プロローグ
初めまして!椚あすかです!この作品が初投稿です。感想やここは変えた方がいいんじゃいっていう指摘をぜひぜひ送ってくださいヾ(@⌒ー⌒@)ノ
ひらりひらり。そんな効果音が聞こえてきそうな桜の散る春のこと。ふっと顔を上げたら、からっからに晴れた空が広がっていた。青くて青くて、吸い込まれそうだった。白い雲も小さな点になる飛行機も一切見えない。稀に視界の中に桃色の花びらが入り込む。どこか一部分、茶色にくすんでしまった花びら。
私は頭の中でカメラのシャッターを切る。黒色の愛用の一眼レフだ。もう持つことは叶わない、大好きなカメラ。小5の時、誕生日に買ってもらったカメラ。もらってすぐ、落っことしてしまって、レンズの横についてしまった傷も忠実に頭の中で再現する。
一体何回、幻のシャッターを切っただろう。何枚、ブレずに撮れたのだろう。
荷物を担ぎ込んだばかりの部屋のベランダでそんなことを考える。ベランダから下を見ると、汚れた看板が見える。誰かがいたずらで灰色のペンキを塗りたくったみたいだ。辛うじて、「水島うど」と読むことができる。本当は最後に「ん」がつくのだけれど、長年雨に晒されてきたせいで、完全に読めなくなっている。
耳をすませば、「いらっしゃい」と威勢のいい声が聞こえる。
この街を飛び出して、もう一年。ああ、私はもう一度この街でうまくやっていけるのだろうか。東京にいた時みたいに、また仮面を被り続けるのだろうか。不安でいっぱいになった私を、青い青い空はぼんやりと眺めていた。