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暴走兵器強襲任務


 【黄花の結晶指輪】 鳥人の族長トキツが作り ヘラルドに贈ったとされる指輪。 黄色い花が埋め込まれた結晶はどこかミモザの花に似ている。 共に戦場を羽ばたく内にトキツは越えられぬ感情を膨らませたと言う しかし決してそれを告白しなかった 一度口に出したら耐えられぬ苦しみがあると知っていたから


 【シュレディンガルの変幻指輪】 あらゆる魔法に変化して生者の魂を奪っていた呪縛者が持っていた指輪。 着用者に全ての魔法への耐性を大きく高める 何者でもあって何者でも無かった彼はヘラルド達に浄化されて 初めて己を知ったと言う

 

 

 《ハービンジャー搭乗員 ヘラルドへミッションを伝達します》


 《作戦領域はリッチランドから東へ進んだ場所にある【マインルール発掘場】 発掘された後に無差別に破壊行為を始めた暴走兵器群の殲滅です。 該当兵器群は実弾系の中距離兵装が主ですが中には長距離兵装の砲戦型が確認されていますので長距離からの砲撃やミサイルによる対空砲火に注意してください》


 《説明は以上です。 それでは魔導圧縮式射出台起動します》




 ◇◆◇◆


 《メインシステム戦闘モード起動》


 先の呪縛者討伐から数日。 早速新たな任務に私は2度目となる魔導圧縮式射出台…略してマジックカタパルトからの射出に身を任せていた。 


 蒸気式や電磁式とは違う射出感覚に未だに違和感を感じる……弾き出される感じや押し出される感覚では無く静かに身体が勝手に動き出す何とも言えない不思議な感覚である。 


 今回の任務は何でも発掘場から発掘された兵器群が暴走しているのだとか。


「アナトリア! 兵器群の動きはどうなっているか分かったりするか!?」


 《少し待って! ……諜報部隊から経由したウェザービューイングによると現在は広大な採掘場の敷地からは動きはないわ。 恐らく兵器群は自分達の目覚めた場所を防衛圏だと誤認しているみたいね》



「おネンネから目覚めたら見知らぬ場所だったんだから誤認するのも無理はないか、赤子みたいに泣き出していないと良いがな」


 《兵器は泣かないでしょ。 弾は吐き出すけどね》


 発掘された兵器がちゃんと作動するかは定かでは無いが油断すると痛い目に遭うかも知れないが奴等の防空圏に入るまでは何とも言えないな………。


 今回はコンフェは体力調整の為に出撃しない為に任務で初めてのオペレーターとのマンツーマンだ。


「アナトリア。 コンフェの奴は大丈夫なのか? 身体が包帯巻になっていたが」


 《えぇ、心配は要らないわ。 整備員達に羽交い絞めにされてベッドに拘束されながら今はご飯をかっ喰らっているしね》


「アハハハ…、アイツは本当に頑固だな」


 《全くよ……代表として少しは腰を落ち着けて欲しいけど言って聞くような御方ではないわ、だからこそ私達は全力でバックアップするだけよ》


 私がメンテナンスから目覚めてから街中を観光がてら彷徨っていたら死神部隊の支援部隊の隊員が満身創痍の状態でコンフェが機体の整備をしていて休んでくれないと泣き付いて来たので整備員達と一緒に医療用ベッドにぐるぐる巻にしたんだったわ。


「今更だが単独の任務は初めてだなアナトリア」


 《そうね。 ドラジェの代わりが未だいない今の死神部隊はどうしても貴方の単独になってしまうわね。 近日中に新機体とパイロットの選別が始まるからそれまでの辛抱を強いる事になっちゃうわね》


「近日中に新機体が来るのが分かっているだけ全然有り難いぞ。 まぁ我儘を言うとするなら中距離か遠距離戦闘を主軸にする者が良いな、私とコンフェは中近距離戦が主になっているからな」


 人型兵器戦闘の戦闘において中距離遠距離からの支援射撃や砲撃があるだけでその部隊の生存率は違うからなぁ…。


 多数の中近距離戦型で構成された部隊より中遠距離戦型が配備されている小規模部隊の方が戦争の終盤でもボロボロではあったがしっかり生き残っていたからな。


 《兵装に関してはコンフェ様や会議の議題でも上がっていたから遠中距離型が配備されると思うけど…問題はパイロットの選定の方なのよねぇ……》


「沢山社員がいるのにか?」


 コンフェが創設した緑花複合商業社は複数の部門?で別れているらしく主要なのが物流部門に飲食部門や医療部門と販売部門が主になっており、国王の認可によって傭兵斡旋部門と対深淵軍事組織が正式に追加されて社員数は地球の大企業が腰を抜かす規模である。


 その証拠にサルヴァ王国の王都や領地の他に多種族国家サルヴァ王国を含む4大国。 魔法に長けた者や魔法学校が存在する森人の国【プラジュナー】 広大な砂漠で遺跡群が点在する国【ナシュタム】 絶え間なく風が吹く山々が点在する寒冷地と鉱物資源が豊富な火山を領土に持つ鍛造や鍛冶に長けた国【アグニスカ】


 その他小国の全てにコンフェの息が掛かった商業施設が点在している。


 《人型兵器を操るには神経接続に拒絶反応が少ない肉体を持っていることや消耗を補える体力と胃袋。 何より高速戦闘に関する潜在的才能が無いと搭乗出来ないの》


「なるほどなぁ……」


 自分自身が人型兵器になっていて忘れていたがそりゃぁ対G耐性や健康良好な者じゃなきゃ身体が壊れてしまうな。 ならばパイロットの選定に苦労する訳も理解出来るし死と隣り合わせなのだから志願する者も少ないだろう。


 《システムより警告。 予想敵防空領域まで残り120秒弱》


「いよいよだな…アナトリア」


 《貴方が今日の希望なのだから死なないでよ……》


「修羅場は何度も経験して来た、心配無用。 何よりコンフェが悲しませる訳には行けないしな」


 対空砲火を浴びながらの強襲任務など久しく一抹の不安があるが成るように成るだろう。


「あ、そうそう…視界から得られる情報にも限界があるだろう? コレを受け取ってくれ」


 《何を受け取っ……ッッッ!? あ、頭の中に何か》


 《システムより機体上級司令権限を移行。 ようこそオペレーターアナトリア…貴女を歓迎します》


 《こ…コレは一体……》


「どうだ? 恐らく君の視界には私のエネルギー供給量や火器管制システム、武器の残弾数や排熱限界値が見えているだろう…。 君含めてこの星の人間には魔力と呼ばれる物によって魔法…或いは魔術を行使しているみたいだがその秘密は血液にあると予想している」


 《私達の血に?》


 この星の人類は誠に不可思議なバランスを守っているのがシステム解析によって分かった。


 その正体はナノマシンの存在が大きく関わっていて、恐らくは太古の時代に星外からの技術の一つとして齎されたナノマシンの力によって魔法と呼ばれている力を行使している様だ。


 例えば治療や身体能力を向上させる魔法は医療用ナノマシンの応用、攻撃魔法や防御魔法は建築や解体用ナノマシン、契約魔法や付与魔法等は事務用ナノマシンや料理用ナノマシンの応用と言った感じだろうか。


 使える魔法が人それぞれ違うのは生き延びた星外の者達がバラバラに散りながらもその血を現代まで残していった結果、遺伝子に身体の基本機能として組み込まれたのだろうとアナトリアにも出来るだけ分かる用語で説明すると戸惑いながらも一定の理解はしてくれた。


 《色々と疑問が湧いてくるけど……今は任務に集中しましょう》



「あぁ…そうだ…ッッ! 来たかっ!」


 返事を返そうと口を開こうとした刹那、ミサイルロック警報が鳴り響く。


 《ヘラルド! 死なないでよ!》


「死ぬかよっ! 私は不死身だぞ!!」


 雲の隙間から見える発掘場らしい場所から大量に空に昇っていく赤い炎の光を見て私はジェネレーター出力を大きく引き上げながら速度を上げる準備を行う。 


 今の私の兵装はチャフやフレア等のミサイルに対応する物は積んでいないので速度に加えて如何に敵の懐に飛び込めるかが命運を分けるだろう。


 ・・・・強襲機としての役割を再びこなす事に不思議な事に嫌悪感は無く、ジェネレーターの鼓動が大きくなる程に神経が研ぎ澄まされて心地良い。


 《短距離地対空ミサイル多数接近! 上空に留まらず急降下して死角に逃げてっ!》


「了解。 ハービンジャー…強襲任務を開始する」


 爆発的な推進力を翼に音を置き去りにして雲の縫い目を抜け、急降下して行く。 正面から此方を追尾する多数の地対空ミサイルをスラスターによる瞬間回避機動で回避しながら地表に飛び込む様に向かっていく。


 風を切り裂く音が大きく、ミサイルロック警報のビープ音が和らいぐ。 だがこのままではいつか被弾してしまう……。


 《後ろ! 避けてッッ》


「くっッッ!」


 本当にジリ貧だぞ、どうする私!?


 ひたすら上下左右に回避しているが未だに追尾するミサイルが着実に接近しつつある。 長く感じた時間が過ぎて地表の発掘場も視認できる距離まで降りてこられた。


 だだっ広い盆地に広がる鉄筋らしき建物の基礎部分が乱立しており、4脚の防衛兵器達が機関砲で私に狙いを定めている。


 《対空射撃来ますっ!》


「面倒な……久々にあの技やるか」


 後ろから追尾するミサイルとの距離を注意しながら出力を溜め込む為に速度を落とす。


 《な、何で速度を落とすのッ!?》


「まぁ慌てるなアナトリア。 見ていろ、人型兵器の強襲機としての役目を」



 防衛兵器が対空砲火を始めるまで出力を解放するわけには行かない。


 後ろから死が迫る……まだ、まだだ。


 ・・・視界が緊張から暗く赤く染まって行く、死の眼が私を追う。


 数秒先の未来は思慮出来ない、たがしかし事は成る。


「来たッッッッ!!」


 夥しい銃弾と砲弾の掃射が始まった瞬間に私は出力の全てを解放した。



 身体が引き伸ばされる感覚を身に纏いながら瞬間的な連続の回避で一番近くの防衛兵器に迫り、兵装を展開せずにそのままの速度で蹴りを繰り出し遥か彼方に鉄屑になった物を吹き飛ばし振り向く。


「こいつを喰らいなっッッ」


 展開したエンフォーサーと実弾オービットで全てを撃ち落として再び全力でブースターとスラスターの負荷を無視して一瞬で加速していきその他の防衛兵器の攻撃を全て回避しながら建物の残骸の合間を音よりも速く抜けながら無慈悲に動力部を撃ち抜いていく。


 頭が真っ白になる程の意識の片隅で同僚が緋色の光がまるで翼に見えるから渾名が地獄の天使なんて呼ばれていた事を思い出したが……コレは本当に私の記憶だろうか。


 一瞬集中が途切れたタイミングで高射砲の砲火が直撃して地べたに叩き付けられて意識が飛びそうになる。


「まだ、まだ終わっちゃいない!」


 《警告。 ジェネレーター出力のオーバロードを確認しました直ちに出力の引き上げを中止してください》


 システムの警告を聞き流しながら排熱限界を迎えたエンフォーサーを背負い散弾銃のシグレを構え、少し先に待ち構える砲戦型と思わしき50メートル程はあるであろう防衛兵器を睨みつける。


 第2射目の高射砲の攻撃を避けて緋色の火の粉を散らしながら数歩のステップから音速に到達し、ミサイルや近接信管によって爆発する砲弾を一瞬に2回回避する技術を駆使して間合いを詰める。


 巨大な4脚の脚を足蹴りにして跳び上がり、シグレの攻撃や実弾オービットの掃射をを浴びせて高射砲や対空砲を破壊しながらミサイルを避けながら防衛兵器を翻弄する。



 対抗手段を失い木偶の坊になった防衛兵器の関接部や動力部を緋色のレーザーダガーであるマデューラで素早く切断して完全に無力化する。


 《新たな敵影を確認! コレは……!!》


「何だ! 防衛兵器の増援か!?」


 一通り片付けたと思った矢先にアナトリアから通信が入る。


 シグレのチューブマガジンに素早く装填しながら周囲を警戒する。



 《下から来るッッ! 避けて!!》


「ぐアッァッ!」


 その場から咄嗟に飛び立とうとした瞬間真下から防衛兵器の残骸を飲み込む程のエネルギーの奔流が空に昇る。


 私はシールドを抉ったエネルギーの奔流に吹き飛ばされたが何とか体勢を持ち直しているとその奔流から巨大な影が這い出てくる。


 《あ、アレはデーモン!?  何故此処にッッ》


 恐らく15メートルはあるであろう巨体は唇の無い不気味な平べったい頭部に石の質感のような身体。


 そして手には骨と臓物で作られているであろう大杖が握られている。


「デーモン? 」


 《呪縛者が生の呪いの純粋な感染者だとするとデーモン共は生の呪いを撒き散らす感染宿主と言った所よ》


 呪縛者よりも質が悪いじゃないか……。 生かしてはおけないな此奴は。


 《既に貴方は満身創痍よ、一旦退避してコンフェドール様と共に再出撃を……》


「・・・駄目だ。 お前も近隣には村等があるのがわかっているだろ」


 《だけど貴方のシールドは大半が消失しているでしょうがっ! 元軍人なら多少の犠牲が出るのは分かっているでしょう!!》


 あぁ…確かに今の私はシールド大半が損失して身体機能もオーバーヒート寸前なのは分かっている。


 ・・・だから退避して立て直しを図るのも理解している。




 でもそれじゃ駄目なんだ。 私はもう後悔する生き方はしないと死んだ戦友達に誓ったんだ、逃げられないんだ。



 デーモンが杖を構えて幾多の魔法陣を展開していく。



「アタシ「俺はもう逃げないと死んだ奴に誓っただから逃げない」」


 《馬鹿じゃないの!? 絶対に死なないでよッッ!》


「緋色の翼の使者に情弱無し」


「イセイノセンシヨシヌガイイ……イマこそ混沌のジダイヲ・・・」


 魔法陣を展開して杖を構えながらデーモンが口を開く。


「喋り、そして言葉を理解するならば話が早い。 お前が求める呪いの世界など私が否定してやるよ……aaaこんなにも美しい星を汚させない」


「ナラバやってみるガイイ」


 デーモンが杖を振るうと魔法陣からレーザーの如き魔法が次々と私に向かって放たれる。


 私はそれを紙一重でブースターを使い避けて行く。 音が遠くなり最高に気分が悪い。


 だがそれとは裏腹に極太のレーザー攻撃を避ける度に装甲が焼けるが最高に高揚感を感じていた。


 無い筈の触感が地面の冷たさを感じて足裏を伝う。 掻く筈のない汗が攻撃を避ける度に視界を邪魔する。


 攻撃を避ける為に空を駆けると無い肝に浮遊感を感じてこそばゆい。


「何故だ!? ナゼアタラナイ!」


「アヒャヒャヒャァ! 何でだろうなぁ。 でも楽しいだろッッ!!」


 避けつつも冷却が完了したエンフォーサーを構えながら焦るデーモンにそう応える。


 あんな答え方が出来る自分に驚きながら引き金を引き、バリスティックサポートの要領で跳ね返りを抑えながら身石の様な体を砕き、実弾オービットで牽制しながらデーモンに近付いていく。


「コシャクナァッッ!!」


「左腕がガラ空きだッッ!」


 より大きな攻撃をする為に一瞬止まった攻撃の隙間を見逃さずに左腕を撃ち抜いて吹き飛ばすが私も敵に踏み込み過ぎて先程とは違う攻撃が直撃し大きく吹き飛ばされて距離が開いてしまった。


「クソッ強いな……アンタ」


「人の身を捨てたオマエトハチガウ。 ハハナルノロイカラウマレタカラダ……マケルハズガ無い」


 失った左腕を気にする素振りをせずに魔法陣を再び展開し始める。


 このままだと私が負ける確信がある……あ、コレは使えるかもしれない。


 ある物を見つけた私は遮蔽物に回り込み発掘されかけていたであろう防衛兵器の制御端末のハッキングを試みる。


「ドウした? コウサンスルカ。 オマエも呪縛サレルガイイ」


「降参? するかよッ! オマエを殺す活路を見出したんだよ!!」


 発掘場が小刻みに揺れ出して地面が震える。


「こ、コレハイッタイ!?」


「オマエは所詮過去の遺物と一緒なんだよ。 ならオマエを殺すのは私じゃ無い、オマエと同じく眠っていた奴等の役割だ!」


 震える地面から次々と眠っていた4脚の防衛兵器が這い出てくる。 


「目障リナぁっッッ!!」


 デーモンは大杖を振るい、這い出てくる防衛兵器を破壊するが数が多く捌きれずにミサイルや高射砲等に翻弄されて行く。


「クソクソクソクソッッッ!! しまった!? アイツはドコニイッタ!?」


「ここだよ間抜けが」


 防衛兵器に翻弄されていたデーモンの懐に肉薄してマデューラで私は右腕を斬り飛ばした。


「ワタシノケイカクガッッ! 混沌のセカイのジツゲンガァァァァァァッッ!!!!」


 両腕を失って魔法が放てずに防衛兵器の攻撃によって身体を砕かれて最後には光を放ちながら灰に変わっていき風に消えていった。


「な、何とかなるものだな……」


 全身が悲鳴を上げ、節々が笑っているのを感じて思わず膝を着いてしまう。


 無い瞼が閉じていく……。 


「次の……戦いが……楽し…みだ」


 


 【古代兵装の片手剣】 サルヴァ王国の遺物復元技師ダンガルが古代の技術を復元応用して作り出した人の為の剣 青いエネルギーの刃は金属さえ容易に切り裂いた。 ダンガルは囁いた この星の技術では無い力は再び過ちを引き寄せて ロンドールの二の舞になると


 【ハルカンドラ社製近距離特化人型兵器専用拳銃 ケイナス】 発掘され復元された人型兵器専用拳銃。 ハルカンドラと言う企業の刻印が刻まれた実弾兵器 3点バースト式で徹甲弾を敵に叩き込める。 ハルカンドラ社はロンドールとの強い繋がりを持ち 人工竜機兵の製造を担っていた 


 

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