あの頃の僕たち
19年生きてきて感じたことを作品にします。熱い漢らしい作品になればいいなと思います。
怠惰。そんな言葉が僕にはよく似合う。
夢、希望、明日、そんなものは何も見えない。ただ毎日過ぎてゆくだけ。そういった生活を送っている。今日も一日tiktokを見て一日が過ぎる。
昔はそうじゃなかった。
「いち!中に出せ!」チームメイトの同級生けいが言う。そして僕の絶妙なスルーパスは通る。
「ナイスシュート」僕は正直、自分がゴールを決められなくてもチームが点を決めればうれしい。中学二年生の僕たち。放課後の部活の練習。まさに青春真っただ中だ。
「俺たち、今にも全国が手に届きそうじゃね?」けいは調子のいい口調で靴ひもをほどきながらそう言った。
「おーい、お前ら来週の試合に向けてしっかり切り替えて準備しろよー」三年生の先輩が口を挟む。僕たちの中学のサッカー部は県内では強くいつも県大会ベスト4には入っていた。
「二人とも絶好調じゃん!」同じクラスのまやが言う。僕の幼馴染で学校1の人気者の美女だ。こんな田舎に住んでなければとっくにどこかの事務所にスカウトされていただろう。かと言って僕たちの町はド田舎というわけでもない。町中に行けばスタバがあるし、カラオケも飲食店もそこそこある。住むには丁度良い都会と田舎の中間だ。
「あたりまえだろ、つかどこから見てたんだよ」僕は中学生の頃の僕はいつもすかしてこんな返事をしてしまう。
「待ってろよ全国!」けいがそう言って拳を空に向かって突き上げる。いつもの平凡な帰り道。ドラマに出てくるようなきれいな帰り道ではないがいつも三人で帰り道の田んぼ道を歩くこの時間が好きだ。
今は、地区予選またっだ中。いつもヘラヘラ喋ってるとはいえ普段の生活からいつもとは違う緊張感を感じる。負ければ先輩たちは引退。僕たちもよく理解していた。
「明日は、地区予選の決勝だよね」不安だったのか少し声のトーンを下げてまやが言う。
「ああ、勝つから」僕は正直勝つという自信に満ち溢れていた。
地区予選決勝。
試合終了5‐0。現実はこんなもんだ。先輩たちの活躍により正直余裕だった。僕たちの中学は圧倒的な強さを見せつけて東地区の地区予選を制して県大会への切符を手に入れた。相手チームは皆が泣いていた。これでサッカーをやめる人もいるのだ。当然のことだ。相手チームのキャプテンが僕たちのチームに言った。
「勝ってください」
先輩が何か返事をしていたが、僕はその言葉をただ噛みしめた。
思春期の僕は口には出さなかったが絶対に全国に出場するという熱い心を持っていた。そして僕の夢でもあった。負けてももう一年あるなんて思ってはいけない。今年で全国という夢を掴む。
試合終わりプチ打ち上げということでけいと僕、そしてまやを呼んだ三人で近所のファミレスでご飯を食べていた。
「おい俺たちこの足で高校行って大学行ってプロに行ってお金稼げるぞ」けいはずっと頭の中がお花畑だ。でもそれもけいなりの喜びの表現の仕方だ。
「でなんで泣いてんだよ」僕がなぜか泣いているまやにといかけた。
「いやいちたちが県大会に出るのうれしくって」涙を流しながらも笑ってそう言う。まやはいつもこんな感じでとてもいいやつだ。いつもスカしている僕と正反対で思っていることをしっかりと表現できる。
「でもなんでまやが泣くんだよ。泣いていいのは生まれた時と俺がシュートを外した時だけだぞ」けいがまた変なことをいう。うまくない言い回しだ。でも試合ではあまりシュートを外さないのがけいの凄いとこだ。
「だっていつもほんきで努力しているけいくんやいちが試合で活躍し…」
「あーわかったわかった」横から僕が口をはさむ。
「まやは語り始めると長いもんなー」けいが素直に言う。
「ちょっと聞いてよ!」そんな会話をしながらこの後僕たちはご飯を食べ終えその後トイレの前でまやが高校生にナンパされたことで逃げるようにファミレスを出た。
翌朝、地区予選を優勝した余韻に浸る間もなく朝練が始まる。朝から10㎞走をした。でも僕はこの暇のない充実した日々が大好きだ。だからこそ県予選も優勝して全国へ行く。そう意気込んでいた。
朝練が終わり授業はけいもおれもほとんど寝ていた。そしてテストが近くなるとまやにノートを見せてもらうのがお決まりだ。
昼ごはんの時間。まやとけいと俺の三人でいつも通り教室の隅で机を寄せてご飯を食べる。けいはいつものビックボイスでべらべらと喋る。
「けいといちちょっと来てくれー」
三年のキャプテンに廊下からけいと僕が呼び出された。
「来週の試合俺は出れない」そう松葉杖をついたキャプテンから告げられた。僕は数秒言葉が出なかった。僕たちが先輩たちを全国へ連れて行けばいいんだとそう思わなければいけないがあまりにも衝撃的過ぎた。
「俺が必ず点を決めて先輩たちを全国へ連れていきます」僕より先にけいがそう言った。正直キャプテンが離脱するのはかなり痛い。けいがチームの中で得点王になれなかったのもこの人がいたからだ。
「俺が次ピッチに立つのは全国の舞台だな」そう言ってキャプテンは教室に戻っていった。ほんの一瞬の会話だった。キャプテンも報告するのがつらいのだろう。足早に去っていった。
「なんかあったの?」まやが不安そうな顔で聞いてくる。頭のいいまやは僕たちの顔を見て察しがついたのだろう。
「エースが俺一人になっただけだよ」けいなりに考えて放った言葉だろう。それから僕たちはあまり言葉を発することなく黙々と食べていた。
「別に落ち込んでるわけじゃないでしょ?」まやが表情をぱっと明るくして言う。その通りだ。僕たちはむしろ燃えていた。だからこそけいも僕も来週ピッチに立つ重みを充分に感じていた。まやの言葉はいつも僕たちの本心を気づかしてくれる。
県予選
一回戦、二回戦、三回戦。僕たちは順調に勝ち進み気づけば準決勝だった。接戦の試合もあったが僕たちの決心に勝るものはなかった。先輩の離脱、日々のつらい練習、全国への熱い想いすべてが僕たちを後押しした。流した汗や血、涙はすべてこの試合を勝ち抜くためにあるものだと感じていた。もちろん僕たちが流した汗や涙だけじゃない。まやがファミレスで流した涙もこの試合を勝ち進むためにあると僕は信じてた。先輩がけがで離脱することを皆に伝え終わり部室で流していた涙も…。
そして向かえた準決勝。相手は西山高校。毎年僕たちと同じく県ベスト4常連校だ。試合開始のホイッスルが鳴る。大会得点王のけいとそのゴールをずっとお膳立てしてきた僕は試合開始直後から物凄く厳しくマークをされていた。それでもゴール前まで何度も攻めた。
「けい打て!」僕がけいにそういうと、けいはシュートを打たずに真後ろにパスを出して見せた。そこにいたのが僕だった。そして僕が放ったシュートはゴールネットを揺らした。すべてがゆっくりに見えた。いつもとは逆でここぞという大一番でけいのアシストで僕が決めた。生涯忘れることのないうれしさだろう。ベンチに駆け寄り監督とチームメイトと、そしてキャプテンとハグを交わした。
ハーフタイム1-0。僕たちが一点リードして前半を折り返した。
後半悲劇は起こった。けいが怪我をした。いや細かく言えば相手の悪質なファールによって怪我をさせられた。足はおそらく折れている。けいの痛がる顔が目に映る。これでは県大会どころか全国も出られない。僕は歓喜の絶頂から絶望へ叩き落された気分だった。そして怒りが込み上げてきた。
「ふざけるなー!」僕は相手選手を力いっぱいの握りこぶしで殴った。感情に身を任せた愚かな行動。
けいは交代、僕は一発退場となった。そしてエース二人不在、アシスト王も消え11人に対して10人で残りの時間を戦った僕たちの中学は逆転負け。1-2で敗れ県予選から名を消すことになった。
僕たちの夢は夢で終わった。
読んでくださりありがとうございます!一週間に一回のペースで投稿しようと思います。




