不肖の娘
父が死んだ
風が春を運んでくる頃のことだ
桜が満開になった瞬間
その楽しみを奪うが如く雨風に晒されていたのに、その日からカンカン照りの晴れが続いた
孤独死らしい
不詳の内因子 短時間
死亡検案書の中身にはそう書かれていた
突然のことだった
世の中の馬鹿な催しの1つかと錯覚したが、その日はゆうに1週間は過ぎていた
春の太陽は目を潰しにかかるようだった
目が人より光に弱いのでサングラスで隠しても、頭に響くように痛んだ
寝てる間に死んだらしい
きっと死んだことにも気づいていないなんて
笑ってみせた
可哀想だとは思われたくなかった
泣かれるのが気に食わなかった
だから、
だから淡々とこなし 葬列者に微笑みかけた
本日は故人のためにご会葬いただきありがとうございます。
なんて1ミリも思っていない言葉が口から零れた
まさに眠っているよう そりゃ眠ったまま死んでるんだからね
半眼半口なんて似合わないから 濁った目を閉じさせた
間抜け面なんて、嫌だから
ただ大きな鼾をかいて寝てるかのような見慣れた顔
2時間弱待つと白や赤茶の見える骨が出てきた
骨はとても丈夫そうで カルシウム不足では無さそう
骨粗鬆症なんてのには縁がないようだ
暑くて、熱くて、汗が滲んだ
残ったのは遺影と骨壷が中小2つ
1つは祖父母の眠ってる墓へ
1つは離別した母と姉の近くの寺へ
永遠に眠ったまま冷えてしまった父は
何を思っていたのだろうか
きっといつもの晩酌をして
愛猫と戯れて テレビに野次を飛ばし
気が良くなったところでそのまま寝たのだろう
なんの夢を見たのだろうか
濁った目からは何も得られなかった
死後1日経たずで見つかったのは運がいい
何かと変にラッキーな人だった
苦しまずに逝けたなら よかったなと思えた自分に少し驚いた
桜はいつの間にか散っていた




