5 深まる疑惑
昼下がり、スフィンクスの足元に集まった調査団は、依然として事件の緊張感に包まれていた。
零はリーダーの行動記録や保管室の状況についてさらなる調査を進めるため、調査団を再編成していた。
「リーダーが保管室に残さなかった記録、そして消えた凶器。その二つを結びつける手がかりを見つけなければならない。」
零はそう言いながら、アミールに目を向けた。
「アミール、鍵がリーダーに渡っていた時間について、もう少し詳しく教えてくれないか。」
アミールは真剣な表情で頷きながら答えた。
「リーダーが鍵を持ち出したのは夜の10時過ぎだったと思います。その後、保管室に戻った形跡があるのは午前0時頃でした。私はその間、テントで資料を整理していたので、詳細は分かりません。」
零はその言葉に考えを巡らせた。
「リーダーが鍵を持ち出していた間に、何が起きていたのか。それが事件の鍵になる。」
午後、零は再び砂地の現場に足を運び、助手たちと共に調査を行っていた。
砂地には微かな足跡や、不自然な形状の砂の固まりが確認されていた。
助手の一人が声を上げた。
「零さん、この砂の固まり、通常の砂地とは異なる成分が含まれているようです。」
零はその砂を手に取り、観察した。
「確かに、ここだけ密度が異常に高い。熱や冷却が関係しているのかもしれない。」
ハルが念話で話しかけてきた。
「零、それって何かのトリックに使われたんじゃない?犯人が砂を変化させたとか。」
零は頷きながら、さらに砂の状態を調べた。
「この砂地が事件とどのように関係しているのか、特定する必要がある。」
その日の夕方、零は調査団全員を集め、これまでの調査結果を整理していた。
「現場で確認された砂の異常な密度、それが犯人の手口を示している可能性が高い。さらに、リーダーが鍵を持ち出していた時間帯が重要なポイントだ。」
零は全員を見渡しながら続けた。
「特に、保管室の鍵に触れることができた人物が犯人の候補として浮上する。」
その言葉に、調査団の中から緊張の声が漏れた。
助手の一人が不安げに尋ねる。
「零さん、犯人は本当に調査団の中にいるんですか?」
零は慎重に答えた。
「この場で断定するつもりはない。ただ、調査団内の誰かがこの事件に関与している可能性は否定できない。」
夜、零は一人テントに戻り、砂地の調査データと保管室の記録を整理していた。
彼の頭の中では、現場の異常とリーダーの行動が複雑に絡み合いながら、事件の全貌を紐解こうとしていた。
「リーダーが何を見つけたのか。そして、犯人はそれをどう利用したのか。」
零はつぶやき、星空を見上げた。
ハルが念話で語りかける。
「零、あと少しで真実に近づけそうだね。でも、みんなの雰囲気、なんかピリピリしてるよ。」
「犯人が追い詰められているのは確かだ。次の一手で事件の核心に触れる。」
零はそう答えながら、次の日の計画を練り始めた。
スフィンクスの目が暗闇の中で静かに輝いているように見えた。
その目が、零の行く末を見守っているかのようだった。