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曽我物語外伝 奥州再乱  作者: かんから
兼任の戦い 文治五年(1189)秋末
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第三章 第六話

 神も仏もあるものか。二度と、弓は引けぬし刀も使えぬ。兼任ら残兵はひたすら北へ逃げた。

鎌倉軍は平泉を再占領した。再び、白い煙が天へ流れていく。もう、夢は潰えた。


 そして兼任に一矢で報いた工藤は、追討使の足利あしかが義兼よしかねの覚えめでたく、恩賞を約束された。後に鎌倉より、所領の伊豆国伊東荘に加え、奧州の糠部ぬかのべ郡を拝領した。無論、東日流などでの調略活動も評価されてのことである。



 鎌倉軍は兼任を追い、ひたすら北へ向かった。これは鎌倉が、兼任の首をとるまで帰ってくるなと命じたからである。


 坂東武者は寒いのに慣れていない。いまだ十一月なのに、冬の寒さのごとく感じる。そんなときは、近くの民家に押し入って、温かい食べ物を奪うのが一番である。

奧州はみな脾人だ。敗者の土地。それに前回は頼朝公がいらっしゃったから好き勝手はできなんだが、このたびはいない。追討使の足利様は黙認している。

奪えるものは奪う。坂東に戻ったらできないこと。


何もかも自分の物にしながら、鎌倉軍は北進した。




 去った跡に、真備がいた。荒れ果てた田畑。平泉の夢も潰えた。人一人とて、いない。



 愕然とした。



 いくさは、嫌だ。 



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