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第四章 第二話
夜……郎党は久しぶりに安心して寝付いた。疲れは頂点に達している。兼任もまた同じ。
しかし、彼にはやることがあった。ここ糠部や外ヶ浜、秋田、そして東日流に出兵の催促をしなければならない。筆と紙をもらい、したためる。慣れない左手。なんども書き直しては捨てた。
そのうち、うとうとする。
いつしか、小机の上に頭を載せて、寝てしまった。灯も消えた。
音がした。
ガタンという音。
鈍い音もした。
兼任は、目をあける。
……すると薄暗き中に、武装した佐藤らの姿があった。家来らが布団の上より、槍でやられていた。一言もなく逝ってしまったのか。
兼任はそのまま、立っている佐藤へ目をやった。すると、彼は泣いていた。泣きながら、持っている刃を兼任へ振った。
兼任は右に反れ、左の手より文鎮を投げた。文鎮は、佐藤の右目に当たった。彼は刃をおとし、目を覆う。
まだやられていない家来数人も事態に気付く。兼任は家来と目で合図し、急ぎ屋敷を後にした。さらに北へと行く。




