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第七話 読本クロニクル

「は、初めまして、阿野夏あのなつコイです!」

コトリに言った。


「あの・・私・・コトリ様の大ファンなんです!」

は?

「はあ?なんで私ファンなんかになんのよ!」

「それは、コトリさんがすっごく美人だからです!」


正直コトリに顔ファンがいること自体には驚かないが、なんでこいつ呼ばれてないのにここにコトリが来るってわかったんだ。


「実は私、鈴木マキトとコトリ様が校舎裏であっているのをずっと見ていたんです。それで二人がデートに行っているところを見てしまったんです!」

いやまあ1ミリもデートなんかではないが、それってストーカーじゃないか?

あと俺だけ呼び捨てにするな。


「それで今日も鈴木マキトが、コトリさんと会うんじゃないかと思ってずっとつけていたんです」

おい、つけてるってどこまでだ。トイレまで付いてきてないよなこいつ。

「まあいいわ!あなたも私に協力しなさい!」

「喜んで協力します!なんでもします!」

あーワロタワロタ。こいつはそんな性格のいい奴じゃないぞ。


「えーっとそれで今日お前は何しにここに俺を呼んだんだ」

「昨日話したノートを持ってきたわ!」

コトリは持っていたボロボロで付箋が異常に付いているノートを上に掲げた。そして表紙にはでっかく物々しいカタカナでゲダツと書かれていた。おそらく解脱のことだろう。


「なんで解脱なんだ?」

「だって私たちのいる不可解な世界から脱出したいでしょ!だから解脱!」

まあ使い方間違っている感じもするがまあいいや。

「私は何をすればいいでしょうか!」

「あんたはとりあえず黙ってくれればいいのよ!」

「はい!」

コトリには忠実なしもべが一人できたようだ。


「じゃあ鈴木マキト!今ざっとこれを読んで気になることがあったら言いなさい!」

そう言ってコトリは俺にそのノートを投げ渡した。

ノートを開くと、ページは真っ黒と形容したくなるほどびっしり書き込まれていて、正直部分的にしか読めなかった。文字列の途中にちょっとした図もしばしば書かれていた。


えーっと。一ページ目には、コトリが前話していた、5歳の時に体験したことが書かれていた。

(それにしてもページ数が多いなあ)

そうやって見ていると、明らかに他と比べて明らかに文字数が少なく、やたら変な図が載っているページを見つけた。えーっとタイトルは

「タイムトラベル」

「それまだ私もよくわかってないのよ!ちょうどいいわ!やりましょう!」

「ああ!」

タイムトラベル。ここまで男心をくすぐるものはない。

「でどうやるんだ!」

「図書館に行って、誰もまだ借りたことのない本を借りるのよ。それも新しい本ではなくて埃の被った本を!」

まあなんでそんな方法でタイムトラベルできるのかは知らんがとりあえずタイムトラベルさせろ。


「おうそれでどうするんだ!」

「そう見つけるのは簡単じゃないのよ。ほんっとうに昔の本でなきゃダメ。それを見つけるところから始めて、見つけた後にやり方は説明するわ!」

「わかった!」

そう言った後にチャイムが鳴った。


「やっべもう授業始まるぞ!」

「いいえ!このまま学校を出るわよ!」

「あの・・私はどうすれば」

「あーもうあなたも来なさい!」

「え!いいんですか!」

どうやら阿野夏の中では、授業よりもコトリの方が優先順位が高いらしい。


「じゃあ!出発!」

そうして俺たちは先生たちの目を掻い潜りながら後者を出て、裏門へ向かった。

「でどこの図書館に行くんだ?」

「蔵書数が多いところよ!えーっとここからだと、大井図書館が一番多いわね!」

大井図書館はこの街で一番古い、それに蔵書数も県内でおそらく一番多い。


「大井図書館なんてこっからどうやっていくんだ?車で行ったら近いかもしれないが、歩きだと相当遠いぞ」

「走るわよ!」

「はあ?」

「つべこべ言わずにほら!」


図書館までのマラソンの途中に

「はあはあ・・あ、あの、コトリ様!」

「はあ・・な、何よ?」

「こ、コトリ様と鈴木マキトは付き合っているのですか?」

「付き合ってるわけないでしょう!第一誰がこんな変態と付き合うのよ」

おい誰が変態だ。

「おい、誰が変態だ」

「そうですよね!コトリ様には似合わないですよこんな変態!」

この心と肺と耳の痛くなる会話の10分後、俺たちは息を切らしながら図書館についた。


「はーもう疲れた!」

「だな」

俺たちは三階建てで中央が吹き抜けになっている図書館の中に入ると隅から隅までまだ今まで借りられたことのない本を探していた。正直これだけの本があったらすぐに見つかるだろうと思った。しかしどんなにクソみたいな本でも絶対に一回は借りられているんだ。


「これもか・・・」

俺は一階を探し終えたが、結局一回も借りられていない本はなかった。そこで2階に行こうとする階段で俺たち三人はバッタリ遭遇した。

「あなた何か見つけた?」

「いや何もなかった」

「私もなかったです」

「なあ貸出カードの少しおかしな点に気づかないか?」

「ええ」

「気づきませんでした・・」

明らかにおかしいことがあったんだ偶然では済まされないほどの。


「一人しか借りていない本はたくさんあったんだ。だが全員同じ名前で借りられていたんだ!」

「確か名前は、田中太郎だったわね」

「ああ、不自然なくらい普通の名前だ。もしかしてそいつもタイムトラベルのことを知っているのか?」

「いいえ!私以外にこのことに気づいている人はおそらくいないと思うわ。だってあのノートはまだあなたたちにしか見せていないもの!それに一人一回までしか手に入れられないから!」


じゃあそいつはただ誰も借りたことのない本を借りただけってことか?

「そうか、で具体的にタイムトラベルをする方法は?」

「じゃあ今それを全部教えてあげるからあっちの階段の下に行くわよ!誰かに聞かれたらまずいの!」


そうして俺たちは階段の下のスペースに集まって、輪を作るように

「まず、誰も借りられていない埃の被った本を探す」

「その本の最初のページを開けたら絶対に書いてある文字を読まない、でも読んでいるふりをするの」

「お前がよく言ってる。意識しないというやつか」

ここで少しわかってしまう自分を恥じたい。


「そう。それでその本のページを全て読んだふりをしたら、その本を一回閉じる。それでもう一度開けると、全ての書かれていた文字が消える。そうして日にちが表示されてその日に戻るもしくは進む」


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