17告白
目が覚めると目の前に精悍な顔つき見目麗しい愛しの君。ルカ様がいた。
だってもう自分の心を偽ることは出来なかった。
「うん?気が付いた?」
「えっとわたし‥」
記憶をたどるが脳内はまだあの告白のせいでぐちゃぐちゃのままで。
「喉は乾いた?」
とりあえず‥
「はい」
「準備してあるから、少し起きようか」
私の背中に優しく手を差し入れて上半身を起こされ手際よく後ろにクッションを差し入れられた。
「はい、レモン果実水。好きだろう?」
「ええ、よくご存じで‥うん、おいしい」
甘すぎないさわやかさ。適度な酸味、のどを潤すには最適な‥っていうかどうしてルカ様がここに?
「ルカ様どうしてここに?」
心の声はだだ洩れた。
「バクショット兄様には許可を貰ったが」
「でも、仕事で来られたんですよね?私なんかの為に無駄な時間を過ごすべきではないのでは?」
思わず何もなかったような態度を取って見る。
「気にするな。ミュリアンナといるのは無駄な時間ではないから」
なんだろう?このピンク色のような雰囲気は?
私はまだ離縁もしていないし‥まさかおかしな勘違いをさせたとか?
ルカ様だって男。いや、それはない。
じゃあ過去の記憶に私がすごく苦しんでいたって勘違いをさせたとか?
まあ、実際苦しかったけど。
確か小さな頃の愚かしい失態を謝ったらルカ様は私のせいじゃないと言ってくれて抱きしめられたらもう胸がいっぱいになって‥
ああ‥私ったら‥好きオーラ目いっぱい出してた。
いや、でも何とか誤魔化せば‥って言うよりルカ様が私を好きって事はまずありえないことだからそんな心配ないか。
「でも、こんな所にいたらルカ様に迷惑が掛かります。あの、そうだ。ネネを呼んで下さい。私が倒れたせいで本当に申し訳ありません。どうかルカ様は仕事に戻って下さい。あの、目の事本当にすみませんでした。「あれは事故だったんだ。ミュリアンナのせいじゃない。だからもう謝らなくていいから」
ルカ様は話の途中でそう言ってくれた。
「はい、私のせいじゃないって思うようにします。でもきちんと謝りたかったんです」
「君の謝罪は受け入れた。もう絶対にこの目の事を気に病むな。いいな?」
「はい、そうします」
「ああ、少しは落ち着いた?」
彼は私が握りしめるように持っていたグラスを奪い取って行く。
あのままだったら握り潰して‥いやそれはない。
「はい」
私はひとりでそんな事を思ってふっと笑み浮かべルカ様を見た。
ルカ様はそんな私を見てすぐに笑みをこぼした。
彼がこんな顔をするのは珍しい。
ああ‥神々しい微笑み。
「本当は仕事でここに来たわけじゃないんだ。ミュリアンナは離縁はまだ?あんな事をされたんだ。すぐにでも離縁出来るんじゃないのか?」
「ええ、まあそうですけど‥一応別居という形にして」
父の話を聞いて今はすぐに離縁すればよかったと後悔している。
「ミュリアンナはあいつが好きなのか?」
少し怒ったような口ぶり。眉間にはしわが寄って片方の瞳の少し開く。
「とんでもありません。誰があんな男なんか!」
「だったらチャンスだろう?」
ルカ様の言いたいことはわかる。きっと心配してくれているのだと。
なぜかルカ様には嘘をついては行けない気がした。
「あの、こんな事を思ったなんて家族が聞いたら怒るかも知れませんが‥私がベネットの血筋でないことはご存知ですよね?」
「ああ、もちろんだ。君の母のお披露目の時に聞いたから」
「ええ、私は父の名前さえわからない私生児なんです。ベネットの家族には心から愛されていると分かってるんです。でも、こんな私を愛してくれるからこそ私はみんなの迷惑になるのは嫌だと思ったんです」
「そんなこと誰も思ってないだろう?」
「はい、私の取り越し苦労でした。父からも私の好きにすればいいと言われました。父が私を愛してるとはっきりわかったんです。それならもう遠慮なく離縁してもいいかと思ってて」
「そうか‥」
ルカ様はほっとしたように肩を落とした。
友人として心配してくれたのだろう。あんなところを見られたのだもの当然だろう。
「あの?ルカ様にまで心配をかけてすみません。私、アッシュ様との事きちんとするつもりですから」
「ああ、早い方がいい」
「父の相談してみます」
「まあ、それがいい。何かあれば俺も証言するからな」
「はい、ありがとうございます。あの‥ネネを呼んでもらえますか?」
そう言うとルカ様がベッドのすぐそばに跪いた。
「るかさま?」
さっと伸ばされた手で私の手を包み込まれる。
「コホン。あの‥その前に‥ミュリアンナ。その‥離縁が整ったら俺と、いや、私と婚約してもらえないか?」
「はい?」
「君が好きだった。ずっと最初に出会ったあの日から。だから俺は君を庇って前に出たんだ。目を失ったのは自分のせいなんだ。ミュリアンナを苦しめてごめん。君は悪くなんかない。俺が勝手にやった事なんだ。だから俺の為とかじゃなく君が本当に俺と婚約してもいいと思ったら‥」
彼は息を詰めていたらしくそれだけ言うと大きく息を吐きだした。
私の胸の鼓動は最大マックスになりその周りが小刻みに震え感激でその胸はいっぱいになって行く。
な、何か言わなきゃ‥
「る、るかしゃま」思わず噛んだが。
「‥わたし‥私だってずっと初めて会った日からあなたに好意を寄せていました。でも言えなかった。迷惑だと思ったから‥私なんかじゃ無理だって思っていたから」
「じゃあ、本気なんだね?」
「ええ、あなたと結婚したい。でも、ほんとにいいの?」
「当たり前だ。あんな男と結婚したって思わなくていい。ミュリアンナはまだ純潔だ。ほんとの意味で結婚したことにはならないと思うけど」
「るかさま」
ルカ様は私を抱きしめて優しく唇を触れ合わせた。