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目覚める者と迎撃任務


 【磔の斧槍】 干乾びた遺体が磔にされている斧槍 僅かに闇属性を宿し 構える事で刃に闇属性を増幅させる。 後に人と呼ばれる小人の王は命の毒 或いは呪いを星に齎して自分の世を謳歌した 然しそれは同時に深淵を溢れさせる原因にもなった。 耳を澄ませば今も枯れた世界に断末魔が聞こえる。


 【暗痕の筆】 灰の娘カランが絵画を描く為の筆。 その筆が描くのは誰かの思い出や魂だと言う 事実彼女は優しい嘘で塗り固めたもう一つの世界を描き産み出す 筆よ嘘を描いて…例え悲しい嘘だったとしても。



 呪縛者との戦い、若しくは弔いから数日が経過した。 


 洞窟の入り口付近に到着した緑花の職員達は最初の難題に頭を悩ませた。


 それは凡そ数百メートルもの降下させる機材搬入の技術的な問題である。  


 生き物単体なら空を飛んだり瞬間移動出来る魔法や魔術があるが機材搬入には使えず。


 迅速な呪縛者の発生原因の調査や機体の整備が求められ、一刻も早く洞窟の奥にある地底湖への到達が急務であった職員達はルートを大きく変更した。


  その新しいルートは私達がいる地底湖の真上、つまり天井を地上をぶち抜くと言う大胆なものだった。


 魔法や魔術って本当に凄いんだと認識し直したよね、天井が完全に制御されながら崩れていく様はまさに神様が後光を背景に地上に降り立ったかの様だった。  


 私もやってみたいが生憎空中に存在する魔力をナノマシンで行使する術を持たないから無理だろうがな。


 そこからは牽引機で機材を地底湖まで降ろし、整備部隊や地底湖の調査員達が地底湖の周りで忙しそうに動き回っていた。


 

 聞き耳を立てるとどうやら地底湖の中に大量の古代遺物やら機械が水没しているらしく、それを整備兵と一緒に機体の整備をしていたコンフェが目の色を変えて飛び出して行った。


 ……本当に古代の遺失物好きなんだな。


 いや、自分の組織で有益な物が好きなのかもしれんが。


 

 「コンフェドール様! 状態の良い石版がこんなにあります!」


 「こっちには錆びてはいますが再利用可能な機械部品が有りまする!!」



 「うニャぁぁぁああ! ここ最高にゃぁ!!」


 ・・・調査員達と狂喜乱舞している姿を見るにただの物好きなだけだな。


 

  「……帰投したら特別メニューを考えんとな」


 そんなコンフェを見て眼光を爛々とさせながら報告書と呪縛者の発生原因に関連した資料を諜報員から受け取り見比べているアスター教官。


 

 そして私はと言うと。



 「ヘラルド様、ホバータンクのシールドジェネレーター持って来た…」


 「英雄様見て見て…冷却装置半分溶けてる〜」


 何故か帰投したはずのセレンディとジャイトが身体中が包帯巻きだと言うのに整備兵と一緒に装甲の取り替えや破損した部品の取り替え作業に参加していた。


 「おいおいお前達、大人しく療眠区間で安静しとけ…」


 「「だって魔法掛けられても全然眠くないもんッッ」」


 「それでも安静にしなさい」


 本当子供って元気だなぁ…若しくはドーパミンの所為で眠れないのかもしれないが。


 それでも身体は負傷しているから安静第一だ。


 「ヘラルド様は身体大丈夫?」


 「様付けしないで気軽にヘラルドって呼んでくれても構わん。 俺…いや私の身体は部品交換が出来たら動ける程度だから大丈夫だぞ」


 元々この量産型の身体は元を辿れば作業機のパーツの寄せ集めである。 

 

 他の量産機シリーズよりも醜く歪だが安易な整備性と安価な価格が売りだから色んな種類の部品も使える便利な身体である。


 《変更された部品との自動互換適応を開始…。 ……変更された部品との性能同期完了》


 《破損したサブジェネレーターの換装を確認。 エネルギー制御との整合性確認を開始》


 《サブジェネレータ内オーバーシステムファイアErrorを確認。 サブジェネレーター制御プログラムをメインシステム制御に変更する為、統合します》


 《統合完了。 エネルギー制御を統合…回路遮断を解除します》


 セレンディとジャイト、整備兵が私から離れると身体の周りが何度か明滅した後に蒼い透明な膜の様なシールドが展開する。


 「良し。 …上手く行ったみたいだな! 皆かたじけない!」


 「「私達も褒めて〜」」



 「あぁ…ありがとな」


 セレンディとジャイトの頭を優しく撫で、やらなければならない事を考えて脳裏にレシピが浮かび上がって来る。


 「セレンディにジャイト。 もし未だ眠くないなら頼み事を頼まれてくれないか?」


 「え〜…良いよー」


 「何するのヘラルド〜?」


 「それはだな……と言う事なんだ。 頼めるかい?」


 「「分かった!!」」


 ある頼み事を承諾してくれた2人は魔方陣を展開して一瞬で姿を消す。


 ・・・私も準備しなければな。







 ◇◆◇◆



 

 

 あれから暫くの間待つこと数十分。


 台車に頼んだ物を沢山積んで魔方陣から飛び出て来たセレンディとジャイトの頭を撫でる。


 

 「済まないな2人とも、身体ボロボロなのに…」


 「炎は小さくとも炎」


 「私達は火の無い灰」


 「・・・ゴメンちょっと何言ってるか分かんない」


 「「つまり元気一杯」」



 「あ、うん…」


 よくわからん言い回しだが元気なら良いか?


 

 「さて、と…作るかパンを!」

 


 パンなんて何百年何十年振りだろうか…多少不安だがコレが彼女への慰め、或いは弔いとなることを願おう。


 「よし二人ともお手々を綺麗にしたか?」


 「「した!」」


 簡易の調理場を用意してくれた職員に礼をしながら素材を計量器で計った小麦粉と塩砂糖、バターにパン種をボウルに入れてセレンディとジャイトの前に置く。

 

 「じゃあ捏ねるんだ。 優しく強くな」


 「「分かった!」」


 仲良く捏ね始めたのを横目に私も職員に魔法で手を綺麗にして私サイズの特注品のボウルで生地を捏ね始める。


 最初の内は指の間等に纏わりついていた生地も根気良く叩いたり捏ね続けると段々と一つに纏まっていく、生地を押す感覚と優しい生地の匂いは人間を辞めた今も心地良いものだ。


 「ヘラルド様見て〜…まんまるなった」


 「おお! 綺麗に纏ったな。 じゃあ暫く生地を寝かせようか」


 「寝る?」


 「パンも眠るの〜?」


 ボウルを持ったセレンディとジャイトが不思議そうに聞いてくる。


 確か…グルコース? を安定させる為だったかな?


 朧気な記憶だが美味しくなるなら何でもよいか…。


 「そうだ。 寝かせると生地の中の糖分が発酵して膨らむと焼いた時に綺麗に焼けるからな」


 ボウルに布を被せて…と、1時間ぐらいかな。




 ◆◇◆◇



 1時間後。



 「おぉ〜まん丸に膨らんでる」


 「ぷにぷにしてる…」


 ボウルの被せていた布を取ると見事に発酵してガスが生地を膨らませていた。


 「じゃあ指に小麦粉を付けて優しくガス抜きをしようかな、二人とも」


 「「うん!」」


 2人仲良くガス抜きをしているのを見守りながら私も指と作業台に小麦粉をまぶして丁寧にガス抜きをする。


 こうすると気泡が均一になって焼き上がりが良くなるんだったかな?


 「ガス抜き出来た!」


 「じゃあ次は15分位休ませて上げようか」



 ◇◆◇◆ 


 15分後。


 


 「じゃあ2人とも生地を四等分にして丸めて焼こうか」


 「パン作りって大変…」


 「ちゃんと美味しくなるかな?」


 この身体になって初めてパン作りをしているが2人の言う通り手間がかかるな。


 パン屋の人達は毎日こんな重労働をしてるんだな…有難い事だ、彼ら彼女のお陰で皆んな美味しいパンが食べられるんだからな。


 「早速焼きたい所だがパンを焼く焼窯の事を考えていなかった。 ……どうしたものか」


 「えぇー!? 早く焼きたい!」


 「焼きたい! 焼きたい!」


  

 こ、困ったなぁ…どうしよ?



 …あ、如何にも窯を造れそうな職員が来てくれた。


 「ヘラルド様お困りの御様子で。 何なりとお申し付け下さい」


 「あ、あ〜その…パンを焼く為の窯が欲しいのだが…どうにか出来るか?」


 困っていた私の下に来たのはトパーズの耳飾りが似合う中性的な顔立ちの少年だった。


 「窯ですか…出来ますよ」


 「本当か!? かたじけないな!」


 やったぜ、流石魔法使い…或いは魔術使い。 何でも個人の力で出来ちゃうの羨ましいな。


 「君、名前は何と呼べば良い?」


 「僕の名前はマリア・マーキュリーって言います。 正直英雄様に名を呼んで頂けるなんてとても恐れ多いのでマリアと、呼び捨てにして下さい」


 魔方陣を展開して地面に手を付けるマリアに名を問うと透き通る様な綺麗な声で返事が返ってくる。


 「それは魔法なのか?」


 「これは魔術ですね。 魔法も扱えるのですが未熟な身なので杖がないと魔法が扱えないんですよね〜えへへ…」


 窯を地面の岩石や土壌で構築しながら照れ臭そうにする。


 こんなにも手慣れて魔術を行使しているが彼自身は魔法があまり得意では無いと…似たような物なのにそこまで差異が出る様な物なのだろうか。


 「よくわからんのだが魔術と魔法は似て非なる物なのか?」


 「ん~~そうですね。 空気中の魔力を体内で練り上げて行使するまでは一緒なのですが魔術は基本的に魔方陣と言う…分かり易く言えば数式の公式をなぞり発動する物で、魔法は問いの答えを個人間の解釈…つまり暗唱によって発動する物です」


 「個人間の解釈で行使できるなら魔法の方が便利そうな物だが違うのか?」


 恐らく魔術は機械で言うプログラムで魔法はソースコードなのかも知れないな。 魔術は完成された作品をそのまま投影した物、魔法は完成するまで個人作品の創作と言った所だろうか。


 「魔法はどうしても人によって威力の振れ幅が出てしまいますので発動して一定の威力が保証された魔術が一般的何ですよね。 それに魔法は才能があれば威力を自由に調整出来るので体力や魔力の消耗が激しいんですよね…」


 「なんか色々と凄いんだな」


 「そうなんですよ。 だからこそ魔法は杖が無いと熟練した者でなければ発動さえ難しいんです……良し、窯が出来ましたよ」


 話しが終わると同時に土色だが丈夫そうな焼窯が完成した。


 これなら沢山のパンを焼くのに申し分ないな。


 「ヘラルド様早く焼こうよ〜」


 「焼こう焼こう…」


 二人も待ち切れなさそうだしな……。


 「分かった分かった、マリア済まないな助かったよ」


 「いえ…またいつでもお声がけください」


 本来の仕事に戻るマリアに礼をしてその背を暫く見つめた後にパン作りに思考を戻す。


 「良し…焼こうか」


 窯に薪を焚べて予熱が十分に高くなって中が熱が内側を赤く揺らめき光らせ始めたを見てセレンディとジャイトから渡されるパン生地を中に丁寧に並べる。


 「後は待つだけだな、ありがとうな…疲れているだろうに」


 「焼き立てパン楽しみ…」


 「後どんくらい待つの〜?」


 「ふむ…そうだな大体30分くらいかな」


 窯の中を待ち遠しそうに覗く二人と一緒に覗き込むと熱に照らされる生地達が見える。 …大きさや形、温度によって多少は焼き上がり時間は変わるが大体その位だろう。


 「セレンディ…ジャイト、パンが焼けたら起こすから仮設の休憩所で休んできなさい」


 「え〜…」


 「だってさお姉ちゃん、どうする?」


  

 まだまだ元気そうだが倒れられたら事だ、本当に子供って体力のギリギリまで活動できて羨ましいな…大人になると寝る度に体力を削られると言うのに。


 「ちゃんと起こしてやるから…な。 少し休んどきなさい」


 「「は〜い」」



 渋々と言った感じで休憩所に向かった2人は職員に魔法で身体を綺麗にして貰いながら休憩所の中に入っていった。

  


 「待ち時間は何をしたもんかな」


 身体のメンテナンスもして頂いたしコンフェの奴は未だ機械部品やら古代遺物の検分で研究者達と楽しそうにしているからそのままで良いしな……。


 《不明な信号を検知》


 「暇だ…ん? これは?」


 チリチリとしたノイズが崩れた壁面の瓦礫の中からシステムが微弱な信号を拾ったので目を凝らしながら近付いてみる。



 ノイズの強弱を頼りに瓦礫を退かしていく…すると瓦礫の奥に小さく平べったい土の塊が出て来た。


 「コレは…情報端末かな?」


 壊さぬ様に瓦礫の中から拾い土の塊を取り除いて行くと基地内の発掘品の保管庫で見た情報端末と同じ型番らしき文字が微かに視認出来た。



 「こんな場所にも星外企業の手が伸びていたか…元々ここは拠点の一つだったのか?」


 こんな湿った薄暗い場所で一体何をしていたのだろうか、謎は深まるばかりである。


 「少しでも情報を収集できれば良いが…」


 《システムハッキング開始。 5%…15%…35%…75%…100%》


 《破損した情報を除いたデータの抽出に成功。 表示します》


 ◆◇◆◇


 ◯月☓日。 パドルフ研究室長の命によりこの第五研究所の警備長に着任する事になった。 これで娘に安月給ダメ親父と言われる事は無いだろう。


 天国にいる妻にも良い報告が出来そうだ……。 



 △月☓日。 企業間同士による蹴落とし合いである企業戦争が収束するまでは余り家に帰れなかったが娘は元気そうだ。 近所の人達によると最近は戦場から持ち帰った部品で人型の兵器を組み立ている様だ。 

 生前妻も機械弄りが趣味だったのを思い出したよ。 


 ・・・娘よ、パソコンから企業の非合法戦闘用部品を裏ルートから買うのは良いが大人の玩具の購入履歴は消しなさい……お父さんビックリしたよ。 そっちの趣味も妻に似るとは。


 □月□日。 もうすぐ娘の誕生日なので何を買えば良いだろうか? 


 最近は身体を機械部品に置き換えるのが最近のマイブームの様だ。 ……軍の強化兵士用部品の更新時期の筈だから友人の伝を借りるか。


 きっとコレなら反抗期の娘も喜ぶだろう…あぁ早く家に帰りたい。


 ☓月◯日。 今日は緊急の招集で早く家を出なければならなくなった。 どうやら大規模な研究所があるロンドールで実験対象がコントロール不能の状態に陥ったらしい。 


 この星に駐留する軍の戦力や企業の傭われもそちらに出張っている様子で私達の持ち場は何時もより静かであった。


 ・・・嵐の前の静けさでなければ良いが…。

 

 ☓月☓日。 かなりまずい事態になった。 コントロール不能になった対象はこの星全域に広まつつあり、遂には避難命令が発令され民間人の避難船は多くの避難民でごった返していた。


 ロンドールの鎮圧に向かった軍の友人とは既に通信が途絶してしまったので状況は絶望的なのだろう。


 一体全体研究者共は何を研究してやがったんだ!?


 

 ◯月◯日。 今日が何月何日か正直分からないが記憶を頼りに書き記そう……この星に蔓延し始めた深淵と呼ばれる対象は物や生物を侵食して避難船を撃ち落とすまでに至り、私と娘は人型兵器に乗りながら職場である場所で寝食の共にする事になってしまった。


 まさか反抗期を終えざる終えなかった娘と過ごす事が出来て嬉しい反面申し訳ない気持もある。


 ☓日。 この研究所にも深淵は侵食し始めた。 避難民や原住民と共に出来る抵抗はしているがもう駄目だろう……私は一緒に抵抗してくれている娘の人型兵器のコアブロックをハッキングして即席の生命維持装置にし、深淵の手が及ばない湖に沈めた。


 元よりこの人型兵器のコアブロックは私が警備部隊の職に就く前の仕事で生命維持装置として機能する様に設計した部品でもあるので大丈夫だろう。


 ……娘は意識を私が強制的に落とすまで私と一緒に戦うと泣きながらに言ってくれたが私にとって娘は命を賭けて守りたい妻の忘れ形見でもある。


 どうしてもお前には生きて欲しかったんだ。 どうか身勝手なダメ親父を許して欲しい…愛してるよ。


 ずっとずっと愛してる……。


 もうすぐ大量のエネルギー貯蔵施設に引火してここ一帯は吹き飛ぶ。


 ・・・お父さんとお母さんはお前をずっと見守って……



 ◆◇◆◇

 

 どうやら誰かの日記の様だな。

 

 「……」


 また一つ呪縛者を生み出す呪いを放置する訳にはいけない理由が出来てしまったな。


 「一応コンフェ達にも報告しとくか…」


 知り得た情報を報告する為にコンフェ達の下に向かおうとした刹那、地底湖から大きな飛沫が上がる。


 「ゔニ゛ャャャャッッ!!」


 「おっと!」


 凄まじいエネルギー波に吹き飛ばされたコンフェを咄嗟に左手でキャッチしてからシールドを展開し、エンフォーサーから取り外したマデューラを構える。


 慌てて逃げる調査員達と現場に集まる護衛の者達を一瞥しながら警戒し続けていると現れたのは大量の人骨と遺物を流し落としながら鎮座する人型の機体であった。


 「痛たたぁー…アレはニャー達が運用しているのとは少し違うみたいにゃね…」


 私の左手の中で伸びていたコンフェが私の頭に登り、体毛を少し逆立てて正体不明の機体を注視する。


 重厚かつ先鋭的な所を見るに機動戦特化型重量二脚と言った感じだろう。


 「恐らく最前線に出張って攻撃を仕掛ける機体なのだろうな、その証拠に脚部はコンフェが搭乗するドラジェの脚部に近いタイプの疑似逆関節と言われる部品を使用している。 あれは重量のある機体に回避時の瞬発力を高める為に採用されるものだ」


 「なる程…でもにゃんでこんな場所で水没したんだろ?」


 「どうやらかつて此処には研究所があったみたいだぞ。 証拠にこんなデータを拾ってしまった」


 私は抽出したデータを立体映像にし、コンフェにも見えるように可視化すると暫くの間データを読み込んだコンフェは皺を寄せた眉間を揉みながら険しい顔を見せる。


 「ニャんでこの星の過去を解き明かそうとすると謎が増えるんだにゃ…」


 「…でも謎は少しずつ解き明かしながら増えていくのを楽しむ物なんじゃないか?」


 探究に終わりが無いのは楽しいことでもあるだろう、自分だけの解釈は崩れることの無い宝物でもあるし…。


 「人類の存亡が掛かってるのに流暢に謎解きしてる場合じゃないにゃ」


 「たしかにそれもそうか…」


 まぁ確かにその通りだな。 この星の住民からしたら過去の謎はかつての教訓でもあるからのんびりしてられないか。


 「そんでどうするよ、あれは?」


 「取り敢えず基地に運ぶ事にするにゃ。 使える物は使わないと」


 「…そう言えばなぜこのタイミングで浮上したんだろうか?」


 「さあ? 魔法で遺物を水中から運び始めたのが要因で浮力が変化したのかも知れにゃいね」


 う〜む…本当に私と同じ背丈でしかも重量二脚程の機体が浮上するかなぁ?


 私はそんなに頭は良くないから分からんが不自然な感じがしてならない。


 ・・・なんて考えていると私から降りたコンフェが辺りを見渡しながら鼻を鳴らしてしている。


 「どうしたコンフェ?」


 「ん~~何か凄い良い匂いがするニャ」


 「良い匂い…あ、そうだパン焼いてたのをすっかり忘れていた! 」


 騒動の中でパンを焼いていたのをすっかり忘れていた、真っ黒焦げになる前に急がないとセレンディとジャイトに怒られてしまう。


 「コンフェ! 仕事に区切りが出来たらパンを作ったから食べに来てくれ! 」


 「了解ニャ! 職員達と一緒に食べに行くニャ! 」

  

 急ぎ足で焼窯に向かいながら職員に指示を出すコンフェに声を掛けながら休憩所に向かった。




 ◇◆◇◆


 「セレンディ〜ジャイト〜…パンが焼けたみたいだぞ」


 「「パンパンパン!」」


 休憩所に向かって声を掛けた瞬間にパンを呪文の様に唱えながら焼窯に向かって脱兎の如く飛び出して行く。



 こいつらさては寝て無かったな…。

 

 「急いで取り出そうとすると火傷するからちゃんとミトンを身に着けるんだぞ! 」


 なんて足の速さだ。 私より先に焼窯に辿り着くとはな、正直子供の脚力を舐めていた。


 …腹が減っていた様子の腹ペコ二人組は私が到着した時には既に焼窯の近くに置いていたエプロンとミトンを装備して窯の中を覗き込んでいた。


 「はあ…はあ…ふ、2人とも早いな」


 「ヘラルド早くパン取ろうっ! 」


 「上手く焼けたか…楽しみ」


 「あぁ取り出すとしよう。 よっこらしょ…どれどれ」


 膝を付いて底の火を消し、パン焼く為に敷いていたトレーをセレンディ達と一緒に引っ張り出すと程良く焼けた沢山のパンが美味しそうな形に膨らんでいた。


「「「上手く焼けてる!」」


  「よ、良かった! ちゃんと焼けてるな!」


 形は少々不揃いだが匂いやパンの内部の温度を熱源センサーで見るに大成功と言っても差し支えないだろう。



 ・・・意外と上手くいったので正直飛び跳ねて喜びたいが子供の前なのでぐっと堪えるとしよう。


 「良し! 2人とも給仕で割り当てられて来ている職員を呼んで来てくれ」


 「分かった! ヘラルド様はどうすんの!」


 「まだ仕事〜?」


 パンを一つ手にして地下湖に向かおうとする私に2人が不思議そうに聞いてくる。


 「そうだ。 …とっても大事な事なんだ」


 「じゃあ先行ってる〜」


 「ヘラルド様早く来てね…」


 職員を呼びに行った2人の小さな背を見送り私は再び歩を地底湖に進める。


 2人には悪いがパンを最初に食べる人は決まっているのだ。


 


 「此処らへんが丁度良い…か」


 彼女からパンが良く見える場所を探す事数分、地底湖の水面を綺麗に照らす天井からの光が降りてくる場所を見つけた。


 角度良し…。


 「少々不揃いだが…味は保証する」


 私は独り言葉を零しながら地面に散らばっていた金属片と木片を墓標代わりに地面に突き刺し、木片を皿代わりにして焼きたてのパンを握り潰さないように気を付けながら置いてから墓標に手を合わせる。


 「……どうかその眠りを妨げられない事を願います。 そして来世では立派なパン職人になれる様に祈りしております」 



 正直この弔いが死神部隊としての行いを正当化する様なパフォーマンスだと捉えられても私は反論出来ないだろう。


 しかし…あんな光景を、彼女が呪縛者と成ってしまったきっかけを見せられてしまった以上は弔いをどうしてもしたかった。


 死者であり人類の脅威と成りかけた彼女への私からの独り善がりの祈りである。


 aaa…祈りとは死者の為に…それ以上に残された者の為にあるのである。


 「・・・そろそろあちらに戻るとするよ。 …じゃあな」


 作業が一段落したようで職員達の休息を満喫する賑やかな声が聞こえてくる。

 

 静かな地底湖の水面は光に照らされており、もう誰も暗がりを見ることは無く…上を見上げて歩けるだろう。


 


 ◆◇◆◇


 皆の居る所に戻ってみるとまるで宴会会場の様な騒ぎようであった。


 教官はエールを片手に腕相撲で職員を地面に転がしており、セレンディとジャイトは食べかけのパンとウインナー手にしたまま眠りこけている有り様である。 


 その他職員達も地底湖から輸送した日記の登場人物が乗っていただろう機体の作業が終わりの一時の食事を楽しんでいる様だ。


 献立は見た所私達が焼いたパンを中心にスープやウインナー、パンに塗るバターやジャムと飲み物に果実を絞って作られたであろう飲み物やエールといった料理が並んでいる。


 どうやら私達が焼いたパンは普段は食べられない柔らかいパンで普段は堅いパンが普通だと聞いて驚いた。


 まぁ緑花の職員の人数を考えるとバターや価格の高い砂糖を毎日使えないのであろう。


 そう考えると食堂の人達には何だか悪い事したな…パン種や砂糖なんか高級品だったのかも知れないし。



 少しネガティブに成りかけているとテーブルで端で飲み物を注いで貰いながら使い古されているであろう色褪せた革製のメモ帳に真剣な眼差しを向けるコンフェの姿があった。


 「コンフェ。 仕事が一段落したってのにまだ仕事してるのか?」


 「…ん? あぁ…古竜と竜機兵時代の石版の一部が見つかったから収集した情報と照らし合わせてるんにゃよ」


 そう言いながら近くに置いてある石版を手に取ってみると長い年代水没して風化して掠れてはいるが僅かに文字らしき文体が僅かに視認出来る。


 《スキャン完了。 集積された言語との相互性は確認出来ません》 


 文字は読み取れたが私が知っている宇宙言語とは似ても似つかない言語であった。


 確か寿命を持たない巨人の戦士である竜機兵と古竜と呼ばれた竜の終わらぬ戦いの歴史の資料が石版として残っていると言う事は他にもその時代を生きていた種族でもいたのだろうな。


 「う〜む…全く分からんな。 コンフェはこの訳分からん古代文字が読めるのか?」


 「呪縛者達が活発になる前は今まで遺跡や墳墓、ダンジョンを探索して文字の解読をしてたんニャけど解ったのは小人と呼ばれる種族が石碑や石版に竜機兵時代を終わらせた寿命という名の神秘の恐ろしさを書き記したって所までにゃね…」


 そう言いながら肩を竦めたコンフェが見せてくれたのは僅かに解読できた文字の翻訳だった。


 「何々? …我ら小人の王達、眠れる幻想の都を経て…に、辿り着き…姫の眠りの果て…崩れ行く砂漠に見た…全て…貪る、暗き魂の呪い。 ・・・ん~~頭がパンクしそうになるな」


 頭痛が痛い見たいな文章だ。 魂の呪いと言うのは恐らく小人の王様とやらが永遠を生きれた筈の竜機兵と古竜に寿命と言う死を与えたもの? 或いは概念そのものなのだろうか。


 貪ると書かれた意味は分からないが、何方にせよ碌でも無い物なのは私でも分かる。


 「貪る…。 呪縛者やデーモンの事か?」


 「呪縛者やデーモンはロンドールの時代だから多分違うかもニャ。 今まで見つけた物はどれも似た供述だから別の事が書かれた物を見つけないとその正体については何とも言えニャいネ…」


 暫くの間あーでも無いこうでも無いと考察しているとレーダーの端に此方に接近して来ている機影を捉える。



 段々と機影は増え中々の速度で明らかに編隊を伴う機影群。


 地底湖から引き揚げた機体の輸送隊かと思ったが方角は貿易中継点の向こう側、海の方角なので違う可能性が高い…。



 「済まないコンフェ。 戦闘準備をしたほうが良いかもしれん何か来るぞ」


 「何が来るニャ?」


 「アナトリア通信聞こえるか?」


 《…急にどうしたの? 機体の回収ならまだよ?》


 アナトリアに通信を繋げて見た感じあっちには感知出来ていないみたいだな…魔法一辺倒じゃ駄目だな。

 


 広域レーダー装置の発掘導入をスネイルの奴に進言するとしよう…取り敢えず所属不明の機影の正体を把握しないといけない。


 「私のシステムは海の方角からの機影群を捉えたが魔法で何が来ているか分かるか?」


 《港町の方角からの無人機の運行計画なんて聞いてないわね…魔法で確認するかちょっと待ってて…》


 《システムより報告。 信号パターンから軍用機の信号を確認。 此方の警告信号を拒絶…》

 


 何だか不穏になってきたな…私が通信の雰囲気から察したのかコンフェが非戦闘員の職員を魔法で基地に帰投させて教官に耳打ちした後にそれぞれの機体に再搭乗し、来るであろう通信に耳を澄ませている。


 《あ、あー聞こえる? 死神部隊に悪い知らせと良い知らせがあるのだけどどっちから聞きたい?》


 「良い知らせから聞きたいにゃ…」


 「儂の強化トレーニングより良い知らせなんだろうな?」


 「aaa…何だか胃が痛い」


 《じゃあ良い知らせから伝えるわ…これから死なずに帰投出来たらスネイル社長から追加の臨時報酬が入るわ》


 「お金は有り余ってるニャよね…」  


 「臨時報酬か! 良い酒と摘みが買えそうだな!」


 「また白銀貨か…金銭感覚が麻痺しそうだ」


 「そんで悪い知らせはどんな悪い知らせニャ?」


 絶対とんでもない事なんだろうなぁ…。


 《えぇ…悪い知らせが…その…》


 「さっさと本題に入れアナトリア! 作戦説明は迅速丁寧が基本だ! さては緊急マニュアルをちゃんと読んでないな!」


 《す、すいません教官! じゃあ本題に入るわ。 現在此方に向けて所属不明の航空機? が爆発物を地上に落としながら飛んで来ているので死神部隊にはこれを防空部隊の到着までの時間稼ぎの為の要員として迎撃して貰います》


 ・・・うん知ってた。


 「先ずは地上に戻らんとな…お前達! 帰投する儂達の機体回収準備をしておくんだぞ!!」


 整備兵等の職員達が機体から離れブースターの排煙が土埃を再び洞窟内に巻き上げ地上からの光を遮る。


 「先導は任せるにゃよヘラルド?」


 「気分は乗らないが任せろ」


 一瞬ブースターに出力を溜めてから一気に出力を解き放してドラジェとヴェニデの前に躍り出て地下から地上へと飛び出し、驚き逃げ惑う野鳥を他所に出力を上げながら高度を上げていく。



 呪縛者が討伐されて祝杯ムードになっている街を飛び越して港町方向に巡航速度を上げながらドラジェとヴェニデと共に高度数百メートルを越えた所で遠くのから黒煙と火の手が上がっているのが視認出来た。


 「かなり酷いな…」


 「…復旧工事の支援金は緑花から出して上げた方が良さそうにゃね」

  

 「救助を優先したいが…先にあの馬鹿でかい羽ばたく船共を落とさんとな」


 その航空機…若しくは船団は常識では考えられない造形をしていた。 八枚の鋼鉄の羽根を動かして体の至る所から砲台を生やしつつ底部には剥き出しの爆弾槽を抱えていた。


 防壁に囲まれ、外敵を迎え撃つ筈の砲台はロンドールの時代の遺物の前では何処までも無力であり炎上しながら黒煙に巻かれた街並みを奴等は赤く火に照らされながら悠々と爆弾を降らせながら羽ばたいていた。


 《あの綺麗な街並みが…こんな…ッッ》


 これではまるで戦争だ。 …いや、正確には地獄の体現と言った所だろう。


 一刻も早く殲滅しなければ奴等は王都も火の海に変えてしまう可能性が高い。



 「行くぞドラジェ、ヴェニデ! 更に高度を上げ主翼への急降下攻撃を行う!」


 恐らく八枚の翼の内の一番大きい2枚が推進器を兼ねている可能性が高い…左右の何方かの根元の一部を破壊すれば主翼は自壊し飛行軍艦はバランスを崩して落ちる筈…4メートル弱の身体から放つ火力では狙うならそこしか無い。


 《メインシステム戦闘モード起動》


 後方の2人が追撃し易い様に私を先頭に火力が高い順に一列に陣形を組み直して高度を上げ、炎の光と立ち昇る黒煙が視界を悪化させる。


 「アナトリア! 敵の主翼にマーカーで可視化するニャ!」


 「もう一つ忘れているぞコンフェドール! アナトリア! 黒煙の風向きの計算もするんだ!」


 「流石教官。 もう空中戦の大事な要素を把握してるのか…」

 

 《飛行軍艦の主翼にマーカー付与して可視化したわ。 要望に合わせてに海から来る不規則な風向きの予測計算を表示しました…皆さんどうかご無事に》


 「伊達に何十年も教官として指導しておらん! 生き残れるかは運次第だ!」


 「それもそうだなッ!」



 高度は千メートル近くまで上がると奴等の背中がよく見える…全部で18機、手本の様なコンバットボックスの防御陣形で飛行しており普通の航空機なら寄せ付けないだろう。



 だが相手が悪かったな…私達は死神だ。 堕ちて貰おうか。


 「降下開始。 …慌てず冷静に…」


 脇を締めエンフォーサーが降下速度でブレないように抑えエネルギーを充填する。


 《執行モードを中距離から遠距離へ変更します。 EN弾チャージ…》



 唸りながら凄まじい速度で後方を抜けながら飛んでいく火の粉混じりの風を感じながら先頭の飛行軍艦の主翼に照準を合わせる。


 《チャージ完了。 目標の砲塔の回転を確認…対空砲火来ます》


 やっと此方に気付いて対空砲火を始めるが降下速度が近接信管が間に合わない速度に達している私達には爆発の衝撃波が装甲を撫で、砲弾の金切り声が耳元を通り過ぎるだけに留まる。



 「「「・・・・」」」


 そんな中でも私達の息は詰まる事は無く、覚悟を決めた者の静かな呼吸音が聞こえるだけ。



 「射撃用意……撃てッッ!」

 


 もはや肉眼で砲塔が確認出来る程に近付いたタイミングで引き金を引くと限界まで圧縮された緋色のEN弾が尾を引き、死神部隊の各武装の銃弾やグレネードキャノン、パルスキャノンが羽ばたく飛行軍艦の主翼の根元に吸い込まれる様に着弾して大きな爆発が起きる。


 爆発と共に吹き飛んで来た破片を体を捻り避けながら主翼と副翼の間を抜け、各飛行軍艦の対空砲火を爆弾槽の近くを通り抜けながら回避しながら振り返ると根元を大きく損傷した先頭の飛行軍艦は燃料系統に誘爆したのか数度の爆発と共に主翼がもげ、編隊を組んでいた近くの飛行軍艦を巻き込んで地上の黒煙の中に消えていった。


 「ニャゃぁぁ!! 堕ちたニャゃぁぁ!!」


 「良い指示だったぞヘラルド!」


 「よッシャぁぁ! ナンとかナッタナ!?」


 未だ飛行を続ける飛行軍艦達の対空砲火を黒煙と眩しい火災の光を利用しながら避けて作戦が成功した喜びを2人と共に噛み締める。


 あんな異形のデカブツを墜落させれるとは正直思っていなかった。


 まぁあんな巨体を羽ばたいて進んでいるんだから幾ら外宇宙の技術でも欠点はあるってこった。

 


 でも此処からが踏ん張り処だ。


 「弱点を発見した今、他の編隊にも追撃を掛けるぞ!」


 「援軍の到着までの頑張り処ニャ」


 「今一度気を引き締めんと愉快な遠足は終われんな…」


 対空砲火を避ける為に立ち昇る黒煙の側をなぞる飛び方から反転し、飛行軍艦の爆弾槽を撃ち抜きつつ側面の砲塔を潰していく。


 幸いミサイルの類は無いようで3機掛かりで側面を舐める様に張り付きながら丁寧に砲塔を潰し、最後に主翼を破壊してから次の飛行軍艦も同じ様に破壊していく。


 どんなコンピューターを積んでるか知らんが自律制御のお陰で同士討ち覚悟の砲火が無いので面白い位に巨体が地面へと堕ちていく。



 「良しッこれで何機目だコンフェ!?」


 「多分半数近くは落とせた筈にゃ! 意外と楽勝にゃね」


 「案外空戦も何とかなっているな! だが油断禁物だぞお前達!」


 

 圧巻だった飛行軍艦は今や残すは8機程度にまで減り、いよいよ終わりが見えてきた。


 …然し此処で問題が発生する。


 「流石に弾薬が底を突くが2人はどうだ?」


 「儂の機体も次の砲撃で弾薬が尽きる。 一度補給しに帰投するのも手だな…」


 「私ももう残弾が無いにゃ…流石に今帰投すると被害が拡大しちゃうニャけど弾薬が無いにゃね…」


 「どうしたものか…」



 私のエンフォーサー以外は弾薬が必要とする以上継戦能力にも限界がありドラジェとヴェニデもまた同じ問題に直面していた。


  手を拱いて残る8機程度の編隊を街の火災を隠れ蓑に様子を伺っていると奴等の飛行ルートの先に大きなエネルギー反応が現れる。


 《大規模な魔力反応を検知しました。 注意してください》


 「2人共、奴等の飛行ルートの先に魔力反応だ。 …恐らく」


 「やっと来たにゃね」

 


 《死神部隊に通告します。 防空部隊の転移が完了しましたので巻き込まれる前に領域を離脱して下さい…作戦は完了です…お疲れ様でした》


 「空への愉快な遠足は流石に老体に応えたぞ」


 「ニ゛ャャャャ…づ、疲れた…」


 「初めての空戦なのに大きな怪我が無かっただけ万々歳だな。 …状況終了。 オペレーター…これより死神部隊は離脱する」


 《了解。 地上で回収部隊が来るまで待機して下さい…本当にお疲れ様でした》

 


 飛行軍艦の追跡から身を翻して炎上する港町の近くの丘へ土草を抉りながら着陸し、カメラの倍率を上げると何時ぞやに鹵獲した四脚の自律兵器群が砲身とミサイルポッドの照準を空飛ぶ軍艦に合わせて一斉に攻撃を開始する。


 負けじと飛行軍艦達も自律兵器群に向けて砲火を始めるが圧倒的な砲弾とミサイルの数に圧倒されて私達の戦い方よりも早く爆発四散しながら一機、また一機と墜落していく。


 

 「これから復旧工事が山積みだな」


 「それよりも先に被害状況の把握と医療支援の準備をしなくちゃいけニャイからヘラルドにも手伝って貰うからね」


 「瓦礫の撤去や建物の再建なら儂に任せろ、旧友にそっちの伝がある」

 


 ミサイルと砲弾の雨あられで堕ちる軍艦達を他所に疲労から来る脱力感に耐えながらこれから始まるであろう復旧準備の話しが回収部隊が到着するまで煮詰まっていくのであった。



 【冷霊の絵画世界】 灰の娘カランが描き産み出した偽りの世界 小高い丘に建てられた教会を中心に街の広がる世界 静かに雪が降り続いているが決して積もることは無い この絵画に触れて訪れる者は少なく無い 悲しみは何時も傍にいる もうこれ以上悲しみが訪れる世界に等に未練など無い筈なのだから。


 ゆっくりと腐りながら眠る 望まれない人が最後に辿り着く場所なのだから


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