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第十三話 「さらばシールの町」

 今度は一日で独房から出て来れた。

「ま、運が無かったな」

 やる気の無い保安官は同情的に言った。

 ガンベルトと武器一式を返却されると、デルターは事務所の外に出た。

「デルターさん!」

 ランスが待っていた。

「よぉ、ランス待たせたな。腹が減ったぜ」

「その件なんですが、昨日のお店の店主がデルターさんに御礼がしたいと言ってましたよ。食事をタダにしてくれるとか」

 デルターは笑った。

「そいつは良い」

「私もあの時、デルターさんのように勇気を出していればタダ飯だったんでしょうけど」

 ランスは苦笑した。

 デルターはその背中を叩いた。

「保安官達を早く呼んでくれたお前の手柄でもあるさ。お前は陰のヒーローだ、ランス」

「陰のヒーロー。カッコイイですね。そうか、私が陰のヒーローか」

 二人は件の店まで行った。

 店主と給仕の女が気付き、デルターとランスを席へ案内した。

「昨日はありがとうございました。そちらの方も、保安官達を急いで呼んできてくれて本当に助かりました」

「いやいや、こう見えて学生時代五十メートルを六秒台で走ってたんですよ。健脚のランスと周りからは言われてましてね」

 ランスは自分までもが評価されたことに気を良くしたのか、鼻高々に言った。

「お二人の食事は無料にさせていただきます。気の済むまで食べ尽くしていってくださいね」

 店の主が言った。

 他の客、と言っても飲んだくれの男達が羨ましそうに見ていた。

「お二人はあんな酔っ払うだけの人達とは違いますもんね」

 給仕の娘がおかわりを持って来て微笑んだ。

「パンももらおうか」

「はい、喜んで」

 デルターが言うと給仕の娘はくるくると動いて行った。

「ヒーローって気分が良いですね」

 ランスが言った。

「でも、いつもこうして評価をして貰えるわけでは無いですよね。こういうことが一度あったからといって、今後も人助けに見返りがあると思い込むのはいけないことですよね」

「おう、お前も言う様になったな」

 デルターが言うとランスは応じた。

「いいえ、無職で引きこもっていた時に読んでいた本にそんなことが書いてあったんですよ。まぁ、残念ながら今も無職ですが」

「俺も無職さ」

 二人は昼から腹いっぱい食べ、店主と給仕の女、酔っ払い達に見送られて外に出た。

「さて、教習は良かったとしても思ったよりも長くこの町に居ついちまったな」

「ミル、シール、この次はドールの町ですね」

「人形でもありそうな町だな」

「だとしたらこの町はステッカーだらけじゃないとおかしいですよ」

 二人は歩きながら宿へ戻った。



 二



 頭にはカウボーイハット、腰のガンベルトにはリボルバーピストル。後ろにはナイフ。水袋に、頭陀袋の中には乾燥させた携帯食料に弾薬。準備はバッチリだ。

「この格好で馬じゃ無いのもカッコがつかないですが、まぁ、協力してください」

「良いさ」

 ランスは就職のために足腰と体力を鍛えたいのだ。デルターも、なまった身体をほぐすにはちょうど良いと思った。問題はまたランスの足が駄目になって途中で野宿する羽目にならないかどうかかもしれないが、もうそんなことはどうでも良い。ランスは良い奴だ。それだけで満足だ。

 デルターとランスは色々なことがあったシールの町を振り返り街道を歩み始めた。

 乗合馬車が一台、また一台と、隣を砂煙を上げて通り過ぎて行く。

 その時、風でデルターの帽子が飛んだ。

「ハゲだー! アハハハハハッ!」

 通り過ぎた乗合馬車に乗っていた子供達がそう声を上げた。

 デルターは無言で帽子を拾いかぶった。

 ランスが少々不安そうな顔をしていた。

「大丈夫だ。あんなんでもう怒ったりしない。それに相手はガキだぞ」

 デルターが言うとランスは安心したように表情を緩めた。

「さぁ、行きましょうか」

「そうだな」

 二人は再び歩み出したのであった。

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