第十五話 「謎の男キンジソウ」
「金貨二十枚だって!?」
色褪せたカウボーイハットの男が皆の気持ちを代弁するように声を上げた。
「そう、金貨二十枚だ」
キンジソウが答えた。
だが、この男の不敵そうな部分と、水路について知っていたことを思えば、この男はきっと強いのだろうと誰もの目が訴えていた。せっかく現れた頼もしい存在を逃がして良いものか。
「後で町長達に請求するというのではどうだ?」
もう一人の男が言ったが、キンジソウはかぶりを振った。
「今だ。今貰えなきゃ俺は出て行くだけだ」
「町民全員の命がかかってるんだぞ! 皆が心を合わせようとしているのに、それでも金が欲しいのか!?」
色褪せたカウボーイハットの男が怒鳴るが、キンジソウはどこ吹く風。ニヤリとするだけだった。
「仕方あるまい、ワシらの持ち合わせでこの場は凌ぐしかない」
老人がそう言って財布を出す。
「悪いがワシは金貨二枚きりだ」
他の者達も渋々老人に続いた。
老人のを合わせて全部で八枚の金貨が出てきた。
ランスが一枚出すと、デルターは溜息を吐いた。
神官長から貰った大事な金だが、人助けのために消えるのならこれも天命か。
「九枚だ」
デルターは金貨を祭壇の上に置いた。
並んだ金貨を見てキンジソウは頷き、嬉しそうに懐に収めると言った。
「戦える奴はついて来い。水路から潜入だ」
二
キンジソウに続いたのはデルター、ランス、ヤマウチヒロシ、色褪せたカウボーイハットの男で、彼はベンと名乗った。
老人ともう一人は援軍への状況説明と、女子供達の護衛に残った。
どの道潜入するなら少人数の方が良い。とは、キンジソウの弁だった。
街道を北、つまりラーズ方面へ行くと森へ続く小道があった。
「これだ」
キンジソウは言った。
そして先に歩き始める。
デルターが後に続こうとした時だった。
「おい、本当にあんな得体の知れない奴を信じるのか?」
色褪せたカウボーイハットの男、ベンが言った。
デルター達は足を止めた。
「確かに、賊の仲間で示し合わせて私達を誘っている可能性もあるが・・・・・・。しかし、あれだけの大金で動いたのだから、金にだけは忠実だと信じるべきでは無いか?」
ヤマウチヒロシが応じる。
「そうだな。それに戦い慣れてそうだし、正直俺達、素人集団で行動に出るよりはマシってもんだろう」
デルターが言うとベンは不承不承という様子で頷いた。
小道に駆け込むとキンジソウが待っていた。
「どうしたんだ、俺を賊に売ろうとか相談でもしていたのか?」
不敵な笑顔にヤマウチヒロシが答えた。
「その逆だ。アンタが私達を売ろうとしているのでは無いかと思ってね」
「で、結論は?」
キンジソウが尋ねる。
「信じることにしたよ。金には忠実だろうってな」
デルターが応じる。
「そうだな、金の分の働きはする。それよりここから少しそれるぞ。はぐれるなよ」
キンジソウは茂みの中を進んで行く。
「行きましょうか」
ランスが言い、デルター達も後に続いた。




