12助けられて
「アッシュ・レーヴェン。お前を逮捕する!」
突然数人の騎士隊員が入って来た。
「どういうことだ?」
アッシュ様は掴んでいた脚首の手をはらりと放して私の脚はドサッとベッドに落ちた。
急いでナイト着の前を合わせて両脚を合わせてその場に座り込んだ。
「お前!ミュリアンナ大丈夫か?」
ルカ様が走り寄って来た。
私はまだ恐怖で縮こまったままルカ様を見上げた。
はぁ~漆黒の騎士とはこの事かも。彼の鋭い光る深緑の瞳からは怒りが吹き上げそうなほどの怒りを感じたがそれはアッシュへの怒りと理解出来て寧ろうれしささえ感じた。
「わたし‥」
安心したせいか眦から涙が伝いおりた。
「もう大丈夫だ。アッシュには詳しい事情を聞かなくてはならないから騎士隊に連行する。もう安心だ」
「えっ?でも、どうして‥」
妻を襲ったら罪になるのだろうか?とっ散らかった脳内では正しい答えなど分かるはずもなく。
私は息をつめた。
「アッシュ・レーヴェン。お前は王女と関係を持ったな?」
「俺はそんな事はしていない。ミュリアンナ本当だ。俺はただお前と夫婦になろうと‥「そんな嘘つかないで、あなたと王女様は昔から」それは過去の事だ」
「詳しい事は騎士隊で話せ。連れて行け!」
ルカ様はアッシュを連れ出すように命令してくれた。
やっとほっとして大きく息を吐き出せた。
「良かったよ。間に合って。あいつ!‥殺す!」
ルカ様はまだ怒り心頭みたいで拳をぎゅっと握りしめて歯をぎりぎり言わせているような。
「さすがにそれはやり過ぎじゃ?」小さな声で言う。
「何言ってる?待て、ちょっ‥殴られたのか?」
ふっと振り返った時私の頬が赤くなっている事に気づいたのだろう。彼が走り寄って顔を覗き込んだ。
「あいつを殴ったら殴り返されて」
「ミュリアンナが?」
「はい」私は少し自慢げに顔を上げた。
でも、ルカ様は不安げに眉を寄せて「すぐに冷やさないと」そう言って部屋を出てすぐに濡れた布を持って来て私の頬に当ててくれたが眉根を寄せた顔は恐い。
かなり怒っている。
「あいつマジ殺す!」
「そんな事をしたらルカ様が捕まります。こんな傷すぐに治りますから」
そう言うがルカ様の怒りは収まらない様子でぶつぶつ文句を言っている。
「大丈夫ですから‥」
安心させようと彼の手を握った。
「ああ‥とにかく、間に合って良かった」
彼はそう言うと握った私の手を握り返しふわりと頬笑みを浮かべて腕の中に閉じ込めた。
「恐かっただろう。まだ震えてる‥もう大丈夫だ」
彼はまるで恋人のようにゆっくり背中をさすってくれて耳元で優しくそう言った。
わたしこんな姿なのに‥恥ずかし過ぎる。
でも、ほんのひと時こんなふうに憧れのルカ様の腕の中にいれるなんて夢のようだった。
そこにぺスヒルが来て私を預けるとルカ様は何だか名残惜しそうに帰って行った。
いえ、名残惜しいのは私の方です。
この時私ははっきり自覚した。私はルカ様が好きなのだと。
結婚して今更自分の気持ちに気づくなんて‥ばかみたいだ。