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また会う日まで

 国王はデルターを救国の主だと称し、名誉ある地位を儲けようとしたが、デルターはデルターなりに丁重に断った。ならば褒美をと言われ、それも辞退した。そんな暇があるなら荒れた王都をどうにかして欲しい。国を隅から隅まで更に豊かにして欲しい。デルターはそう言い、ランスと共に城を出た。

「ん? ケペの奴、どこ行った?」

 敵を足止めするべく残った麗しの女性銃士の姿が見えなかった。

「ケペ? お知合いですか?」

 ランスがそう尋ねて来たのでデルターは驚いた。

「お前、まさか覚えてないのか?」

 だが、デルターの頭の中にケペという人物の姿が砂嵐のように消え去って行くのを感じ、手が届く前に何も思い出せなくなった。

「思い違いだったらしい」

 デルターが言うと、黒猫が歩み寄って来た。

「ニャー」

「おう、ペケさん」

「デルター無事か?」

 そこに続いて現れたのはキンジソウだった。だが、彼がどこにいて何をやっていたか、デルターは思い出せなかった。

「お前こそ無事だったのか?」

「まぁな。少々釈然としないこともあるが、俺は無事だ」

 キンジソウも困惑気味に応じた。聴けば、いつの間にか周辺をうろつき残党狩りしていたのだと言う。彼がそういうならそうなのだろう。

「ニャー」

 デルターが納得するのを見届けたようにペケさんが鳴いた。




 2



 王都の大聖堂は神官こそ、鴉団の戦いで数を減らしたが、建物は幸い無事だった。

 デルターはそこの地位ある役職の神官に言われ、池の中へと足を踏み入れた。何て冷たいんだろうか。ちなみにカウボーイハットはヴェロニカが預かっている。彼女とランス、キンジソウにペケさん、コモがデルターの洗礼の様子を見守っていた。

「うへぇ、冷てぇ」

 足の先から服を着ているのにも関係なく、全身の骨を伝わって冷えが突き抜けて行く。

「デルターさん! 頑張って!」

 ランスが声援を送る。

「おうよ」

 デルターは池の中にある滝を目指した。勢いは無く、チョロチョロと水が流れ落ちている程度だ。

 洗礼さえ受ければ、俺も僧籍復活なんだ。

 デルターはふくらはぎまで浸かる水を足で掻き分けて滝の下へ行き、ここで気を引き締めて滝の下に入った。

 水がハゲ頭に直接かかり、デルターはその冷たさに改めて小さく悲鳴を上げた。

「デルター殿、六分です。六分の間、滝行から逃げずに留まりなさい。そうすれば私はあなたに証明書を発行しましょう」

「デルター、六分だ! あと、五分と、五十何秒か!」

 コモが声を上げる。

「デルター、頑張って!」

 ヴェロニカが続く。

「ニャー」

 みんなの声援を受けてデルターは滝に打たれ目を閉じた。

 思えば、色々あったな。死んじまった連中には申し訳ねぇが、悪い旅じゃなかった。思わず回想していると、ついに自分はここまで辿り着いたのだという実感が湧いた。

「もう、良いでしょう」

 神官が言った。

 デルターは滝から離れた。

「これで僧籍復帰ですね!」

 ランスが言い、キンジソウ以外の仲間達がおめでとうと言ったり、ニャーと鳴いたりしていた。

「おう、ありがとよ」

 デルターはこそばゆく思いながらも、その胸には希望が溢れていた。



 3



 数日後、証明書を貰うと、デルターはその足で故郷へ戻ることにした。資金の方は銃を売ったため、少し余裕がある。

 キンジソウとペケさんは姿を消していたが、城門前で、デルターはランス、ヴェロニカ、コモと、別れを惜しんでいた。

「すぐに私も追いつくからね」

 ヴェロニカが言った。彼女はここで負傷した人達を看ることになった。コモはそれが終わった時の護衛だ。コモが頷くのを見るとデルターは相棒を見た。

「ランス、何になるか分からないが、頑張れよ。お前にもお前の生きる道が必ず見つかる。遠回りになろうと必ずな」

 その途端、ランスはデルターに跳び付いた。

「あの時、あなたと出会わなければ、私は駄目なままだったでしょう。人生を楽しまず、ただただ苦悩し、苦しみ、のた打ち回っていた。でも、デルターさんとの旅が私を変えてくれました。なりますよ、なってみせますよ、一人の漢に」

「おうよ!」

 デルターはランスの頭を優しく叩いた。

「手紙、必ずくれよな」

 ランスは泣き腫らして真っ赤な目を向けて頷いた。

「必ず」

 デルターも頷き返した。

「それじゃあ、俺はもう行くことにする。また会おうぜ」

「今度もクビになったりしないでくださいね」

 ランスが言った。

「今度は大丈夫だ」

「道中気を付けて」

「ああ。こいつがある」

 デルターはベルトに挟まった棍棒を叩いた。

「惜しいよね、デルターさぁ、拳銃の素質ありまくりだったのに」

「もう済んだことだ」

 デルターはコモに向かって言った。そして前を向いた。太陽が門出を祝福するように柔らかい光りの帯を向けている。

「じゃあな」

 デルターは歩み始めた。仲間達の声がいつまでもいつまでも聴こえて来た。

 そうして聴こえなくなった頃、隣をいつの間にかキンジソウとペケさんが歩いていた。

「何だ、送ってくれるのか?」

「そういう契約だからな」

「ニャー」

「まぁ、一人旅じゃあ、辛気臭くなりそうだしな。のんびり行こうや」

 デルターは小さく笑い、同行者達を歓迎したのであった。



 乱暴者デルター fin

 最後までお付き合い下さりありがとうございました。

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