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15別居します


 翌日ヒックス兄様が屋敷にやって来た。

 「ミュリアンナすまん遅くなった」

 「兄様どうされたのです?」

 「あいつがお前を襲うとは油断していた」

 「私もマクファーレン副隊長が来てくれなかったら危ないところでした」

 「ああ、ルカの判断に任せてよかった。あいつには見張りをつけていたらしい。酒をかなり飲んで帰ったので心配になって踏み込んだ。って言うかどうしてマクファーレンなんて?」

 「いえ、いくら兄様の友達でも私が気安くしていいお相手ではありませんから」

 「硬い事を言うな。あいつが聞いたら悲しむぞ。それよりお前、結婚の時契約したって言ってたよな?」

 「はい、アッシュ様とは関係を持たないと‥でも、それは昨晩それは見事に破られました。例え最後まで出なくてもあれは立派な契約違反ですよね?」

 「ああ、離縁を申し立てるか?」

 「ですがベネット家が困るのでは?」

 「資金を借りたがすでに返済は終わっている。いつでも離縁していいんだ」

 ヒックス兄様の優しい言葉に思わず涙ぐむ。

 「お前をあいつと結婚させるべきじゃなかった。悪かった。だから離縁しろ」

 うれしかった。すぐにでもあいつと何か離縁したかった。でも‥

 私は本当はベネット家の人間ではない。兄様達は優しくしてくれるけど出戻って領地に帰って居場所はどうすればいい?

 そんな不安が沸き上がると今すぐに離縁してベネット辺境伯領に帰る決断は出来なかった。

 でも、別居という形なら。

 「兄様。いきなり離縁というのは無理な気が。取りあえずここにはいたくないので別居という事にしてベネット辺境伯領に行こうと思います」

 「ああ、いいのか?離縁してもいいんだぞ?」

 「いえ、やはりしばらく様子を見ると言うことにします」

 「そうか?でも、離縁したくなったらいつでも言えよ。俺はコンラッド王太子とも顔見知りだからな。そうだ。早速ネネとぺスヒルに伝えて今日中にここを出るといい」

 「はい、そうします」

 「アッシュはすぐには帰って来られないだろう。だから安心して仕度しろ」

 「はい、ありがとうヒックス兄様」


 私は午後にはベネット辺境伯領に向かう事にして支度をしているとアッシュ様が帰って来た。

 もう帰って来たの?もしかしてお父様のおかげかも。

 彼は断りもない。あんな事しておいて?

 まあどうせ別居の話をしておかなくては面倒なことになるのも嫌だしと彼の執務室で話をする事にした。もちろんぺスヒルに同席してもらう。じゃないと恐くて。


 「アッシュ様お話が‥」

 「ああ、俺も話がある。ミュリアンナ、俺はこれからは父の仕事を手伝う事になった。女遊びはもうしない。だからお前が俺の相手をしろ。いいな?」

 なに、自分が悪い癖にその偉そうな物言いは?

 ピキッこめかみに音がした気がした。

 「いいえ、あのような事があっては私はあなたのそばにはいられません。結婚の時に契約したはずです!」

 「ああ、あれか。じゃあ離縁する気か?でも、契約はお前と関係を持ったらの話。あれでは無理だ。離縁は出来ないぞ!それに事情が変わった。父が跡取りを望んでいる。お前はあの契約を無効にして俺と子づくりをするんだ」

 彼は嫌そうな口調でそう言った。

 ふざけてるの?

 「そんな事する訳ないじゃないですか!勝手な言い分ですね。王女と関係を持ってお父様にでも叱られたんですか?ふん、都合のいい事ですね。でも、それはすべてあなたが蒔いた種です」

 「う、うるさい!お前は黙って俺の言うことを聞いていればいいんだ!」

 彼は言いくるめられまいと声を張り上げた。


 誰が貴方の言うことを聞くと?

 「声を張り上げれば言うことを聞くとでも?ふざけないで!私は形だけはあなたの妻ですが、あなたが付き合っているような都合のいい女ではありません。欲の解消目的なら気に入った女と遊べばいいではありませんか。どうぞお好きになさってください。でも、子供を作れば即離縁ですから。まあ、お父様の望み通り跡取りが出来たなら喜ぶべきですかね?」

 我ながらあの契約は完ぺきではないかと思った。

 私とは子供を作れない。だからと言って外で子供を作れば離縁するなんてこれって離縁しかないって事じゃない!

 私は心の中でガッツポーズした。


 アッシュ様は私に近づいて腕を掴もうとしたがぺスヒルがそれを阻止してくれた。

 「ぺスヒル。なにをする。ミュリアンナは俺の妻だ。俺がどうしようと勝手だ!」

 「いいえ、私は奥様に雇われていますので奥様の不利益になる事はさせません」

 「お前覚えてろ!」

 アッシュ様は掴んだ腕を渋々放す。

 「今すぐ離縁でもいいんですがいかがです?」

 「それは無理だ。そんな事をすれば俺が疑われる。今はとにかく離縁はしない」

 「そうですか。では、私達は別居という事でよろしいんじゃないですか?あなたが王都にいらっしゃるなら私はベネット辺境伯に戻りますので。では、失礼します」

 「それは俺が誰と何をしてもいいと言う事でいいんだな?」

 「今さらそれを私に?」

 「‥‥‥」

 「どうぞお好きになさってください。但し子供が出来れば即離縁ということで」

 「いいんだな?お前以外の女に子供が出来ても」

 ちょうどいいわよ。他で作ってくれるなんて。今さら私がそれを望んでいないとでも?

 寝言は寝て言えって気分。

 「ええ、お相手はあなたのお気に召すままにどうぞ。私もそうなれば即、離縁出来ますもの」

 最初からまやかしだったのだ。いつかはそうなる。それまでに私も準備をしておかなくてはと心の中で思った。









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