3 消えた凶器
砂漠の朝陽が砂地を照らし、スフィンクスの影が短くなる中、調査団の緊張はさらに高まっていた。
リーダーが撲殺された事件から一晩が明けたが、凶器は依然として見つからないままだった。
零は現場の砂地に膝をつき、砂を掬い上げて観察していた。
「痕跡は確かにあるが、凶器そのものが消えている。この砂漠の環境を利用した可能性が高い。」
助手の一人が報告する。
「零さん、金属探知機とレーダースキャンを使いましたが、砂地にも地中にも凶器の痕跡はありませんでした。」
零はその言葉に頷き、立ち上がった。
「やはり特殊な手段を使った可能性がある。砂地の状態をさらに調べる必要がある。」
調査団のテントでは、リーダーと口論していた若手考古学者のミケルが疑いの目を向けられていた。
「確かにリーダーとは口論しましたが、殺すなんてあり得ません!」
ミケルは声を荒げ、調査団の視線に耐えかねるように拳を握りしめていた。
零は彼の話を冷静に聞きながら、質問を続けた。
「君が事件当夜、保管室の近くにいたことを目撃した者がいる。それについて何か言い分はあるか?」
ミケルは視線を落とし、小さな声で答えた。
「保管室の前を通ったのは確かです。でも、中には入っていません。そんなことをする理由がありませんから。」
零はその言葉を聞きながら、さらに問い詰めることはせず、一旦話を終わらせた。
「わかった。君の言葉を信じるとして、他の可能性も調べてみる。」
その日の午後、零はアミールを伴い、保管室の再調査を行っていた。
保管室内には発掘された遺物が整然と並べられており、棚には厳重な鍵がかけられていた。
「鍵の管理は全て君が行っているんだな?」
零が確認すると、アミールは頷きながら答えた。
「はい。この保管室の鍵は私しか持っていません。事件当夜も常に確認していました。」
零は保管室の棚を丹念に調べながら、微かな傷跡を発見した。
「この棚の傷跡、何かを引きずったように見える。これについて心当たりは?」
アミールは眉をひそめながら答えた。
「いいえ。私が確認した限り、この棚に異常はありませんでした。」
零はその答えを聞きながら、傷跡を指でなぞり、考え込んだ。
「何かがここから持ち出された可能性がある。それが事件と関係しているかもしれない。」
夜、砂漠の静寂が訪れる中、零はテントに戻り、一人思案に沈んでいた。
「保管室の傷跡、砂地の異常、そして凶器の消失。これらを結びつける鍵があるはずだ。」
スフィンクスが星明かりの下で静かに佇む中、零の推理はさらなる深みに進もうとしていた。