夢を失った僕たち
県予選が終わり、僕は冷たい視線を浴びた。僕は相手選手に暴力をふるった事により二週間の謹慎処分を受けた。大きな乱闘にはならなかったため新聞やマスコミに取り上げられることはなかったが学校中には噂は広がっていた。二週間ぶりに学校へ登校した僕の肩身は狭かった。
「あいつだろ」
「そうそう、相手選手殴ったらしいぜ」
「不良じゃーん」僕は様々な言葉を浴びせられた。誰かに同情してほしいなんて思ってもいなかったけどそれでも少しは僕にみんな気を使ってくれるんじゃないかと淡い期待を抱いていた。しかし僕の考えは甘く僕はこの日から不良扱いを受けることになる。
教室に廊下を進み教室に入るとまた冷たい視線を浴びせられた。席に座るまで誰とも目を合わせなかった。正確に言うと僕は下を向くことしかできなかった。僕はカバンを置き静かに席に座る。するとクラスの不良西宮かいに絡まれる。
「お前やるなぁ、先輩の試合で相手選手殴ったらしいじゃん」なんだか楽しそうな口調でイケメン金髪のかいがそう言ってくる。別に元々かいは不良だけどいい奴ということを僕はなんとなく分かっていた。だから普通に普段から話しかけられれば気さくにしゃべっていた。
「うるせえよ」僕は目を合わせずにそう答えた。
「なにスカしてんだよ、俺は感動したぞ。お前にそんな度胸があったとはなあ」かいが周りの目を気にせず明るくしゃべる目の前でぼくは何も書いてない黒板を向いて無視をする。すると、前の席に座り顔を近づけて今の僕が一番聞きたくない言葉を投げかけてきた。
「でお前、サッカー部また行くの?」僕は固まった。遠くにいるけいもこの言葉ははっきり聞き取れたようで耳を傾けた。長い長い間だった。僕は胸の中にあるものがどうでもよくなった気がした。夢への道を見失ったような、努力の糸が切れたような。
「おーいどうした?」けいが僕の顔を覗き込む。
「いかねえよ、アホらしい」この言葉にはいろんな意味が込められていた。これからかいと仲よく遊びまわること、サッカー部をやめること、夢をあきらめること、数えきれないほどの意味が込められていた。
そして、ここから俺の恐ろしく怠惰な日々が始まる。
俺は、不良集団に入るわけではなくかいととにかく遊びまわった。
「なあ、やっぱ中深めるつったらここじゃね?」かいがパチンコ屋を指さす。
「いこうぜ」俺はルールも何も知らないが行くことにした。かいが選んだ場所に座る。
「お前えぐいぞ!」かいがびっくりしたような顔で言う。僕は数千円をあてた。おそらく初心者は当たりやすいのだろう。ビギナーズラックというやつだ。僕は何があたりかもよくわかんないままお金を手に入れた。かいはどうやら負けたらしい。ものすごく不機嫌だった。
「負けた?」帰り道を歩きながら聞く。
「いや年齢確認されてできんかったわ」かいがイライラしながら言う。
「ぶっ、はっはっはっは!」思わず吹き出してしまった。
「やってすらねえのかよ!」俺は馬鹿にする口調でかいに言う。
「うるせえ!てか俺そんなに未成年に見えるか?」
「どっからどう見ても中学2年生にしかみえねえよ!」そんな会話をしながら、たくさんでかい声で笑いながらかいと楽しく夕日の中を帰った。つい前までサッカー部にいた頃けいとまやと帰った道をかいと仲良く帰った。
翌朝、一限目の始まるギリギリで登校した。途中でかいと会い軽くあいさつを交わし、めんどくさかったので走ることはなく教室までゆっくり歩いた。サッカー部の集団が僕たちを追い抜かし教室に走っていった。朝練終わりだろう。
「あいつら朝から青春ドラマのつもりかアホくせぇ」かいが爆笑してサッカー部を指さしながらそう言う。
「毎日夕日に向かって叫んでんだろ」俺も寝起きのだるさを感じながら、前までは自分もそのうちの一人だった事を頭の隅に置いてそう言った。結局朝礼には五分ほど遅れてかいと一緒に入った。先生は何か言いたげだった。俺だけなら注意されていただろうがかいには先生もなにも言えない。
朝礼が終わり一限の準備をしている時、まやが話しかけてきた。あの試合以降学校でかい以外の人と初めて会話をした。
「遅刻だよ?」まやが笑いながらそう言う。思っていた言葉と違った。もっと怒られると思っていた。
「はぁ?」疑問を抱くように返す。俺は知っている。県予選の準決勝のあの日まやが見に来ていた事を。
「だーかーらー、遅刻だって」俺はまやが何を考えているのかもよくわからないまま一限の始まりのチャイムが鳴ったので席に座り寝た。そして何の意味もない時間を過ごし昼になる。かいと俺は外でタバコを吸うために廊下を歩いていると、サッカー部の先輩に声をかけられた。
「いち、お前何やってんだよ練習にも来ないで」強引に肩をつかまれる。先輩が落ち着いた声で問いかけてきた。
「やめたんすよ、サッカー」手を振り払ってから声を低くして答えた。
「俺たちの夢を返せよ!」先輩がさっきの落ち着きはまるで噓のようにそう言ってきた。周りの生徒たちの視線が集まる。狭い廊下で睨みあう先輩集団と俺。するとかいが割って入った。
「てめぇ俺の親友に偉そうな口聞いてんじゃねえぞ!」かいがそう怒鳴り先輩の一人を殴り地面にたたきつけた。
「キャー!」
「やめなよ」周りの女子達が悲鳴を上げる。俺は啞然とその光景を見守った。
「おいいくぞ」かいに話しかけられまた外に向かった。それからサッカー部と関わることは一切無くなった。
そして毎日遊び、時には親のお金を盗んでパチンコに行き、飯を食べ、高校の不良集団に絡まれればかいが全員倒し俺も喧嘩が強い気でいる。そんな日々をずっと送っていた。
それから、一年と数ヶ月俺とかいは良くも悪くも充実した日々を送り毎日が楽しくとうとう卒業式を迎えた。卒業式は長い校長の話を適当に聞き流し俺とかいは親が卒業式に来るわけでもなく先生に感謝するわけでもなく皆が校門前で写真撮影をしている中普通に帰ろうとした。その時いつぶりだろうか、遠くからけいが俺に話しかけてきた。話しかけてきたというよりかは叫んできた。
「いちが辞めてくれたおかげで俺たち初戦敗退だよ!」とても懐かしいけいのふざけた口調を聞いた。
サッカー部にはもう全く興味がなかったため俺たちの代のサッカー部が初戦敗退した事を俺はようやくここで知った。
読んでくださりありがとうございます!来週土曜日また投稿します。




