旅立ち
始めまして皆様、拙い文章で紡ぐ物語をどうかお許しください。
◆◇◆西暦3025年◆◇◆
地球人類が宇宙航行を確立させ、惑星のテラフォーミング技術や他宇宙文明人種との交流の活発化から早数百年。
そんな宇宙の彼方でも知能を持った生き物がする事は原始時代から何も変わっちゃいなかった。
汎用任務遂行用人型兵器【ハービンジャー】、戦死した兵士の人格や意識をメインコンピューターに移植し、統合した全長約4メートルの極限まで軽量化を施した人型兵器である。
豊富な兵装の互換性や人型である故の作戦遂行の柔軟性。
そして何より量産が安易だった事から宇宙の様々場所に派遣され、その命を散らしていった。
倫理観と人間性を宇宙の彼方に捨てて…………。
そもそも人の意識で動いている時点で此れは兵器ではなく人間であり兵士であるのだ。
それなのに通商連合からなる大企業や宇宙国際連盟は戦後から未だこの事実を隠蔽し続けている。
戦死した兵士(人型兵器)は無限とも言える宇宙の各地で彷徨い、未だに供養されず。
せめて棺桶に納めて供養してほしいと戦後僅かな生き残りである自身や軍人(人型兵器)からなる団体組織は訴えてはいるが成果は著しくない。
メディアや国際世論は唯のロボットの反抗だと言い……最後までまともに取り合わなかった。
しかも各国は非人道的な兵器を忌諱し、金を握らせて辺境の惑星を与えて人々の目から遠ざけようとしている。
そんなことをすれば当然反発は起きる。
宇宙国際連盟の母星にて僅かな生き残りからなる反動勢力は自身の命を対価に首都を焦土に変えて、最後に衛星砲に焼き払われた。
・・・・・共に生き残った戦友達は死んでしまった。
そんな事実を私は呆然とテレビ中継越しに叩きつけられた。
◆◇◆◇
【天の川銀河系第一国際宇宙空港ロビー】
戦後の燻りは灰に変わり、人々は戦争の傷跡の記憶を明日の糧として削りながら今日も人生を忙しなく歩み続けている。
血だらけの兵士や四肢が千切れた同胞が彼方此方に点在する事は無く、市民が忙しそうに往来している姿を見るとやはり安心できる私が居た。
戦後から数十年が経過し私の身体は銃痕を残しながらも長期メンテナンスが終わり、退役の手続きや兵舎の自室の整理が終わった。
気が付けばあっという間だった…………木星戦争や火星基地攻略戦、冥王星艦隊移乗戦闘。
それらから生き残る度にあの自室へ帰っていた。
それがもう早朝には跡形も無くなってしまい、何処か物悲しさを感じた。
だが今日から私は名も無き辺境の惑星を国からタダ同然で頂き、やっと静かな場所で骨を埋める事が出来るのである。
国の見栄えの為のお払い箱という点に目を瞑る必要があるが。
・・・・整備道具と必要なものをまとめたトランクを持ち、空港のロビーで政府の役人と人間の兵士を待つ。
この銀河から出るまでは私には自由な行動制限されている。
人間は怖いのだろうな………自らがぞんざいに扱った兵器にまた住処を焦土に変えられるのが・・・・最後の生き残りである私に復讐されるのが。
・・・・もう怒りも・・・涙も枯れ果てたと言うのに。
ロビーで待機する私の前に対装甲兵器を携えた兵士に護られながら役人がやって来て何かを読み上げているのが見て取れる。
・・・・だけど私にはその声は聞こえなかった。
聞きたくなかった、もう何も。
一通り役人は兵士の後ろに下がり、兵士は銃口を向けながら私の頭に布を被せる。
よっぽど天の川銀河系に帰って欲しく無いのだろう、丁寧に私のレーダー機能まで封じてくるのだからな。
暗い視界の中を兵士の声を頼りに一歩一歩踏み締める。
そうやって歩み続けると宇宙船のエンジン音と機械の騒がしい音をセンサーが拾う。
どうやらロビーから発着場に出てきたようだ。
いよいよ私は何処かも分からない銀河の彼方に送り出されるようだ。
宇宙船のハッチの開閉音が聞こえる。
・・・・今までの私の人生は後悔からまた後悔で終わるようだ。
もし次は・・・・新天地ではせめて………後悔の無いように生きたい。
・・・・さらばだ遥かなる故郷よ、もう戻ることは無い、戦友よ………勇ましき英雄よ………どうか私を許さないでほしい、この臆病者を………。
誤字脱字が有りましたら教えて頂けたら幸いです。
感想を待っています。