表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
双極姫譚  作者: 乃生一路
1/31

他/死した無名の独白

 私は今、死のうとしている。


 ソレらは私達の想像以上に化け物だった。侮っていたわけではない。充分な準備と、戦力を用意していた。ただ二人のヒトガタを滅するために、十を超える術士と、百を超える歴戦の勇士を引き連れて行ったのだ。なのに──


「……」


 陰と陽の姫君が、ああ……私を見据えて佇んでいる。

 象徴化した月と太陽でそのかおを覆い、片や双剣を握りしめ、片や鏡の破片を浮かばせている。彼女らはなにも言葉を発しない。ただ無言で在り続けた。


 あんなに多くいた仲間も、今や、私一人だ。

 幾重もの剣閃と、幾多もの光線。

 陰の姫を捉えることはできず、陽の姫に近づくことは不可だった。

 次々と斬られ、刺し貫かれ、あるいは焼き斬られ、分断されゆく仲間の最中に、私は双極の姫君の姿に見惚れてしまっていたのだ。

 

 それは憧憬であろうか、あるいは────陽の姫が、その白磁のごとき腕をあげる。陰の姫が地を蹴り、双剣を振るい生じる螺旋の剣閃、覆いはめくれ上がり、そのやはり美しき貌が覗く。右腕、左腕、右脚、左脚の感覚が途絶える。陰の姫の螺旋に斬り飛ばされたようだ。地に伏せる私の傍へ、陽の姫が近づいてくる。覆いから覗く貌に、金色の眼が輝いて──それはやはり、我らが主に相違なく。


「ここに、おられたのですか」


 陽の姫君はそして、私を見下ろし悲し気に笑われた。


「きっと、人違いなのですわ」


 なにをおっしゃる。

 その背後に輝く光芒は、きっと、天使の────

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ