10 隠された真実
スフィンクスの背後で朝陽が砂漠を黄金色に染める中、零は調査団全員を集め、これまでの調査結果を整理していた。
事件の全貌がいよいよ明らかになろうとしていた。
「この事件の犯人を特定する準備が整った。」
零は調査団全員を見渡しながら静かに語り始めた。
「リーダーが保管室から持ち出した遺物が、この事件の鍵だ。」
助手の一人が質問する。
「零さん、その遺物が何だったのか、具体的に分かっているんですか?」
零は頷き、遺物の詳細を記した資料を示した。
「それは『氷の魔石』だ。この石には特殊な力が宿っており、使用者が短時間で氷を作り出すことができる。」
調査団全体が息を呑む中、零はさらに言葉を続けた。
「犯人はこの氷の魔石を使い、現場で即席の凶器を作り出した。その凶器は鋭利な氷柱だった。」
午後、零はアミールと共に保管室の再調査を行っていた。
彼は棚に残された傷跡と目録を見比べながら、犯行の痕跡を確認していた。
「アミール、この棚から氷の魔石が持ち出された形跡がある。そして事件当夜、リーダーがそれを確認していた。」
零はアミールに向き直り、静かに問いかけた。
「事件当夜、君が保管室で見たことを全て話してくれないか?」
アミールは一瞬ためらい、冷たい目で零を見返した。
「零さん、私が犯人だとでも言うつもりですか?」
零は冷静に答えた。
「そうだ。君が氷の魔石を持ち出し、その力を利用して凶器を作り出した。」
アミールは後ずさりしながら答えた。
「そんな証拠はどこにもない!」
零は淡々と話を続けた。
「保管室の鍵に残された指紋、棚の傷跡、そして現場の砂に残った氷の痕跡。全てが君を犯人だと示している。」
夕方、零は調査団全員を集め、事件の全貌を明かす説明を行った。
「犯人は氷の魔石を使い、短時間で鋭利な氷柱を作り出した。その氷柱でリーダーを襲撃した後、氷は砂漠の気温で溶けて完全に消失した。」
零は全員を見渡しながら話を続けた。
「このトリックを実現できるのは、氷の魔石を知っている人物だけだ。そしてその人物が、保管室の管理を任されていたアミールだ。」
調査団全体に驚きと緊張が広がる中、アミールはついに観念したように肩を落とした。
「…そうです。私がやりました。氷の魔石は世に出してはいけないものだ。リーダーはその危険性を理解していなかった。だから私は…止めるしかなかった。」
事件が解決に向かい、調査団の緊張が徐々に解けていく中、零はスフィンクスを見上げて呟いた。
「氷の魔石…。地球に存在しないはずの力が、なぜここにあるのか。」
ハルが念話で語りかける。
「零、この事件、ただの殺人じゃなかったね。もっと大きな謎が隠れてる気がする。」
零はその言葉に小さく頷き、新たな謎を追う準備を心に決めた。
スフィンクスが夜空を見守る中、彼らの次なる旅が始まろうとしていた。
■「元勇者 シリーズ1」 で続く。