3夫になってもくそです
そして2年後に私が学園卒業と同時に私達は結婚した。
不思議だったのは父から結婚前に本当にいいのかって尋ねられた事だ。
私は、ベネットの家の役に立てる事はこれくらいしかないと思っていたので
だから言った。
”お父様、私の方こそいいんですか?私は実の子ではないのに”
”お前をそんな風に思った事はない。ミュリアンナはベネット辺境伯の娘。それを忘れるな”
”はい、ありがとうございます。お父様。私はアッシュ様を慕っております。彼との結婚は私の一番の願いなのです。”
と心にもない事を言ったと思う。
でも、嫌だなんて言えるはずもないから。
それに嘘でも私を自分の娘だと言ってくれたのだからこれからはベネット辺境伯の娘と誇りを持って行こうと思った。
時を同じくして王女のリベラ様は隣国のロガワロ国のオルセン王太子の元に嫁がれた。
夫であるアッシュ様はまだ爵位を継いではおらず近衛騎士として王宮で働いている。
それはカモフラージュではないかと思うほどの女遊びに都合がいいだけの腰かけ程度の仕事だ。
相変わらずアッシュ様は女遊びを繰り返していて父親が宰相で国の中枢の重要人物だからか、自分も偉いと勘違いしているらしく令息としての執務それさえも私に丸投げであった。
そうは言っても私は政略結婚とはいえ夫婦として少しでもうまくやって行けたらと思っていたので最初の1年は真面目に仕事をして社交をした。
お茶会に呼ばれるお相手のほとんどが夫であるアッシュ様の過去の関係者だった。
幾度か呼ばれたメンバーでのお茶会で私はプッツン切れた。
「ミュリアンナ様。いかがかしら?」不躾な視線を向けて来るマクファーレン公爵家の令嬢で出戻りのディアーナ様だ。
ああ、お兄様はヒックス兄様と同じ年で騎士でもあるルカ・マクファーレン公爵令息だ。
彼女は過去にアッシュ様とも関係があったらしい事をプンプン匂わせていた。
「いかがとは?」
「まあ、いやですわ。彼との身体の相性に決まってるじゃありませんか。ねぇ、皆さん」
他にもカエンハイル公爵家のナデル様やシモンズ侯爵家のレンナ様などいずれもすでに結婚している。
それにしてもよくも夫と関わりのあった女たちばかり集まったものだとため息を吐いた。
「うふっ、やっぱり。相当お困りのご様子ですね。わかりますわぁ、だってアッシュ様意外とお強いですもの。ねぇ~皆様」
「「「ええ、そうですわね」」」
彼女たちの目がらんらんと輝く。
どうして私がこんな暇な女の相手をしなきゃならないのよ。条件は最低限の社交だったはずなのに‥
「…あの‥でしたら、いつでも相手をしてやって下さいませ。もし孕んだとしても婚姻知れている方との子できたらレーヴェン公爵家の血が入っているかわかりませんので子どもは引き取れませんね。まあ、どうしてもと言われるならそれ以外にも手段はありますわ。離縁さえしていただければ第2夫人という手もありますのでご一考下さい。では‥」
「まあ、失礼な!」とディアーナ様が言ったが他の人は何も言えないらしい。
「あの、申し訳ありませんが私、こんな無駄な時間を過ごす気はありませんので今後お茶会のお誘いは辞退させて頂きます。では、失礼します」
それ以来お茶会の誘いは断っている。
仕事はほとんどが執事のダートンがこなし私はそれに目を通すくらいの仕事だった。
社交はシーズンにある王宮主催のパーティーくらい。
アッシュ様とは顔を合わせる事すらほとんどなく部屋はお互いの私室で過ごす日々だった。
たまに夕食を共にする時も目すら合わすこともない。
いたたまれない空気。
そんな時、旦那様は私に心苦しいからだ思うことにした事がどれほどあったか。
あの男と同じ空間で息をする事すら吐き気を覚える。