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ファーストコンタクト

感想や誤字脱字が有りましたら教えて下さると幸いです。



 《メインシステム通常モードに移行………噴射装置の冷却を開始。》



 「ふぅ………何とか着陸出来たな」


 ブースターとスラスターから揺らめく陽炎を背に私は一人安心から漏れ出た独り言に気恥かしさを感じながら辺りを見渡す。


 森林特有の匂いや抉れた地面から顔を出す昆虫、風に囁く木々の音を各種センサー類が拾い上げる。


 私が人間だった頃の汚染された地球ではあり得ない環境である・・・・奇跡と言う表現がこの星に相応しいだろう。


 視界と聴覚が拾う全ての音が私にはキラキラ光る宝石だと幻想させる程だ………人間の時の私だったったら感極まって号泣していただろう。


 《数百メートル付近、水流の音を検知》


 こんなにも清浄な環境なら川だってとても綺麗なのだろうと私はスキップしてしまいそうな程、軽い両脚を抑えながらトランクと整備道具を両肩のハンガーラックに掛けて音源へと足を進める。


 天気は晴天、空は化学汚染された灰色では無く清々しい青空である。


 歩いているだけだと言うのにとても気分が良いな………なんて浮かれていると針葉樹らしき木々を抜けた先に恒星の光に照らされて乱反射を繰り返す小川を見つける。


 小川に近づき水面に顔を近付けると苔が生えた石や小魚の姿が確認出来た。


 念の為に手で水を掬ってシステムにスキャンをさせる。


 《水質、水温共に正常値を計測しました。 重大な化学汚染反応無し》


 気温・気候・恒星・水源の有無。


 …………全てが生命が継続的に生存出来る環境がこれで確認出来てしまった。


 地球の様な居住に適した惑星と言うのは天文学的にも奇跡だと何時しか聞いた時はあまりピンとこなかったが、いざ自身がその奇跡を目の当たりにしてやっと奇跡と言う言葉の重さが理解できてしまった。


 しかも降下中に見た白煙は確実に文明を持った生物がいる………。


 このような場所に巡り会えた奇跡を自らが積み上げてきた人生の報いなのかもしれないと思う事にした。


 そんな事考えていた刹那、私は水中に沈んでいた鈍く光っていたある物を見つけた…………。


 《内臓データには存在しない金属を検知》


 「此れは………まさか、私以外の機械が存在するのか?」


 

  私が拾い上げたそれは・・・・【シャフトが付いた欠けた歯車】だった。


 色合いから錆のつき方、シャフトの溝を見れば見るほど高度な技術が見て取れる。


 少なくとも地球の技術では無い事が伺える。


 「この星は退屈せずに済みそうだ…………ん? 何の音だこれは………システム、この音はどっちの方角から発生しているか分かるか?」


 歯車に釘付けになっているとどこからか何かが疾走する音をセンサーが拾う。

 

 《スキャンの結果、ここより西北西よりの北西方向から二足歩行の生物と思わしき急動作的な足音と二足歩行の大型の兵器の駆動音を検知。》


 やはり聞き間違いでは無さそうだ、二足歩行の生物と大型の兵器が一緒に仲良くランニングしているとは考え難いので恐らくと言うか十中八九厄介事だろうな…………。


 そう考えながらトランクを肩から降ろして中身を開き、エンフォーサーとマデューラを素早く組み立てる。


 組み立てに約30秒、トランクの蓋を閉じて肩に仕舞うのに5秒も掛かってしまった。


 《ジェネレーター出力上昇・過剰出力排出弁全閉鎖・出力制御棒緊急解放。》


 胸の奥から熱を帯び、背中からは4本の制御棒が空気に触れて蒸気を噴き出す。


 ・・・・・急いで助けなければ必ず後悔する。


 ・・・私は亡き戦友達に誓ったのだ。


 もう後悔の無いように生きると………。


 《「メインシステム戦闘モード起動!!」》


 

  



 ◆◇◆◇

 

 ???



 今日は太陽ポカポカの晴天日、王国での商売をお休みして生まれ故郷の村に里帰り中だニャ。


 久々に帰ってからはゴロゴロ休みがてら乳製品の買い付けの交渉をして牧場で牛乳をご馳走になったニャ〜。


 ここの牛さんとヤギさんは穏やかな環境で育っているから凄い質が良いって王国で有名だから飲食店から酒場や王宮のコックさんから贔屓にして貰っているニャ。


 そのおかげでニャーの商売は乳製品の卸売業だけでその他全体の売上を賄えるニャ。


 黒字なのは良いんにゃけど毎日クタクタだニャ…………。


 でも最近は仕事を任せられる従業員が沢山増えたからニャーの休みが取れるようになったにゃ〜。


 そろそろ自分のやりたい事を優先する時が来たにゃ、元々は古代遺物の調査の為の副業として始めた商会がまさか軌道に乗るとは思わなかったにゃから本業に力を入れる事が出来るから超ワクワクするニャ〜バイブスアゲアゲニャ〜。


 そんにゃ訳でニャ〜は故郷の村から少し離れた平原にあるマルラ砦跡に来ているにゃ。


 此処は石板に記された場所で、古の時代……深淵から産み落とされた不死の呪いの軍勢を退けた防衛の要だった場所だった可能性の高い場所と言われていて、その証拠に人間の兵士や獣人の兵士等の他種族の遺骨が多く見つかっているにゃ。


 そしてその時代で使われたと思われる兵器【人造竜機兵】の残骸が見つかっているニャ。


 研究者達によると残骸から推測出来る大きさは7メートルから8メートルの巨体に竜の頭と人の身体を持ち、口から放たれる一筋の閃光で深淵の軍勢を薙ぎ払いながら手に持つ斧槍を青い閃光を纏わせながら屠っていたと言われているニャ。


 そして竜機兵の身体を構成していたのは魔法による文明の産物だけでは無く、魔法と金属の二種類で造られていると言う事が考察されているニャ。


 明らかにこの星の文明としては異質と研究者は口を揃えて言っていたと聞いたニャ。


 そんな歴史的な遺物は粗方発掘されて国の研究機関が持って行ってしまったからニャ〜は偶に発掘した歯車やネジ、コアの一部と思わしきエネルギー体を家に持ち帰り研究を朝も夜もしているニャ。


 そうして研究漬けのある日。


 場違いな青い流れ星と共に私の運命の歯車を大きく動かされる日が訪れたにゃ。


 いつもと変わらず発掘作業に勤しんでた昼頃に青い流れ星を目撃したニャ、余りにも眩しくて目を細めて流れ星を見つめていたニャ。


 その青い流れ星が近くの森に落ちて行ったの見届けたニャーは森に向かおうとした瞬間、地響きと共に残骸から推測されていた兵器【人造竜機兵】が地中から這い出てきたニャ。


 竜の頭に人の様な身体を持ち、青白い光を纏った斧槍を携えながら現れたその姿は正に発掘された残骸そのものだった…………ニャ。


 牙の合間から漏れ出る黒い霧に全身の毛が逆立つ感覚を本能に刻み込まれたニャ。


 ・・・・あれは絶対に魔法なんかじゃ無いにゃ、最も悍ましい闇魔法より深いものニャ。


 そう唖然としながら震える足に力を込めて一歩一歩竜機兵から距離を離し、使い古してボロボロの細身の大剣を担いで森に向かって死に物狂いで走り出す。


 悍ましい殺意と唸り声が後方から耳の奥から魂までも震わせる。


 深淵の軍勢を退ける兵器が何故ニャーに殺意を向けるか分からなかったにゃけど恐らくあの兵器は深淵に堕ちている事は何となく口元から溢れていた黒い霧から推測出来るにゃ。


 不意に走る足が蹌踉めいて僅かに左にズレた瞬間、浮遊感と熱さを感じて一筋の閃光が身体スレスレを通り抜けて爆炎と爆風が身体を襲ったと感じた時には足は宙に浮き、強い衝撃に肺の空気が潰れた苦しさを感じながら霞む視界に竜機兵が斧槍を振り下ろそうとする光景が見える。


 苦しくて眩しいけど、もう身体が動かないニャ…………何だか眠いにゃ………もっと研究がしたかったニャ。


 未だ伴侶だって見つけて無いのに悔しいニャ。


 暗く霞む視界の中で何故かゆっくりと進む時間と共に振り下ろされた斧槍によって迎える死を呆然と見つめていたニャ。


 その刹那、運命の緋色の閃光がニャーの視界を塗り潰したニャ。


 



 

 ◆◇◆◇

 

  

 

 数度のステップを踏み締めてメインブースターを吹かし、宙に浮いて音速の速さで目的地まで飛び出して行く。


 木々を薙ぎ倒しながら最短ルートを飛んで行く………木漏れ日が綺麗だと言う思考を殴り捨てて知らない誰かを助けたい一心で森を抜ける。


 ・・・・見えた。


 カメラが捉えたのは構造物の残骸の近くで存在感を示す様に青白い光を纏った斧槍を振り下ろさんとする不気味な竜の頭を持つ巨人と、獣を人の骨格に合わせたような生物が倒れていた。


 《敵性対象の脅威度判定を更新 武装出力向上。》


 左手に固定したマデューラが緋色に一層強く閃光を放つ。


 音速の速度によって加速した世界を抜けて巨人が振り下ろす斧槍にマデューラを下から上に振り上げると青白い光と緋色の光が質量を持ちて鍔迫り合う。


 「強いな巨人よ………だが、勝ちは絶対に譲って貰うぞッッッ。」


 「□■□ □□□ □■ ■■■」


 巨体から振り下ろされた斧槍をマデューラで抑え込みながら会話を試みるが言語が違うのか言語データから算出出来る物の中から該当する言語が見つからない。


 ・・・・殺るしか無さそうだな。


 左腕部のスラスター推力を瞬間的に上昇させて斧槍ごと巨人の身体を仰け反らせて生まれた隙に胴体にスラスターで速度の乗った蹴りを胴体に打ち込み、巨体を数歩後退させる。


 「□■■■ ■□ □■□ ■□ ■□■ ■□」


  

 《敵性対象、胴体中央部に高エネルギー反応を確認》


 「強者よ、もう眠るがいい」


 私は体勢を立て直した巨人が斧槍を再び振り下ろさんとする刹那にそう呟いて右手のエンフォーサーの照準を巨人の胸に合わせ引き金を引いた。


 緋色の閃光が音と光を一瞬置き去りにして巨人の胸を融解させて背中から火花と歯車を吐出させる。


 巨人は斧槍を振り下ろそうとした状態で数秒固まり、ゆっくりと私の左側に倒れ込んだ。


 《脅威の無力化を確認………周囲に敵影無し、システム通常モードに移行します。》


 「戦闘モードを終了。 殺し合いは疲れただのもう戦いは懲り懲りだと思っていたがやはり戦いは良いな、私にはそれが必要だ。」


 機械的な女性のシステム音声を聞きマデューラのレーザー状の刃を仕舞い、エンフォーサーからジェネレーターに伸びたエネルギー供給ラインを取り外しながら戦闘後の高揚感で返ってくることのない会話を上の空の中で口走る。


 《ヘラルド、救助者のバイタルスキャンを開始してください。》 


 「すまないな、戦闘に集中し過ぎて忘れていた。

 救助対象者のバイタルスキャンを実施する」


 上の空でいる事をシステムに咎められて私は倒れている者の元へ小走りで向かった。

 

 

 【人造竜機兵の斧槍】


 かつて深淵の軍勢を叩き潰す為の斧槍 今は深淵に濡れている。 その重い刃は魔術では無い未知の技術で青白く光り輝いて深淵の者を安易に屠る事が出来た。


 戦いの最中 人は禁忌を犯し生きたる兵器を産み落とした。 語られる文献の少なさがその証明だろう 

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