11.勘違い美少女、参戦
なんかヒロインぽいの出てきた。
レッスンを中断し三人で楽しく談笑していると、コンコンとドアをノックする音が響いた。
「どうぞ」
ラルフの言葉を受けドアが開く。入ってきたのは、小柄で可愛らしい女性、というよりも女の子だった。
銀色の長い髪に白い肌、切れ長で大きな目と翠色の瞳、薄い唇。その整った顔立ちは絵に描いたような美少女だ。
そして何より注目すべきはその耳。長く尖った耳はまさしくエルフのそれだった。
「ラルフ教授、レティです。例の件でお伺いしましたが此方にいらっしゃいましたか。」
その見た目に反して、言葉遣いは丁寧である。そのギャップは見ていてなかなかに面白い。
そして、例の件ときた。ということは、この子が俺の先生か。後で耳を触らせてもらおうかな。
「おう、来てくれたか。レティ、元気だったか?」
「はい、お陰様で。それでお仕事というのは。…はっ!?」
俺がいたずらで魔力をほんの少しだけ漏らしてみる。するとレティはすぐに気づきこちらを向いた。
「あの子は一体…。まさか…?!」
「ああ、そのまさかだよ」
ラルフの答えに、なぜか青くなるレティ。
レティは俺の目の前まで来ると、俺を強く抱きしめた。そして物凄い剣幕でラルフを睨み付ける。
俺としては何が何だか全くわからない。
「ラルフ教授!こんな小さい子に一体どんな人体実験をしたんですか!!」
「いやいやいや!私は何もしていないぞ!」
「今魔力探知をしたんですが、この魔力はあり得ません!これは人体実験をしたとしか思えません!」
「いや、それは俺も知らんのだ…。」
レティは俺がラルフの人体実験のモルモットにされたのだと勘違いしているようだ。
必死に否定するラルフ。しかし、その反応が勘違いを更に助長させた。
「では、何故否定するのにそんなにも必死なんですか?図星だからではないのですか?」
このままではまずいな。もうラルフがどう答えても誤解が解けない気がする。
父さんもそう思ったらしくラルフに助け舟を出した。
「レティさん、と言ったかな。クリスには魔法の才能が有ったので、私が彼に頼んで
クリスの教育をしてもらっていたんだ。私もその様子をずっと見ていたが、人体実験なんてものはなく健全なものだったよ。」
「え、そうなんですか…?」
「だから最初から違うといっておろうに。」
「す、すいません…。」
がっくりと肩を落とすレティ。
「おねーちゃん、元気出してー?」
俺が頭を撫でてレティを励ます。
何だろう、無性に頭を撫でてあげたくなったのですよ。だって可愛いんだもん。
レティが起こした騒ぎが収まったところでラルフはレティに本題を語りだした。
「レティは子供の世話をするのは好きだったよな?」
「はい、そうですが。」
「クリス君は一歳半なのだが、この子に魔法を教えてやってほしいんだ」
「一歳半、ですか。確かに魔力の量は凄まじいものがありますが、魔法を教えるには私の説明をきちんと理解してくれなければいけません。それは、大丈夫なのでしょうか?」
レティの指摘は尤もだ。普通なら無理なのだ、この時期の子供に魔法を教えるのは。だが…。
「それについては問題ない。一週間前に「無理のない範囲で魔力を溜めてきなさい」といった結果がこれだからな。」
「な、なるほど…。」
ラルフの指摘にレティは納得するしかなかった。
「基本的には平日にレティが指導して休日は私が担当するつもりなんだが、引き受けてはもらえんか?勿論、これはお仕事なので給与もある。」
「レティさん、私からもお願いします」
父さんが頭を下げたので、それに倣って俺も頭を下げた。
「あまり自信はありませんが、よろしくお願いします。」
「ありがとうございます!」
やった!美少女先生確保ォ!父さんも平日に担当してくれる先生ができて喜んでいる。
「やったー!せんせーだいすきー!」
俺がそう言うと
「大好き?!あ、ありがとうございます。」
と言って俯いた。照れてる照れてる。肌が白いから頬が赤いのがまる分かりだ。
「おや、レティもしや照れているのかい?」
「照れてません!」
ラルフの参戦によりレティ先生を弄る行為はしばらく続くのであった。
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