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第5話

「いっっった!?」

 瞳を移すと、可愛らしい女の子が。

「チーユ、いきなりなにするの!? しかもどうして僕の家に!?」

「ばかな、エルを迎えに来たの!」

「馬鹿って……確かに僕は馬鹿だけど……っで迎えに来たってのは?」

「貴方、3日もお店に顔を出さないで何してるのって話! お父さんとお母さんが心配してるの! あとなんだっけ? 貴方が憧れてた【孤独の至宝】が死んだでしょ……。その慰めも兼ねて、夕食を一緒に食べないか誘いに来たのよ」

 僕は、はっとする。そうか、こんな僕でも心配してくれる人がいるんだって、何度目か分からないけど、今回は嬉し涙が目尻に溜まった。僕が生きていた証が、ちゃんと残ってるんだ。

「なーに泣いてるのよ、気持ち悪い! さっさっと着替えなさい!」

「うん、ありがとう」

 チーユはそっぽを向き、僕はタンスにある服を取り、着替えていく。よくよく考えたら、パンツと下着だけだった僕の格好。急に恥ずかしくなり、頬を赤く染め上げてしまう。僕は左腕で、不器用ながらも着替え始め、右腕がやっぱり言うことを聞かない。

 本当に右腕はリーエさんなのか、という疑問が抜けきらないまま、チーユにまだぁ!? と叱咤されて、慌てて支度をして家を出た。

 ◇◇◇◇◇

「まだ見つからないのか」

「申し訳ございません、ただ手がかりが一切……」

「簡単な仕事だろ。何故、そんなことが出来ない?」

 ある区画の裏路地。下っ端のリーダー格の人物が、こうべを垂れてつくばっていた。人は何故か寄ってこず、この2人だけの空間。黒の”仮面”を被った、黒ずくめの長身の男が、嘆息を吐く。

「早くみつけろ。彼奴らに発見される前に。彼女の力は私たちがいただかなければならない」

「はいぃ!」

 男は裏路地から抜け出し、仮面の男は空を見上げる。なんとも言えない焦燥を感じとれる、雰囲気。男は仮面をかぶり直す。

「ミローク、出てこい」

「……なんでしょう」

 壁を通り抜け、これまた黒の仮面を被った男が出てくる。赤のスーツを着こなし、派手な印象を人に与える。

 そして、不気味な声が耳を貫く。ビブラートがきいた、不気味な声。ある人が聞けば、鳥肌が立ち、不安感に襲われるような声。

 赤のスーツの男は、黒ずくめの男に膝をつく。

「私が貴様を呼んだ理由は言わなくても分かるだろう? 貴様を呼ぶほど私は焦っている。いや、この都市全体が焦っているといってもいいだろう。今は貴様のような悪魔の手も借りたいほどだ。ただ彼女の力を見つけろ。報酬は何がいい?」

「ふふふふっ。これは高くつきますよ。冒険者組合も、あの至宝も、希望の世代も、闇ギルドも見つけられてないアレを探すとなると」

「私は後始末は得意でな。どんなことでも申し出ろ」

 赤のスーツの男の仮面の中から唾をジュるりと飲み込む、音が聞こえる。男は地面に指をとんとんとんと3回叩きつける。

「では、少年少女を10人ほど用意いただければ。もちろん死体ではなく、生身、生きているのが条件です。せっかく私の魂の浄化に出席させようとしているのに。死体なんて勿体ないですからね。あー若い人間と遊ぶのは久々だ。これはこれは食べ応いと、虐めがいがありそうではありませんか。楽しみですね、楽しみだ。そう思いませんか、ご主人?」

 独りよがりの独り言に黒ずくめの男はそうだなと軽くあしらう。

「仕事さえこなしてくれればなんでもいい。分かった用意しよう。それで期日は——」

「2日。2日あれば見つけれます。もちろん、誰よりも早く」

「ほう、貴様はこのダンジョン都市にいる誰よりも優れていると言ったようなものだぞ今の発言は? 信じても良いのか?」

「はい、無論です。私は悪魔ですから」

 黒ずくめの男は無意識で、額から冷や汗が垂れて、ゴホンを咳き込む。

「頼もしい言葉だが……嘘はつくなよ?」

「私くしめは、虚言は吐きませんよ」

「ならば、早く私の前に成果をあげろ。いいな?」

「承知致しました」

 くくくくっと薄気味悪い、笑い声を上げ、また壁の中へ消えていった。残った黒ずくめの男は、歩みだし、忽然と姿を消した。

大変お待たせしました。

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