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第三十七話 「遺跡探索」

 ランスの勘は当たった。

 ボーイへの道すがら先の方で商人の馬車と乗合馬車がならず者達の銃撃に遭っていた。

 戦っているのは商人が用心棒として雇った護衛が二人だけだった。

 デルター、ランス、コモ、ユキはすぐさま参戦し、ならず者達を追い散らすことができた。

「ありがとうございます、助かりました」

 商人と乗合馬車の御者が礼を述べてきた。

「良いさ、気にするな。怪我人も死人も出なくて良かった」

 デルターが言うと、コモが手をゆっくり突き出した。そして彼はニッコリした。

「救援料、金貨三枚ずつ」

「守銭奴」

 ユキが軽蔑したように溜息を吐いた。

「うるせぇ、金が無きゃ生きて行けねぇだろう。良いのかい、アンタも賞金稼ぎなんて不安定な職なんだろ? こういう時に金をせびらなきゃどこでせびるっていうんだ」

 コモがユキに向かって言うと、彼女は応じた。

「賞金首がいるなら話は別だがね。見たところただのチンピラじゃないかい。デルターやランスを見習って私は人助けということにしておくよ」

「ちっ」

 コモは腕を引っ込めた。

「あの、お金に困っていらっしゃるのですか?」

 商人が尋ねて来た。

「いや、そんなことは」

 ランスが言いかけたところでコモが身を乗り出した。

「何か美味い商売でもあるのか?」

「あ、ええ、噂ですけどね」

「話してくれ」

 コモはすっかり興奮気味に応じていた。

 デルターもそうだが、ランスもユキもそんな言葉には惑わされず、半信半疑で耳を傾けていた。

「ボーイの町の近くに古代の遺跡があるのですが、そこには年代物の骨董品が多数眠っているという噂です。ただ興味を持った人々が赴いたようですが、遺跡の罠に掛かり死んだり怪我をしたりと、まだまだ遺跡は解明されていない状況です。ボーイの町に置かれた考古学研究会の支部が腕利きの護衛、兼、挑戦者を随時募集しているようです」

 商人はそう言った。




 二



「アンタってホントに体力無いね。今まで何してたのさ」

 夜、ランスの身体が限界を迎え、一行は街道で野営した。

「実は、引きこもっていた時期がありまして」

 ランスは恥じる様に苦笑いしユキにそう言った。

「そうかい。それでもチンピラ退治の時はよく頑張ってるように見えたけどね」

「何というか、あの時は必死でしたから」

 ランスは応じた。

「火事場のクソ力ってやつかい」

 ユキはそう言うとビスケットの様な乾パンを食べた。

「おい、それでどうするんだ?」

 コモが全員を見渡して尋ねた。

「遺跡の件か?」

 デルターは溜息交じりに「この守銭奴が」と思いながら応じるとコモはニヤリと笑って頷いた。

「そう、俺は行くぜ。未知のお宝が待ってる」

「ですが、そういう宝物や価値のある物は考古学会の資料になるんじゃないですか?」

「あん?」

 コモがランスを振り返る。

「つまり、お宝は考古学会のもので、我々は護衛料金を貰うだけってことですよ」

「ランスのいう通りだろうな」

 デルターが言うとコモはかぶりを振って、真剣なまなざしで訴えた。

「お前ら来てくれないのか? このコモ様にどれだけ助けてもらったか、恩義とか感じないのか?」

 ああ、まただ。

 デルターは、コモの守銭奴魂に火が付いたのを悟ると溜息すら吐けず呆れていた。

「ランス! お前、デルターから貰った金で旅して楽しいか!? お金ってのは汗水流して働いて稼ぐから意味があるんだろう!」

「ええ、まぁ」

 ランスは少々居心地悪そうに微笑んだ。

「お嬢さん、アンタも不安定な職業だ。職業に貴賤は無いっていうが、稼げるときに稼いで置かなくていいのか? 弾薬だって今回のでけっこう消費しただろう?」

「まぁ・・・・・・ね。それとお嬢さんは止めてくれないかい」

 ユキにしては珍しくこちらも歯切れ悪く応じた。どうやら今回の人助けで弾薬を奮発してしまったらしい。

「デルター、この二人は俺に着いて来るってよ。どうする?」

 ランスもユキもそれぞれ痛いところをズバズバと突かれて、表情が少々浮足立っていた。

「遺跡っても死者が出るんだろう? そんな危険なのにわざわざ首を突っ込むのか?」

「危険だからこそ、金払いが良いってことだろう。現にさっきの商人も言ってたろう、随時募集してるって。それだけ危険な仕事だ。だから金払いが良い証拠だ。そうじゃなきゃこのコモ様が交渉に乗り出したって良いんだぜ?」

 コモがいつもの調子で捲し立てる。

「お前らはどう思うんだ?」

 デルターはランスとユキに尋ねた。

「まぁ、その、危険かもしれませんが、興味のある仕事ですね」

 ランスが意欲的に言った。デルターは虚を衝かれた気分だった。ランスが働きたいと言っている。

「ユキ、あんたは?」

 すると彼女は盛大に溜息を吐いた。

「正直、今回、弾薬を補充すると、財布が底を尽くわね」

「そうだろ、そうだろ」

 コモがニコニコしながら頷く。

 ランスは働くことに興味を示している。ユキも金が無い。俺は人助けをして僧籍復帰のために神に少しでも認められたい。

 俺にも下心はあるんだな。

「分かった。だが、俺はボランティアとして参加する」

「デルター、お前、相当金持ちなんだな。今回もボランティアか」

 コモが軽く驚いたように言った。

「俺の金じゃない。この金はマイルス神官長がくれた大切なお金だ」

 するとランスがハッとしたように目を見開くが、デルターはかぶりを振って止めた。

「ランスお前は何も気にすることはない。旅に誘ったのは俺の方だ」

「で、ですが、そんな大切なお金を半分も私なんかが頂いてしまって・・・・・・」

「良いんだよ。お前は俺と一緒に王都を目指してくれるんだからな、相棒」

 デルターは申し訳なさそうな顔をするランスに歩みより、肩をバシリと叩いた。

「だが、今回働くことに興味を持ったのは良い傾向だ。やるだけやってみな」

 デルターが言うとコモが割り込んだ。

「みようぜ。だろ? ボランティアさん」

「まぁそういうことだ。とりあえず、見張りを決めて仮眠するぞ」

 デルターが言うと三人は頷いたのだった。

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