研究録13
「あんな男のことなんてどうでも良いんですの!それより、リル!前みたいに名前で呼んでくださる?あなたに姫様って呼ばれるのは気持ち悪いわ。」
「ひどっ!私はさー、前と立場が変わったから呼び方変えようと思っただけだよー。でも、前の呼び方が良いならそっちで呼ぶよ、フェル。」
姫様の本名はフェルパティイカ。王族は名前が長いものなのだが、普段は不便である。
そのため、皆、愛称であるフェルと呼ぶ。
フェルの兄の名は、カインタルト。愛称はカインだ。
フェルの片思いの相手である隣国の王子は、ヒスイという。
お国柄なのかは分からないが、この国の王族に比べて名前が短い。
余談だが、私は短い方が覚えやすくて良いから、ぜひこの国の王族にもそれが広まって欲しいものだと、一人考えている。
カイン王子、ヒスイ王子、そして巫女様の護衛騎士のルウトさんの三人が巫女様の愉快な仲間達である。
ちなみに、この愉快な仲間達という呼び名は良いセンスだと思うのに、師匠には残念なセンスですね、という評価を受けた。
なんでだろう。納得がいかない。
「それよりフェルさ、ヒスイ王子がこっち来てから話たりした?だめだよ。自分から行かないと」
巫女様に取られちゃう。
とは言わなかった。
いや、巫女様とヒスイ王子のことを言ってから悲しそうな顔をしたフェルの表情をみたら、言えなかった。
というのが正解。
「だって、だってね、リル。ヒスイは、巫女様のことしか見えてないの。応接間で私と会ったのに、挨拶もなしに巫女様をくどき始めたの。私が、ヒスイや兄様のところに行くと、ヒスイ嫌な顔をするし。」
だから一言も喋れてないの。
消えそうな声でフェルは呟いた。
いつも強気なフェルの落ち込んだ姿は見たくない。
だけど、今の私の立場では王子達に気軽に話しかけにいける立場じゃない。
こんなときだけは、自分の今の立場が嫌になる。
ああ。
私は、友達を。
このとてもかわいらしくて良い子を元気にする方法が分からない。
更新がせっかく続いていたのに、連続更新を途切れさせてすいません。
でもこれからはがんばりますが、まったりー更新が続くと思います。
12/8追加しました。