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噂話は噂話

 ドーンと音を立てて開く扉。授業道具を持って入ってくる上先生が見える。上先生が黒板の前に立つとチャイムが鳴る。

 日直が号令をかけ、数学の授業が始まる。上先生の声しか聞こえない一方的な授業の時間が少し経過した頃、僕はトイレに行きたくなった。 

「先生トイレ行ってきまーす」という言葉と同時に僕は後ろのドアの前に立つ。

「はぁ、そういうのは休憩中行けよこの野郎。てか、先生が了解を出す前にドアの前に立つんじゃねーよ」とキレ気味のトーンで僕に言いつつ、怒りを表すように右手の手のひらで黒板を叩く。

 黒板を叩いた後、教室は静まり返り、上先生を批判するような眼差しが先生に集中する。

 その静寂や眼差しを嫌う表情で、それを打ち破るように上先生が

「うっそ~ジョークよ。先生が今、手に持ってるのはチョークってね」と笑いながら明るいトーンで言う。

 誰も笑わずにまた静まり返る。

 「もう冗談ですよ。気にしないでね赤坂君、トイレ行っといれ」と先生が言ってきたので僕は、居心地悪い教室から離れてトイレに行く。

 僕は、上先生が嫌いだし、上先生もまた僕のことを嫌いだろう。上先生は、自分のお気に入りの生徒にはあからさまに贔屓する。僕が贔屓しないように直接言ったことで、喧嘩になった。それ以来、僕と上先生は犬猿の仲で、クラス全員が知っているところだろう。

 教室を出た後の教室の空気はどうなったか知らない。

 トイレをした後、トイレから見えるグラウンドでのサッカーを10分くらい見た後、教室に戻って、また上先生のつまらない授業を受ける。

 チャイムが鳴り、休み時間になると、友達の勝英が僕の席にやって来る。

 「トイレ何番目使った?」といきなり質問の意図が分からないことを聞いてくる。

 「手前と奥のどっちから順番を数えんだよ」と笑いながら聞く。

 「入ってすぐ左から数えて」

 「真ん中だね。三番目」と僕は答える。

 「真ん中なら聞く必要ないじゃん」と勝英も僕も少し笑う。

 それから続けて勝英が「お前呪われるじゃん。生きてね。俺はお前をなるべく助けるから」と涙目で訴えてくる。

 「え、なんかダメなの」と聞く。

 「お前知らないの?授業中にトイレに行って、三番目のトイレつまり、真ん中のトイレで用を足すと呪われるって話」となんで知らないのというような呆れ顔をしながら聞いてくる。

 「お前さ、小前田って知ってる?一組の」

 「知ってるけど、小前田がどうしたの?」

 「小前田が、授業中に真ん中のトイレを使った日の放課後、車に轢かれたらしいよ。」となぜか涙目で訴えてくる。

 「だから?何が呪われてるの。今日、小前田を学校で見たけど」と強い口調で聞く。

 「小前田の話によると、誰かに押されたらしくて、だけど回りの人の証言によると、誰もいなかったらしいのよ。轢かれた小前田の近くには」と目頭を押さえる。その押さえている手が震えている。

 それを見た僕はなんとも言えない気持ちになる。

 「オカルト好きな勝英のことだからそんな話を、学校の七不思議にしたがってるんじゃないの?本当は押されていなかったんじゃないの」と問いかける。

 「七不思議なんだよ。良く分かってるじゃない。小前田だけじゃないんだ。小前田の後にトイレに行った多々乃も、真ん中のトイレを使った日の放課後に階段から滑り落ちて骨折したんだ」と興奮した声で僕の両肩を掴み左右に揺らして落ち着きがない。

 七不思議という言葉には反応して、小前田が押されたかの質問には答えてくれないのねと心の中で思いながら、「そんなの偶然だよ。気にせんでいいから早く泣き止んで。興奮しないで良いから。うるさいから」と冷たくあしらう。

 それから無言の瞬間の後「また話そう。とりあえず、席もどるわ」と勝英が言うと同時に次の授業を知らせるチャイムが鳴る。

   

 

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