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第四話 空白クロニクル

学校が終わった後、俺はいつものように正門へ向かった。ああそうだよあいつにちょっと会いたいっていう欲があったんだよ。あいつは腐っても超絶美少女だからな。自分の情けなさに思わず下お向きながら歩いていると


「おーーーーい!」


あいつが飛び跳ねて、俺に向かって手を振っているのが分かった。今日休んだからって流石に私服はまずいだろ。俺はあいつの性格をもう知ってしまっているからか、あいつの白のワンピースという女の子らしい服装に違和感しか感じなかった。


正門に着いた瞬間、俺はコトリの腕を掴んだ。

「こっちだ」

返事を待たずに歩き出す。人気のない学校裏の路地へ。フェンス越しにテニス部のコートが見える路地だ。


「っちょ痛いじゃないの!」

「いや大体お前今日学校休んでるのに目立ったらやばいだろ」

「うるっさいわね!」

「というかどうやって俺のロッカーにメモを入れたんだ?」

俺がロッカーを開けるという保証はないのになぜ分かったんだ。


「あれは昨日入れといたの!」

「昨日!?昨日のいつだよ」

「帰る時に決まってるでしょ!それ以外時間もないんだからー」

「お前なんなんだよ、ずっと言ってることが意味わからないぞ」

そう俺が言うとコトリはやれやれって感じのポーズをした。こいつにもうこれ以上付き合ってられるか。


「じゃあ俺はもう帰るぞ」

「待って!じゃあ、私の発見したことの一つを見せてあげる!付いてきて!」

コトリはそう言って俺の腕を跡が残るくらい強く掴んで走り出した。


「おい!お前なんで走ってんだよ!ゆっくり行こうぜゆっくり」

「人に見せるの初めてだからすっごい楽しみ!」

振り返ったコトリの目は期待に満ち溢れている五歳児のような目であった。まだ世界の闇を知らない頃の。


そうして俺たちは、とある閑静な住宅街に着いた。こんなところに一体何があるっていうんだ。それに今ちょうど夕方で人の行き来も多いからあまり大胆なことはできないぞ。

「何するんだよ」

俺は軽く内出血した腕をさすりながら言った。

「とりあえず今は何も考えないで、ただぼーっと自分の家だけを目的地にして歩いて。それで私が合図したところで本当に無の感情で何も考えずにどこかの家に入るわよ」

「それ不法侵入じゃないか」

「いいから黙って!ただ何も考えずに自分が家に帰ることを目的に歩いて。家じゃなくてもいいわ、いつも行っているコンビニとか薬局とかみたいなところ!」

「分かった分かった」

こいつ想像力豊かすぎるだろ。まあでもこういう時期のやつには言われるように付き合っておけば機嫌が良くなるもんなんだ。目的地か、とりあえず自分の家にしとくか。


しばらく歩いていると、小鳥が突然

「次の左の家に入るわよ」

そこには普通のなんの変哲もない肉じゃがの匂いが漂ってくる一軒家があった。周りの家と唯一違うのは門扉がなく、そのまま玄関まで行けるというだけだ。


「おい流石に入るのはまずいだろ」

俺は必死にコトリを説得しようとしたが無理だった。そして俺はコトリに連れられるまま玄関前へと入った。そうしてコトリがドアノブを捻るとドアが開いた。

「まだよ!まだ意識はダメなの」

中に入ると、普通の土間があった。右に鍵を置くスペースがあって、左には下駄箱があるごく普通の土間。


俺たちは土足で玄関に上がった。ここでコトリを止めても、どっちにしろ不法侵入には変わりない。そうして土間を抜けた廊下の先にスライド式のドアがあった。そうして、コトリがそのドアを開けた。


すると一瞬眩い光に包まれたと思ったが違った。本当に無であった。家具がないとかそんな次元ではなく、本当にただ白い空間があるだけ。

「・・・なんだこれ」

「だから言ったでしょう!そこから前に向かって私がストップと言うまで歩いてみなさい!」

俺は言われた通り歩いた。すると

ドンッ

「いって!壁あんじゃねえかよ普通に!」


そう痛がっていると

「ははははっ!当たり前でしょっだって外にある壁は通過できる訳ないじゃないっ!」

爆笑しながらコトリは俺に言った。しかしそんなこと言われても、俺がわかる訳ないだろう。ここではとにかく距離感覚が掴めない。どれくらい奥行きがあるのかがわからないし影とかも一切存在しないんだ。俺たちが通ってきた通路だけが変に目立っている。


「まあでもこれはまだ説明がつくだろう。ほら、人が作ったっていう可能性も全然あるだろ」

「まあまた今度見せてあげる!もう今日は夜だし帰ろ!」

まあそうだな今日はもう疲れたし帰るとするか。そうやって俺たちは来た道を戻って玄関を出た。そうして外に出ると入ってきた時よりも、明らかに暗くなっている。


「おいなんでこんな暗いんだ。さっきはこんな暗くなかっただろ」

「だからさっき言ったじゃん!夜だって」

「だからなんでこんな暗くなってるのかって聞いてんだよ!」


そう俺が言うとコトリはスマホを出して、ロック画面を俺に見せてきた。

「にっ21時!?俺たちさっき入った時15時過ぎだったよな!」

おかしい。絶対におかしい。

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