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18流行り病が


 そこからは話が早かった。

 私とルカ様は一緒にお父様に話をしてアッシュ様との離縁を進めてもらうことにした。

 但しまだ父以外には内緒にする事になった。

 離縁していない状態でルカ様と婚約の話をしているとわかれば離縁に悪影響が出るかも知れないからだ。

 ルカ様は軍馬の注文をして王都に帰る事になり週末には会いに来ることにして別れた。

 

 それからすぐに領地内で具合の悪い人が続出し始めた。

 最初は風邪のような症状だが、熱が出始めると身体中が痛んで咳がひどくなり最後には呼吸困難を起こして死んでしまうと言う厄介な病だった。

 病はあっという間に広がったらしくすぐに国中で流行り始めた。

 咳がひどくコンコンと言う事からコンコン病と言われ大変な騒ぎになった。

 ルカ様やヒックス兄様達の騎士隊も王都での病気の蔓延で王都から出ることを禁止された。

 もちろん一般の商人や平民も王都への出入りは出来なくなった。

 そのせいで私の離縁の話は棚上げ状態になったのは言うまでもなかった。

 

 そんな中、私は領地に帰って来てあることを領民から聞いた事を思い出す。

 馬車の開発に携わって森に入った時に災害で地形が変わって湧き出た水が評判だと聞いた。

 その水で傷口を洗うと傷の治りが早い。その水でお茶を煎れると喉の痛みが引いた。

 そんな話を聞いていた。

 今までの薬ではコンコン病を治す事が出来ない。

 特効薬となる薬を見つけないと。

 私は居ても経てもいられずバクショット兄様と一緒にその湧き水を調べに行く事にした。

 私達は湧き水だけでなくその辺りもくまなく調べた。

 すると湧き水が出る辺りにはヤツメダミと言う薬草がびっしり群生していた。

 私達はすぐにその水とある薬草で試しに煎じ薬を作った。

 元々ヤツメダミはあちこちに群生している薬草だったが、やたら臭い匂いのする薬草で今まで敬遠されていたらしい。

 だが、その煎じ薬の効果は信じられないほど解毒や殺菌効果があった。

 試しに湧き水のそばに生えていたヤツメダミと普通の水でも煎じ薬を作って病気になった人にそれぞれを飲ませるとどちらの病人もコンコン病の咳が鎮まり完治した。

 お父様はすぐにそのことを国王に知らせた。

 

 私はそれから領民にヤツメダミの効き目を広めてコンコン病の治療に当たった。

 辺境伯の屋敷の使用人たちや辺境騎士隊も協力した。

 教会の診療所だけでは足りないので辺境領の屋敷の一部や騎士隊の建物、金持ちの商人の屋敷などを診療施設にして治療にあたった。

 医者でなくても薬草を採ったり煎じ薬を作ったり病人の世話をすることは出来るので元気な人は誰でも雇って雇用も確保した。

 こうすれば病気で働けない家族の代わりにお金を稼ぐ事も出来るのでみんなから喜ばれた。

 これはレーヴェン家でアッシュ様の妻として色々な指示をしていたことが役になった。

 まったく、人生は何が役立つかわからない。



 それから3か月が過ぎた頃やっと王都への出入りも解除されルカ様とヒックス兄様が辺境領にやって来た。

 「ミュリアンナ会いたかった」

 ルカ様が走り寄って来た。

 私だってぇ~‥うへっ。すぐ後ろにはヒックス兄様が。

 さすがにここで抱き合うわけにはと「ヒックス兄様、ルカ様お元気そうで良かった」言葉を返す。

 ルカ様の脚が止まった。良かった気づいたんだ。

 思わずくすりと笑みがこぼれるとルカ様も同じように微笑みを返した。


 「ミュリアンナお前大活躍だったんだろう?バクショットから聞いたぞ」

 ヒックス兄様に思いっきり抱きしめられる。

 「に、兄様。苦しいです!」

 「すまん、ついうれしくて。お前の作った薬が効いて王都のみんなはすごく感謝してるんだ。ブルトワではあの薬は奇跡の薬ってそりゃもうすごいんだぞ」

 「そんな。領民の方が教えてくれたんです。湧き水がいいって近くにはヤツメダミがいっぱい群生していてそれで」

 「あんな臭い薬草がなぁ‥でも、それを見て思いついたお前はすごいって事だ。聞いてくれ。俺はコンラッド王太子の護衛騎士になったんだ。ルカはアリーシャ王女の護衛騎士に。なっ!ルカ。これも全部ミュリアンナのおかげだ」

 ヒックス兄様は嬉しそうにルカ様を見た。

 ルカ様は首を横に振っていやそうな顔をしながら言う。

 「ああ、ったく。アリーシャ王女もリベラ王女と同じでわがままで俺は嫌なんだが」

 「そんな事ありません。兄様やルカ様の実力ですよ。それにしてもふたりとも凄いじゃないですか」

 私はそうは言ったがあまりうれしくはなかった。


 アリーシャ王女は私より二つ下の18歳。母親は側妃のクラーラ様だ。

 王妃のナタージャ様はロガワロ国の国王の妹でシガレス国に嫁いできた。一方的なロガワロ国からの申し出だったと聞く。だが2年たっても子が授からず国王フィリップの婚約者だったクラーラ・レーヴェン侯爵令嬢を側妃に迎えた。

 そう、側妃はアッシュ様の叔母様にあたる。


 そしてリベラ王女とアリーシャ王女が生まれ、その翌年王妃ナタージャ様がコンラッド王太子を産んだ。

 クラーラ様はアリーシャを産んだ後肥立ちが悪くもう子供は産めなくなったのでコンラッド王太子が生まれてかなり悔しい思いをされたとか。

 ふたりはあまり仲は良くなくて国王フィリップはクラーラ様の機嫌を取るためにふたりの王女をかなり甘やかしたとも聞いた。

 まあ、王家の事情はどうでもいいがルカ様がアリーシャ様の護衛騎士になったと聞いてがっかりした。

 だってあのふたりはアッシュとはいとこでふたりともわがままで傲慢だ。

 


 

 

 





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