26新たな真実1
アッシュとリベラが連れ去られるとオルセン王太子が高らかに声を上げた。
「せっかくの祝いの席で私の愚かな茶番にみなさんをつき合わせてしてしまい本当に申し訳なかった。これでまた改めて両国の絆はさらに強固になった。これより予定通りコンコン病の根絶を祝おうではありませんか。それから今回特別にミュリアン嬢にロガワロ王家より贈り物を用意した。さあ、ミュリアンナ嬢こちらに来てくれないか」
私はすぐに案内をされて用意された舞台の上に促された。
向かい合わせにオルセン王太子がいて彼が私に手を差し伸べた。
「ミュリアンナ嬢。あなたには感謝してもしきれないほどだ。ロガワロ国民を代表してお礼の品を送らせてほしい」
美しい銀色のトレイに乗せられた腕輪が運ばれてくる。
オルセン王太子がその腕輪を取って私の指先から腕輪をくぐらせていく。
どこかで見たことのある色合いは母の形見と同じ宝石だった。
「これはロガワロ国の王家しか身に着ける事の出来ない宝石なんだ。そしてここにはロガワロ国王家の紋章が入っている」
オルセン王太子が腕輪の説明をしてくれる。
それはあまりにも母の形見の腕輪とよく似ていた。色合いもそして紋章さえも。
オルセン王太子がすぐに私のしていた腕輪に気づいた。
「こっちは君の腕輪?」
彼はキュッと眉を寄せて驚いている。
私も驚いていた。どうしてこんなに似ているのか?
「はい、母のものでした」
「ということは母上は亡くなったのか?」
「はい」
「この紋章はロガワロ国の王家の紋章。ほら今、私がはめた腕輪と同じだ」
「はい、私も驚いています」
「それにミュリアンナ嬢。私はさっきからずっと不思議だった。君の瞳の色も髪の色もロガワロ王家の色合いだ。もしかして君は?」
オルセン王太子の髪色はココアブラウンで瞳は桜色。私と同じ。その瞳が私をじっと見つめる。
「私は私生児でした。父の名前は知りません。そんな私がロガワロ王家と関りがあるとは思えません」
「いや、すまない。責めているのではない。ただ、この話をここでするわけにもいかないだろう。後でゆっくり話がしたい。出来れば御父上も一緒に。いいね?」
「わかりました」
私たちは舞台の上にいることに気づいてオルセン王太子は私を握手を交わし一礼した。
私も何とか笑みを浮かべて礼をして舞台からおりた。
そして楽団の演奏が始まり中央にはオルセン王太子が進み出た。
そして私を指名してファーストダンスを踊るはめに。
こんなつもりはないのに‥
私は予想外の展開について行けないが、何とか使命を果たそうと笑みを顔に張り付けた。
「さっきの話は忘れて今は楽しもう」
「で、でも、オルセン王太子が私なんかと踊るなんて予想外で」
緊張のしすぎだった。
心の中で今更ながら王太子の容姿をまじまじと見た。私と同じ色だと思う。
「そのネックレスもシャンパンガーネットとパープルスキャボライトだな?」
オルセン王太子がアクセサリーを見てつぶやいた。
「はい」
「それも母上の?」
「はい」
「ミュリアンナ、思ったんだが君の母上はロガワロ国の人か?」
「そうです。フューデン辺境伯の娘です」
「そうかフューデンか‥」
「‥‥‥」
そこでダンスが終わった。
オルセン王太子とは礼をして離れた。
その後すぐにルカ様が私の腰に手を掛けた。
「まさかオルセン王太子に先を越されるとは思わなかった」
「仕方ありません。あの流れでは断れるはずもありませんでした」
「もちろんオルセン王太子に宣戦を布告する気はないが少し妬けたな」
「ルカ様ったら、私が愛してるのはルカ様です」
「わかってる。さあ、踊ろうか」
それからルカ様と続けて3曲も踊った。
さすがに心配になって来た。わざわざ王女を怒らせるべきでもない。
「ルカ様。そろそろアリーシャ王女の護衛に戻った方がいいのではありませんか?」
「ミュリアンナにそんな事を言われるとは‥仕方がない。これも仕事。夜会が終わったら迎えに行くから」
「それがこの後オルセン王太子がお話があると言われてて、父も一緒に行くんです」
「話?何の話だろう?気になるから一緒に行っても?」
「でも‥」
「君の護衛ということで」
「ルカ様がよければお願いします」
「じゃ、夜会が終わったら待ち合わせよう。いいね?」
「はい、お父様に話をしておきます」
ルカ様は持ち場に戻って行った。
私は父にオルセン王太子が話があることを知らせた。




