10途方に暮れる(リベラ)
あの後で王宮の常駐医師がやって来て確認をされた。逃げようにも部屋の外には護衛騎士が数人いてどうする事も出来なかった。
医師は私の局所を調べて確認をした。
「交わりはあったかは不鮮明で確定は無理です。精液はなし。リベラ王女。これは記録に残りますので」
「困るわ。私まだ離縁してないのよ。こんなことがオルセンにばれたら国家間の問題になってしまうわ。だから‥いいでしょう?ナカ出しなかったんだし妊娠の心配はないんだから」
「これは決まっている事ですので‥では、失礼します」
そして翌日父に呼ばれた。
側妃である母も一緒だ。
ああ、頭が痛い。また叱られる。
「どういう事だ?リベラ。お前はまだ離縁したわけではないんだぞ。夫がありながら他の男を部屋に入れるなどありえん!」
部屋に入るなり父の怒号が響いた。
「そうよ。リベラ。あなたシガレス国を滅ぼすつもり?」
母のクラーラが泣きながら言う。
「また、お母様は大げさよ。こんな事で国が滅びるなんて‥」
「お前は自分の立場が分かってないんだな。お前はこの国の代表なんだ。ロガワロ国の王太子妃がシガレス国の騎士と浮気してみろ。ロガワロ国。国王。オルセン王太子。それに国民を蔑ろにしたことになると分からんのか?シガレス国は小さな国だ。ロガワロ国に睨まれればひとたまりもないんだぞ!」
父は首を横に振って頭を落とす。
えっ?そんな。たったこれだけの事で?
わ、私は悪くないわ。
慌ててお父様に説明をする。
「だってぇ~オルセンがいけないのよ。私という妃がいるのに別の女とぉぉぉ~」
お父様の目が半開きになって私を蔑んだように見る。
「お前は平民か?王太子次期国王は跡継ぎを作る責任がある。お前は2年何をしていた?今だ妊娠の兆候はなし。次の女を模索する時期だと理解出来んのか?それが当たり前ではないか。まったくわがままもいい加減にしろ!」
「‥‥だってぇ~」
「だってじゃない。今すぐロガワロ国に帰す。いいか。昨晩は何もなかったと通すしかあるまい。お前は妊娠するまで戻って来る事は許さん!わかったな?すぐに支度をしろ。ロガワロ国王に断りをせねばならん」
私はそんなのは嫌だった。
だから反論した。
「いやだ。離縁する。いいでしょう?お父様。私には無理!」
それを聞いたお父様が私にずかずか近付いた。
「お願いお父様」
「バシッ!」
「痛い!」
生まれて初めて頬を殴られた。どうして?今までだったら私のお願いは何でも叶えてくれたじゃない。
「いい加減目を覚ませ。嫌なら平民にする。それで良ければ離縁しろ!それにこんな事があった事は絶対に口が裂けても言うんじゃないぞ。そんな事をすればお前は絞首刑になるかもしれんのだぞ!いや、まだお前だけならいい。我が国も迷惑するんだ!いいか。そのばかな脳みそに叩き込め!わかったのか!?」
「‥」
もう一度殴られて耳をぐっと引っ張られ大声で言われる「ばかな事を言うんじゃない!わかったか?」
「わかったわよ」
「リベラお前は妊娠するまで二度と帰って来るな。そのつもりでロガワロ国に帰れ。今度帰ってきたら王宮には入れん!いいな!」
「ぶふぅぅぅ~」
気に入らないと頬を膨らまし鼻息を荒くしたが全く効果はなかった。
子供の頃はこうすればすぐに何でも買ってもらえたのに。
私は有無を言わさず支度をさせられそのまま馬車に乗せられた。
もちろん馬車は逃げられないよう護衛騎士がぐるりと囲んだ。
アッシュの心配などしている余裕はなかった。
父からは帰ったらくれぐれも国王、王妃、オルセンにきちんと謝罪して二度とばかな事はしないと謝るようにとしつこいほど言われた。
それに絶対に妊娠しろと言われた。
オルセンは部屋にも来ないのにどうしろって言うのよ!
私は途方にくれた。