19久しぶりで
「そんな事よりミュリアンナ。ルカから来たぞ。お前たちがなぁ」
「えっ?やだ。ルカ様話したんですか?」
「ああ、だって3か月も会えなくなって俺は気が狂いそうだった。病気の事は薬が効くようになってあまり心配はなかったけど、その間にアッシュがミュリアンナに会いに行って離縁をやめたらって、一人で悶々と考えているとどどうにかなりそうで‥」
「そんなルカを見て俺が問いつめたんだ。お前と結婚の約束をしたって聞いた時にはすごくうれしかった」
「それならそうと早く言って下さいよ」
ルカ様がそばに来て「だってミュリアンナに抱きつこうとしたら嫌そうな顔したじゃないか。俺は気が変わったのかって焦った。どう?まだ俺と結婚する気ある?」
私は一気に火照りを覚えて頬が一気に熱くなった。
「ルカ様、私がそんな浮気者に見えるんですか?ずっと好きだったあなたと想いが通じたのにそんな事思うはずがぁ~」
その先は言わせてもらえなかった。
ルカ様が思いっきり抱きしめたから。
「ああ、俺もずっとずっとミュリアンナに会いたかった。この腕に抱きしめたいってどんなに願ったか‥」
ルカ様は私の頭や頬にすりすりをしまくっておまけにぐいぐい抱きしめられて「‥あっ、る。るかさ‥ちょ、くるしぃ」
「ルカ、いいから放せ!ミュリアンナが圧死する」
ヒックス兄様が無理やりルカ様の引きはがしてくれた。
「はぁ、はぁ、もぉ、るかさまったら」
肩で息をしながらも彼を見つめる顔はうれしさでにやけている。
「すまん。ミュリアンナが足りな過ぎてつい‥痛かったか?ごめんな」そう言って髪の毛にふわりとキスを落として来る。
「こりゃ、相当重症だな。あのルカがな‥まあ、あのバカと結婚したことがそもそも間違ってたよな」
「そう言えばアッシュ様は?離縁の話はお父様にお願いしてのですがすぐにコンコン病が流行り始めてそれどころではなくなったので、でもお父様に尋ねたらすでに離縁の申し入れはしているそうなので」
「あいつか‥どうもあいつの屋敷の侍女が身ごもったらしいぞ」
聞けばアッシュ様は思っていた通り侍女のケロッグ・バークレイ男爵令嬢に手を付けたらしい。
私はやっぱりと思い、その願ってもない吉報に喜んだ。
「やっぱり‥まあ、どうでもいいんです。あっ、でも、それなら離縁もしやすいですし良かったです」
「ああ、これでミュリアンナと正式に婚約できるな。俺も25歳だし婚姻は半年後くらいにしたいって思ってるんだけどミュリアンナはそれでいいか?」
ルカ様は私の手をぎゅっと握って手の甲に口づけながらそう言った。
「も、もちろんです。私だって早くルカ様と結婚したいです」
私は目尻に皺を寄せて微笑むルカ様をうっとり見つめた。
「ああ‥何だか異常に熱いな。ミュリアンナも幸せに慣れそうだし俺もそろそろ実を身を固めるかなぁ~」
「ええ、そうですよ。私、ヒックス兄様にも幸せになって欲しいですからね」
その夜は家族が揃い未来の私の夫であるルカ様も一緒に夕食をした。
お父様がルカ様と私がいずれ婚約することをみんなの前で話してくれたので私達は公認の間柄となった。
夕食後ルカ様に誘われて庭でお茶を飲むことに。
さすがにお父様や兄様たちがいる場でイチャイチャすることも出来ない。
ネネがお茶の用意をしてくれたので私がお茶を煎れる事にした。
外はまだ少し肌寒かったがは織物をしていれば平気だ。
私はカップに黄金色のお茶を注ぐ。ルカ様がそれをそっと持ち上げ口に運んだ。
「うまいな。‥そうだミュリアンナ。今度、流行り病が収束した祝いで王宮で夜会が開かれるんだ。一緒にパートナーとして参加して欲しい」
「ええ、でも先に離縁が片付かないと」
「ああ、義理父様も一緒に王都に行かれるはずだ」
「お父様も?」
「辺境伯も招待されているし、離縁の手続きも出来るだろう?」
この国では貴族は婚姻も離縁も親かもしくは後見人が同意のサインをするようになっている。
一度レーヴェンの屋敷が王宮に出向いてアッシュ様とお父様であるレーヴェン公爵にも会わなくてはならないのだ。
まあ、同席しなくてもサインさえあればいいがそう言うわけにもいかないだろう。
「心配?」
ルカ様はそんな私の気持ちを察したようにそっとわたしの手を握った。
「ううん、心配はないけどやっぱりいい話じゃないし相手のお父様は宰相だし‥ちょっと気後れするかも」
「ミュリアンナは一ミリも悪くないんだ。胸を張って堂々としていればいい。俺がそばにいたいけど誤解を与えることは避けた方がいいだろうから」
ルカ様は一瞬肩をすくめた。
「ミュリアンナこっちにおいで」
「はい」
私はルカ様の座っている隣に座った。
彼が私の腰を引き寄せ私は彼の胸の中に閉じ込められる。
引き締まった筋肉にハッとしながらもその男らしい肉体の中に顔を埋めた。
彼の胸の中にいる安心と汗と体臭が混ざったような香りですごく居心地が良くなって思わず私は彼の服をぎゅっと掴んでしがみついた。
そっと見上げればルカ様が私を見つめていた。
「そんな顔されたら我慢できなくなる」
ルカ様の唇が重なった。何度もキスをしてやっと顔が離れた。
「私ったら。何だか、ご、ごめんなさい」
キスをねだったみたいで慌てて謝った。
「ずいぶん手慣れてるんだ」
ルカ様が少しふてたように言う。
「そんな‥でも、ずっと寂しかったから‥だってルカ様の腕の中だと安心で居心地いいし‥でも、私はまだ」純潔でと言葉は言う間もなく。
「わかってる。そんな事疑ってない。ただ、俺は女とは全く縁がなかったから、ミュリアンナにどう接していいかわからなくて」
「私達初めて同士ってわけ?うふふ」
「何がおかしい?」
「だって、ルカ様もうれしいって思うんでしょ?私だってルカ様が初めてだってわかってうれしいです」
「そうか。よく女性は手慣れた男が安心するとか聞くから俺はすごく心配してたんだ。だからもし痛かったり嫌だったらすぐに教えてくれないか?」
「ええ、私も教えて下さい。だってあの人とは手を繋いだことすらなかったですから」
「ああ、全く妻に対する態度じゃないが、あいつが君に手を出さなかった事だけは褒めてやりたい」
「ええ、あなたに初めてを上げれて良かった」
「ああ、まだもらってないがその予定だ」
そう言ってふたりで笑った。