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新たなる故郷

感想や誤字脱字の報告が有りましたら幸いです。


 《バイタルスキャンを開始…………スキャン完了。 血圧と脈拍並びに脳波の安全基準数値を確認しました。》


 「了解…………さて、これからどうすべきかな悩ましい・・・」

 

 システムに促されるまま倒れている救助者にスキャンの光を当てて私はこれからの対応にアルミニウム合金製の一枚板にカメラセンサーや各種センサー類が取り付けられただけの皿頭を思わず抱える。


 見た目は獣を人間の骨格に合わせた感じである…………灰色の猫…………猫っぽい?


 泥だらけになってしまった革鎧とモノクルを身に着けた服装で何だか古い歴史の資料写真に掲載されていそうな研究者の様な知的な雰囲気を感じる。


 初めてこの星に降り立って邂逅した現地民であるのでもし研究者かそれに準ずる役職の者ならもしかしたら対話を試みる事が出来るかもしれない。

  

 「んぅ…………うニャ、にゃ〜は死んだのかニャ…………此処は天国ニャ。」

 

 《対象者の覚醒を検知》


 《言語パターンを宇宙共通言語に変更。》


 「あぁ…………その、すまないが未だあの世じゃないぞ」


  「そうかニャ、良かったニャ……………ん?」


 意識が戻り、顔を上げるとお互いに目線が合う(猫とロボット)


 「「・・・・・・・。」」


 「「・・・あ……おはようごZA」ギニャアァァァアァ!!!!」


 少しの沈黙の最中に勇気を出して声を掛けると猫っぽい人物は髪の毛と全身の毛を逆立てて見事なバク転を決め、地面に落ちていた護身用と思わしき錆だらけで刃が大きく欠けた大剣をこちらに向けてきた。


 「な!な、何者だニャッッッ!!」


 ・・・・アカン、下手こいたわ。


 《気分の低下を検知、アドレナリンの投与を推奨。》


 「待て待て待て! 私に敵対の意思はないんだ信じてくれ。」


 「ゴーレムモドキの全身金属のデカブツにゃんてどう信用しろって言うニャッ!」


 初歩で躓いたな………えっ〜とこうゆう時は馬鹿正直に話せば良いんだよな?


 「私は別の星からやって来た宇宙人だ。」


 「う、宇宙人…………ニャ!?」


 「そうだ。 こんな見た目だが生前は唯の人間だったのだ。」


 「・・・・にゃ〜んだ唯の宇宙人の元人間だったのかニャ………。」


 「・・・そうだ。」


 「・・・その嘘は………流石に無理があるニャァァァ!!」


 「全部本当なのだがァッ!?」


 泥だらけ、擦り傷だらけのまま大剣を構えて突っ込んでくる猫っぽい人物。


 ・・・前途多難である。





 

 ◇◆◇◆ 


 

 あれから少し追いかけっこして・・・。


 


 「にゃ〜んだ悪い奴じゃニャいのかにゃ。 ゴーレムの姿に似てるからてっきり悪い魔物か呪縛者かと思ったニャ」 


 「だから最初から悪い宇宙人じゃないって言ったじゃないか………て言うか呪縛者? ゴーレムって何だ? 会話の内容的に魔物の一種みたいだが?」


 「う〜ん………ニャー達にとって魔物や呪縛者は当たり前に存在している物だから歴史から説明しなきゃいけないから説明し辛いにゃけど―――」


 それからの説明を要約すると、先ず太古の時代にロンドールと呼ばれた国が島を半分を横断する山脈の中央に存在していたそうな。


 ロンドールは目覚ましい発展によって繁栄を極め、宇宙と繋がりを持つほどに技術を発展させていたそうだ。

 

  私が倒した竜と人間を合体させた様なあれは人造竜機兵と呼ばれる防衛兵器もロンドールの生み出した物なのだとか。


 そんな繁栄を極めたロンドールがある時に何らかの禁忌に触れたのか悍ましい呪いが国の一帯を覆い尽くして魔物とは違う存在を産み落とした。


 因みに普通の動物よりも強大に育っていたり存在するのが魔物だそうだ。


 例に上げると栄養価が高過ぎて手足を生やして動き回る野菜から空を飛ぶ龍までを指す様だ。


 補足としてゴーレムも魔物に該当するみたいだ。

 

 魔物や動物とは違う生き物?で呼ばれているのがドス黒いヘドロの如く侵食する生きた呪いや死なずに彷徨い生者を襲う亡者や悪魔や石像。 


 それを見た聖職者は皆口を揃えて【呪縛者】と呼んだのだとか。


 そんな悍ましい呪いが島中に拡散するのを防ぐ為にロンドールに連なる小国やその他の国が連合となり呪いごとロンドールを水底に封印する事に成功。


 今でもこの一帯を領土とする王国と山を隔てた向こう側の国へ向かう最短の陸路には水底に沈んだロンドールを沿うように進まないと行けないそうだ。


 今でもロンドールの周りは霧が立ち込め、呪縛者が襲って来るのだと。


 ・・・・何か色々長いのでシステムの方に記録してもらった。


 「説明としてはそんな所かにゃ、理解出来たかニャ?」


 「あぁ、まぁ…………大体は理解できた。 態々分かりやすく教えてくれて感謝する。」


 長くて頭がパンクしそうだったなんて口が裂けても言えないな・・・口なんて無いけど。

  

 「それなら良かったニャ…………因みにこれから行く宛は有るのかニャ。」


 「・・・・無いな。」


 この星に来てから半日位しか経過していないので土地勘や国の情勢、通貨や地位も持ち合わせていない。


 …………うん? もしかして、もしかしなくてもやばい状況なのでは無いのだろうか。



 然し救いの手は目の前にあった。

 

 「………もし貴方が良ければニャーの所に来ないかニャ?」


 「え……良いのか? こんな容姿だが」


 私の容姿は邂逅の際の慌て様からしてこの星では異質なのは容易に理解できた。


 だからこそ、その誘いに困惑する。

 


 「最初こそ一悶着あったけどニャーは命の恩人を蔑ろにする程落ちぶれた獣人じゃないニャ。」

 

 そう言いながら後方の竜機兵を指を指してから私の方に向き直る。   


 「だからこそニャーの所で一緒に働いて欲しいニャ」


 「そうか………そうゆう事なら宜しく頼む!」


 もう喜びを隠せないなとそう思いながら手を出す。


 「ニャハハ、これで契約成立ニャ!」


 肉球を差し出され私は痛くないように、それでいて力強く握り締めた。


 「私の名はヘラルド 退役軍人だ。」


 「にゃーの名はコンフェ 複数の商売を商いながら古代遺物の研究者として活動しているニャ。」   



 こうして獣人と元人間のロボットのコンビが誕生した。


 

 


 ◆◇◆◇

 

 

 「そんで…………コンフェよ、何故に私が竜機兵の亡骸を引き摺らにゃならんのだ」


 「まぁまぁそんにゃ事言わずに頑張ってくれニャ」


 「う〜む……釈然としない」


 「ニャハハ〜最初の仕事だと思えば楽なる筈ニャよ。」

 

 そう私は竜機兵の亡骸に乗っかりながら寛いでいるコンフェに問い出す。


 最初こそ呪縛者となった兵器の一部の検体を採取出来れば良いと言う話しだったが結局全身を持ち帰りたいと言い出したので仕方なく平原の草花を轢き潰しながらコンフェの自宅兼研究室のある村に向かっている。



 それはそうとこの星は本当に穏やかで草花が風に揺らめく情景や青空は私の心を癒してくれる。


 ・・・・この重い物が無ければもっと良いのだが。


 「だいぶ歩いてきたが目的地の村まで遠いのかコンフェ」


 「今にゃー達がいる場所が砦跡から少し進んだ【ピスフル平原】にいるにゃからそろそろ見えてくるはずニャ。」


 そんな会話をしていると平原の小高い丘を越えた先に村らしき建物の集まりが見えてくる。


 遠目でも確認出来るプロヴァンス風の家々が建ち並んでいる。


 今の地球では環境汚染が進んで見なくなった建築である。


 ・・・・自然に調和した美しい光景である。


 「凄いな………自然に溶け合うように村があるんだな」


 「そんにゃに感銘を受ける光景かニャ?」


 胡座をかいて寛いでいるコンフェが私にそう問いかけてくる。


 「私の故郷では度重なる戦争で自然が破壊されていてな…………私に物心が芽生える時には無かったからな。」


 「随分物騒な故郷にゃね…………。」


 「本当に、愚かだったとしか言えんな全く。」


 今振り返ると本当に殺伐としていたとしか言えんな、此方の人間達の悪行を話したらこの星の人類は顎が外れる位驚くだろうな。

 

 ・・・・いや、もう忘れよう………兵器として生まれ変わってからあの星での記憶はただひたすら手を血で染める事ばかりだったのだ。


 私はもう自由なんだ。


 好きに生き理不尽に生き続ける。


 もう後悔の無いように。 

 

 「ねぇ………大丈夫かにゃ……凄く辛そうな顔しているニャ。」


 気付いたら私の隣を歩き左手を不意に握ってくるコンフェがいた。


 どうやら心配させてしまった様だ。


 「………ん? あぁすまない感傷が顔に出ていたか………ま、顔なんて無い様な見た目だがな。」

 

 「本当に大丈夫かニャ?」


 「あぁ、大丈夫だ。 心配させてすまないなコンフェ」


 「辛い時は正直に話すのが吉ニャ」


 出会ったばかりの人に心配させた上に励まされて恥ずかしい。


 以後、悟られぬ様に気を付けなければな・・・・。


 ◆◇◆◇


 そんなこんなで村まで数百メートルまで近づいた所で村の入り口らしき場所から馬に乗って此方に近づいてくる鎧を着込んだ人間らしき人種をセンサーの倍率変更で確認出来た。


 「武装した誰かが近づいて来るぞコンフェ」


 「んにゃ〜アレは駐在兵のアレフおじさんだニャ」


 泥だらけのになったモノクルを拭いて目を凝らすコンフェがそう答える。


 「なぁコンフェ、もしいきなり宇宙人を名乗る金属のデカブツが現れたらお前ならどうする?」


 「ニャハハ〜勿論警戒るニャね」


 「だよなぁ………。」


 私だって火星人に初めて出会ったばかりの時に悪い宇宙人では無いと言われたが銃口を向け続けていたのだ。 


 この星の文明の発展の度合いがどうであれ私を見た現地民が警戒するのは必然である。


 そう考えると少しの会話で打ち解けられたコンフェの奴は肝っ玉が据わっているのか?


 若しくは頭がハッピーなのかもしれない? …………凄く優しいのは少し言葉を交えて感じ取れたが。



 そうこうしている内に馬の蹄の音と共に男の声が響いてくる。


 「コルゥゥゥラァァァ!! コンフェー!! この馬鹿猫がァァぁ!! 皆で心配していた所にまた面倒事を村に持ち帰りおってコノヤロォ!」

 

 「アレフおじさぁぁぁん!! 只今帰りましたニャ!」


 私の頭によじ登り千切れんばかりに両手を振るコンフェ、何だか今の会話に人としての温もりを感じて目が潤む。


 まぁ涙腺無いんだがなハハッ。

 

 一人で感動していると馬から下馬し、手に長剣を携えて此方に駆け寄ってくる。

 

 「傷だらけで帰ってきおって…………それでこの金属の怪物と引き摺られる怪物について説明して貰おうか」


 私の頭から降りたコンフェにそう告げながら警戒の眼差しを向ける。


 「この人?はヘラルドさんニャ。 別の星からやって来た宇宙人でにゃーの命の恩人なんだニャ」


 「ど、どうもご紹介にあずかりましたヘラルドです。 地球と言う星からやって来た宇宙人で、機械の身体ですが歴とした人間です。 …………以後お見知り置きを」


 「う……宇宙人? キカイ? ニンゲン? チキュウ? お前は一体何を言っているんだ。」

 

 至極真っ当な反応が見れてなんか安心した私がいた。


 薄々気づいていたがコンフェの適応力が異常なだけでアレフさんの反応が一般的な反応なのだろう。


 アレフさんが混乱している所にコンフェが言葉を切り出す。


 「アレフおじさん聞いてニャ。 アレフおじさんも見ていたと思うにゃけど、少し前に見えた筈の青い流れ星は実はヘラルドさんでニャーが突然目覚めた古代遺物に襲われていた所を助けてくれたんだニャ。 助けてくれた恩返しにニャーが雇ったんだニャ」


 「ちょ、ちょっと待ってくれ雇ったのか!? このゴーレム擬きを!?  何百年前の遺物に襲われただって正気かっっっ!?」


 余りにも衝撃的な情報量に頭を抱えるアレフさんにあっけらかんとしているコンフェの対比に私まで頭を抱えそうになる。


 アレフさんの意思次第で私のこの星での立場が決まってしまうのだ、出来れば穏便にこの星を滅ぼさざるおえない状況は避けたい。 


 「にゃーは正気ニャ! 恩に報いる為に身寄りの無いヘラルドを雇ったにゃ、保存状態の良い古代遺物に未知の技術で身体を構成する人間を態々逃す理由も無いニャしね。」


 「はぁぁァァァ…………お前は頑固だからどうせ捨て置けと言っても聞かんのだろう………、この事を国王様と騎士団長に報告する私の身にもなってくれ。」


 ガックリと肩を落とすアレフさんに私は軍役の際に見た部隊長の背中を幻視した。


 …………私が着いてきてしまったばかり本当にスイマセン…………それと部隊長、交戦許可が下りてないのに敵兵を狙撃したのは私です。


 機械の誤作動と言って誤魔化しましたが本当は私が撃ちました・・・・因みに反省はしてません。


 

 「取り敢えずコンフェ、お前は暫く発掘調査は禁止だからな。」


 「えぇ~そんにゃ〜。」


 竜機兵の亡骸を撫で回しながら不満げにするコンフェに愛ある拳が脳天に当たる。


 「当然の結果だ! 私の仕事と心労を増やしおって!!」


 「ぎにゃァァァ! 拳骨は酷いにゃ!!」

 

 「少しは懲りろ!」


 コンフェの頭がたん瘤だらけなのを余所に私の前にアレフさんが歩み出る。


 「貴様は確かヘラルドと言ったな、人を名乗る化け物を本当なら村に近付けたくはないがコンフェが気に掛けている者を無下には出来ん。」


 「あぁ………かたじけない。」


 「コンフェの命を救って頂き感謝申し上げる。 だが貴公はゴーレムにしては大きい上に偉く人工的故に目立つ、悪目立ちせん様に気を配れ。 それとコンフェと同様に村から余り離れるんじゃないぞ」


 鷹の目の様な視線に射抜かれながら私は感謝の言葉受け取り、馬に跨ったアレフさんに膝を地面に着いて感謝を告げる。


 「あの娘は私の大事な家族だ。 どうか娘の気が済むまで付き合ってやってくれ。」


 コンフェとアレフさんは親子だったのか…………然しコンフェは獣人だったがアレフさんは一見普通の地球人と同じ人間に見えるがどうゆう事なのだろう。


 ・・・そんな考えを見抜いたかの様に再びアレフさんが此方に振り返る。


 「初めて出会ったばかりのお前に話す事ではないが血は繋がっていないが大事な家族だ。 …………あの娘を哀しませた時、地の果てまで追い立て息の根を止めてやるから覚悟しとくんだな。」


 「・・・・き、肝に銘じます。」


 とんでも無く恐ろしい宣告を受けて呆然とする私を余所に馬の手綱を引き、あっと言う間に村の中に消えていった。

  

 

 ・・・どうやらこの星の人間は私が考えるより強く逞しいのかもしれない。



 


 ◇◆◇◆

 

 コンフェの親父殿との邂逅から暫く後、私はコンフェに先導されながら竜機兵を引き摺りながら村の中に入った。


 白壁に赤い屋根の家々、酪農地帯なのか多く広がる農作地と放牧地がレーダーに多く映り込む。


 村人達はコンフェが帰って来た事に安堵の言葉を漏らしていたが、私と竜機兵の残骸を見るなり驚き引き波の如く道が開いた。


 どうやらコンフェは発掘調査で掘り出した物を自宅に持ち帰っており度々村人達を驚かせていて、今回の私を含めた大物の2体を見て遂に頭を抱えている状態になっている様だ。


 ・・・・問題の張本人は頭を抱える村人達を見ていた隙にガラクタのように発掘品が散乱している庭のスペースを一生懸命確保していたが………。


 そんなこんなで私のこの星での初日を終えていったのであった。


 【緑花の紋章】

 

 緑の葉に白い花を咲かせた緑花草を彫り込んだ紋章。 サルヴァ王国を拠点とする商業組織の証。 幼き創業者コンフェ=ドール=ベルカの魔力が僅かに宿っており 所有者に抗呪の力を僅かに与える。 両親をロンドールの深淵の如き呪いによって失った彼女は人々の為に呪われた技術に固執したと言う その直向きに贖罪の女神ベルカを幻視した者達は少なく無かった。 

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