティと顔馴染みだった。そうか、この人が店長なのか。
「ところでこの子は?」
店長が俺をちらっと見た後、レティに訊ねる。
「クリストファー・リヴィエール様です。私はリヴィエール家に雇われて、現在クリストファー様をお世話させて頂いております。」
口調はもともと丁寧だから突っ込まないけど、様!?そして何故フルネーム!?
「なんと、アレックス様の息子様でしたか!」
店長は驚いた顔をして頭を下げた。やっぱり父さんは有名人らしい。
「ええ。ところでこの杖なんですが、これはオリハルコンではないですか?」
「ああ。その通りなんだが、どうも妙なんだ。」
レティの質問にオリハルコンであると肯定しつつも店長は妙だと言った。一体どういうことなんだろうか。
「妙、とはどういうことなんですか?」
というレティの言葉に店長は
「その杖に魔力を流してみるといい。」
と答えた。
レティが言われた通りにその杖に魔力を流す。しかし、杖は僅かに光るだけに留まった。
「これはいったいどういうことなのですか?」
「比重からすると杖に使われてる金属はオリハルコンのはずなんだ。だけど、その杖は何故か著しく魔力の通りが悪くてね。他の客たちも魔力を流したことがあったんだが、只の一度も光ることはなかったから、レティはやっぱりすごいよ。」
流石俺の先生だ。しかし、そのレティでさえうまく扱えないとは杖としてどうなんだ?商品にならないじゃないか。
「せんせー、かしてー!」
「はい、どうぞ。」
レティから問題の杖を受け取り、隅々まで確認してみる。
何かスイッチみたいな仕掛けでもあるかもと思ったが、そういうわけでもなく、至って普通の杖だった。
何か原因が分かればと魔力を流してみる。しかし、レティと同様に魔力は通ら...通ら?
え、通る...?何で??
杖は俺が注いだ魔力をすんなり通し煌々と輝いた。あまつさえ魔力を増幅している気がする。
「というわけで...。な、何?この光...。」
「な、なんだ一体?」
レティは俺の「せんせー」発言について店長から質問攻めにあっていたので俺の行動を見ていなかったが、その二人も突如として発生した強い光には流石に気付き、眩しさに目を細めつつこちらを向いた。
「...!」「...!?」「...?」
三人の間に沈黙が走る。
妙な空気が流れるなか、レティの
「...とまぁ、私以上の才能を持っていらっしゃるのです。」
という発言に、店長は「な、なるほど...?」と頷くしかなかった。
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