6 犯行の手がかり
砂漠の朝、スフィンクスの威容が金色に輝く中、調査団の動きは依然として緊張感に包まれていた。
零は事件現場で確認された砂地の異常な密度に注目し、それが犯人の手口を解き明かす鍵であると考えていた。
助手の一人が駆け寄り、新たな報告を手渡した。
「零さん、砂の分析結果が出ました。この部分だけ、熱と圧力による変化が起きています。」
零はその結果を受け取りながら砂を観察した。
「熱と圧力…。犯人はこれを利用して何らかの方法で証拠を消した可能性がある。」
助手の報告を聞きながら、零はハルに念話で語りかけた。
「ハル、犯人がこの砂地を使って凶器を隠したか、消したと考えるのは合理的だと思うか?」
ハルは小さな声で返した。
「零、それはあり得るかもね。でも、それならその熱や圧力をどうやって作り出したのかな?」
零はその問いに答えず、考えを深めていった。
「犯人がこの環境を利用したトリックを仕掛けた可能性は高い。ただ、それを実現する方法がまだ掴めない。」
その日の午後、零は保管室に戻り、アミールと共に再び棚の傷跡を調べていた。
零は傷跡を指でなぞりながら問いかけた。
「アミール、この棚から何かを取り出した際に、これほどの傷がつくことはあるか?」
アミールは少し考え込みながら答えた。
「普通の状況では考えられません。ただ、重い物や特殊な形状の遺物を動かすとすれば、可能性はゼロではありません。」
零はその言葉を聞きながら、保管室全体を見渡した。
「その特殊な形状の遺物、何か思い当たるものはあるか?」
アミールは一瞬ためらい、目を伏せながら答えた。
「わかりません。リーダーが管理していた部分も多く、全てを把握しているわけではないので。」
零はアミールの態度にわずかな違和感を感じながら、さらに調査を進める必要性を確信した。
夕方、零は調査団全員を集め、これまでの調査結果を共有した。
「事件現場の砂地の異常、保管室の棚の傷跡、そしてリーダーが鍵を持ち出した時間。この三つを結びつけることで、事件の全貌が見えてくるはずだ。」
助手の一人が質問する。
「零さん、犯人が現場に残さずに凶器を消す方法なんて本当にあるんですか?」
零は静かに答えた。
「この砂漠の環境は特殊だ。極端な温度差を利用すれば、短時間で証拠を消すことも可能だろう。」
調査団の中に不安と緊張が広がる中、アミールは無表情で零の話を聞いていた。
その様子は他のメンバーとは異なり、どこか冷静すぎるようにも見えた。
夜、零はテントで調査結果を整理していた。
事件の全貌はまだ霧の中だが、犯人が仕掛けたトリックの輪郭が少しずつ見えてきていた。
「凶器を消すトリック…。その方法を特定すれば、犯人に直接繋がる。」
零はそう呟き、星空を見上げた。
ハルが念話で語りかける。
「零、あと少しで真実にたどり着けそうだね。でも、なんか全員が疑わしく見えるよ。」
零は微笑みながら答えた。
「それが犯人の狙いだろう。全ての手掛かりを繋げた時、真実は一つになる。」
スフィンクスの影が夜空に沈む中、零は次の一手を考えていた。