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双極姫譚  作者: 乃生一路
11/31

他/一から二へ

 儀典師団長ザイン・スェーグナは今日も忙しい。

 椅子に腰かけ、いそいそと書類に目を通している。いずれも、魔王幹部に関する事柄だ。世界中に散らばる儀典師団の兵士が送ってくる、何の実りもない魔王幹部に関する種々の情報である。


「護竜は未だ倒せず」


 それは自分が一番良く知っている。

 ザインが今いるところは、北方の魔王城に一番近い人間の領地である。ゆえに、護竜が元気に空を飛び回る姿は、もう幾度もその眼で見ている。挑んだことも幾度か。そのたびに返り討ちにされ、屈辱の情けに命を奪われずに済んでいる。

 護竜は、人を殺すつもりではないらしいのだ。

 叩きのめしはするが、深追いはしない。もちろん、叩きのめされてもなお魔王の領地に入ろうとする者は容赦なく喰いちぎられ、殴り潰され、焼き殺される。

 護竜は名の通り、魔王への入口を護り続けるのみである。

 この頃では、あの竜は我らとの戦いを楽しんでいる節すらある。

 近寄らなければ無害であるため、とりあえずは保留である。


「でぃーいーえむは不可侵状態」


 でぃーいーえむ改め、歯車の王。

 でぃーいーえむという間の抜けた名称を誰が用い始めたのかは不明であり、儀典師団ではもっぱら歯車の王という呼称を用いている。

現状として、対策を未だ練っている段階だ。

民衆にはその存在をあまり認知されていないが、儀典師団はこの幹部にひどく頭を悩ませている。

 いるのだ。

 いはするのだが、近寄れない。

 ある一定の範囲まで近づいたものは、この世から消える。銃で狙撃してみても、銃弾が途中で消失する。周囲に、なにか結界を貼っているらしいのだが、それがなんなのかはさっぱり分からない。幸いなことに無害であるため、放置でも未だ問題はない。

 ただ、魔王を倒すためには、この未知の化け物を倒さなければならないのかもしれない。鍵の代替者が現われれば、そちらを殺せば事足りる話なのだが、発見報告は今のところない。

 保留だ。


「コシュ、キョケン、コウザイの行方は掴めず」


 コシュはどこにいるか分からない。東のアメンの森が怪しいという出所不明の情報で赴いたものの、見つかったのはすぐ近くのアギョウ村の村長の家に保管されていた古酒こしゅだった。すっぱかった。

 キョケンはどこにいるか分からない。南のイヴの塔内部が怪しいということで赴いたものの、入り口が相変わらず閉ざされていて、押しても引いても斬っても焼いても爆発させても全部だめ。肩を落として帰還した。

 コウザイはどこにいるか分からない。鉱山ではないでしょうか、と部下の一人は言っていた。おそらく鋼材こうざいと連想したのだろう。剣の鞘で横腹を突いてやった。「ヴっ」と言っていた。

 保留、保留、保留。


「陽姫は────なんだと?」


 目を疑う。

 陽姫はその存在を周知されている。

 西に広がるものすごく広い草原の真ん中に、不可思議な長方形の建物が建っていて、陽姫はそこに住んでいるらしいことまで判明している。何度か討伐に赴いたものの、数多の光線に穴だらけにされた。銃弾より遥かに速いのは卑怯だ。

 今回の討伐でも、当然のように敗北だった。もう溜め息も出ない。

その上、今回は、


『陽姫に加え、もう一体が確認された』


 そのような旨が、報告書に書かれている。

 報告書には汚い絵が描かれていて、そこには顔の箇所に三日月のシンボルが描かれた幕をつけている双剣のヒトガタの姿があった。線の細さからして、女だろう。


「陰と陽、か」


 冷静に言いつつ、ザインは内心、奇声をあげたくなっていた。

 ただでさえ幹部には手こずっており、上の方々に魔王を早く倒せという無責任な催促をされているというのに、ここにきて増えるだなんて。


「とりあえずは、名称を変える」


 陰と陽の姫君──双極。

 それが新しき名称である。


「しかし、勇者とやらは、まだ現れんのか」


 ザインは、もう何もかもを人任せにしたい気分だった。

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