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「陸地については話したな。では次にゆこう」
「うん」
「次は大森林についてだ」
あぁ、さっきどこ? って思ったやつ。
「今の広さはだいたい、これくらいだろう」
そう言って陸地だと言って描いた丸の内側にドーナツのようにもう1つ丸を描くコクヨウ。
最初の丸の直径を10とした時、8くらいの直径になる丸を。
「いやでかくない!?」
「常に広がり続けているからな。前はもう少し小さかったぞ。それに、これでも侵食は抑えられている方だ。人間たちが生息域を守るために木を伐り続けていてな。それでも侵食速度の方が早いのだが」
生息域て。
確かにドラゴンからしてみれば人間の生活圏も生息域で合ってるんだろうけど。
「人間も、以前はもっと多くて、国というものを作っていたのだがな。大森林が広がるにつれて立ち行かなくなったらしく、今は街や村という集団ごとにまとまり、首長という指導者を立てて生きているようだ」
それってかなり危機的状況では?
「それに、エルフやドワーフ、獣人、小人族、巨人族といった似たような種族と争うことも多かったのだが、今ではめっきりだな。今はそれどころではないのだろう。かといって協力し合っている様子もないが」
それは……うん。
ノーコメントで。
「そもそもなんでこんなに大森林が広がることになっちゃったの?」
「大森林の草木は成長速度が早いのだ。我が今えぐったこの雑草も、夕方頃には元通りになっているだろうよ」
地面の丸を爪の先で指すコクヨウ。
「かなり早いね……」
午前中にむしった庭の雑草が夕方には元通りになっている、と考えると恐ろしい。
「木々は、外縁部に行くにつれて成長速度は遅くなっていくが、それでも芽が出てから成木になるまで5日程度だろう。この辺り、中心部では1日もあれば育つ」
なんて成長速度。
木の上を飛び越える修行をする忍者も真っ青だ。
そんな修行が本当にあったのかは知らないけど。
「中心部は大型の魔物が数多くいるからな、毎日のように踏み倒され、なぎ倒されているが……外縁部は小型で弱い魔物しかおらぬ。倒される木の数もたかが知れているのだ」
「結果、人間が伐るしかない、と」
「そういうことだな」
それは人間も、国を解体せざるを得ないわけだ。
焼け石に水だとわかっていても生活圏を守るので精一杯だろうから。
「だが、今すぐどうこうなるわけではない。人間は案外しぶとい。だろう?」
異世界人とはいえ人間である私を気遣ってだろう、おどけるようにコクヨウが言う。
「うん、そうだね」
私があれこれ思い悩んでいても何にもならない。
というか、どうにも出来ない。
どれくらい大きいのかもわからない大陸の、大森林のど真ん中から動けないのだから。
動いたらコクヨウの言うようにあっという間にプチッとなりかねない。
プチッとならなくても、間違いなく迷った挙句の即身仏、だ。
自分のこともままならないのに、他人のことまで手を出そうとすれば、共倒れになることは火を見るよりも明らか。
今は生き残るために手を尽くすのが最善だ。
よし、と気合いを入れたその時。
きゅるるるるぅ……。
間抜けな音が響いた。




