フラッシュバック
フラッシュバックをよく見るようになった。頻繁に過去の思い出が鮮明な映像となって脳裏に浮かぶのだ。駅で電車を待っていたり電車に乗っているとき、風呂で湯船に浸かっていたりなどぼうっとしているときはもちろん、最近では歩いているときや食事中、そして社で会話をしているときなどにも突然現れるようになってきた。妻にそのことを打ち明けてみたが、「歳をとるとそんなもんでしょ」と一蹴されてしまい、私もそう納得することにした。
ある日、帰宅途中に駅の階段を下りていると突然立ちくらみを起こし足を踏み外してしまった。幸いにあと数段というところだったので骨折や出血などの大事には至らず、体のあちこちを打っただけで済んだが、介護してくれた駅員が、もしものことがあるといけないからと勧めるので私もそれに従い翌日病院で検査を受けることにした。
検査結果の面談で医師は告げた。
「事故で打った部分については何処にも異常は見られません。痣になり数日は痛むかもしれませんが大きな問題は無いでしょう」
そこまで言うと彼は息を整え言葉を継いだ。
「……ですが、今回の検査で良くないものが見つかりました……」
その真剣な表情と重苦しい口調に、私はこれから告げられるであろう不吉な内容を予感した。
そして、そのとき私はフラッシュバックの正体を理解していた。あれは、とても長く、とてもゆっくりとした走馬燈であったのだと。




