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曽我物語外伝 奥州再乱  作者: かんから
工藤の企み 文治五年(1189)晩夏
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第一章 第一話

 嫌に暑い日であった。


 頬には汗が流れ、窓辺からは海が湯気を立てているように見える。


 真備は告げた。「鎌倉の使者が参っております。」と。鎌倉が何の用か……この敵地奥深くに。

別に会いたくないのだが、続けて聞いた言葉で、対面することに決めた。通してみると、太刀を携えた青い直垂姿の武者が堂々と入ってきた。その後ろには、因縁の相手が従っている。


 「裏切り者めが。」


 高季はつぶやいた。そして、彼を睨んだ。彼は目を合わせることなく、無表情でいる。

 鎌倉方の二人は、用意された御座に腰を落とし、高季に向かって一礼をした。初めて見るほうは御家人の工藤と名乗った。都上がりの高貴そうな雰囲気であるが、一方で猛獣の目を持っているようだ。その工藤とやらは言った。


 「反乱軍の後ろをついていただきたい。」


 「できない。私と奴が盟友だと知ってのことか。」


 「もちろん、ただとは申しませぬ。」


 工藤は持ってきた長筒から一枚の文書を出した。そこには十三湊の権益を譲渡するとの内容が記されている。工藤は高季に不適な笑みを覗かせる。


 「それで、奴はどうなる。」


 「死んでいただきます。」



 高季はいきり立ち、そのまま文書のはねのけ、工藤の胸ぐらをつかんだ。工藤は一切の動揺を見せず、手を振りほどいた。一礼をすると、後ろの裏切り者を連れて、去って行く。

 



 ……目的はなんなのだ。


 断ることは百も承知だろう。そうでなくてもあいつを見たせいで、いまだ収まらない。・・・わからない。すると、横で真備が訊ねてきた。



 「殺りますか。」


 鞘に手を握る。高季は静止した。


「いや……。奴らも殺されないとわかってここにやってきたのだ。」


 人を遣わし、工藤らの後を追うとともに、他所へも訪ねるか確かめさせることにした。


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