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第四章 第四話
そこに、アイヌだろうか。何人かの青年がいた。ここあたりには我ら和人もいれば、アイヌも住んでいる。交易もしている。
はたして、我らの事情を知っているだろうか。
どちらでもいい。そんなこと。だまされようが何をされようが構わぬ。
すると、彼らは近づく。岩場に腰を下ろし、ひざまずく。
「オオカワノミコトデスカ。」
アイヌが聞いてきた。私は、「そうだ」と応えた。
「“北ノ兵”ハ、キマス。ココニクルマエ、エゾニワタシ、イマシタ。」
「アトハ、安東ノミコトガ、フネデツレテクルダケ。」
何もわからなかった。理解しようにも、頭が悪いのだ。いや、実は否応にも意味はわかる。アイヌの日本語がたどたどしいといっても、理解できてしまう。
「ああ、なんたることか。」
「ならば、お前達も味方になってくれるか。」
彼らは笑顔で応えた。
「ハイ、喜ンデ。」
この知らせは、外ヶ浜や秋田、そして東日流にも届いた。とてつもない動揺を与える。




