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月が死ぬ時
月は人ではない。
僅かに海と時間に自分の存在を知らさせるだけ。
それは月が自分の存在を人に知らしめているだけに過ぎないこと。
それに対し人は大した思いを抱きはしない。
月の真の姿は天空に関心のある人にしか分からない。
月は私たちの住む世界にはいない。
しかし夜の空に確かに存在し、
私たちの生活と関わりがある。
月の存在を知らない人も
いつか、必ず存在に気づく。
仮にそれが妄想の中の姿だとしても。
月が死ぬ時に
星が隕石として地球に落ち、
太陽の原子核が降りて来て爆発して、
大量の放射能の雨を降らし、
死んでいる蛇たちが蠢き、
月を見失った聖獣たちが人を喰らう。
今日も月はそこにある。
月は死なない。
しかし月が死んだ時の出来事は起きる。
月は地上にあるものではなく、
空にあるものだから。