第三章 第四話
平泉は朗らかに晴れていた。建て直している屋敷の群れ、カンカンと槌の音が響いている。
残る五百騎は、心底疲れ果てたまま何も考えることなく、夢の地へ戻った。
彼らを見て、他の者はどう思っただろうか。未来は潰えたと感じ、その日のうちに平泉から逃げていった。中途半端な建物が悲しい。
兼任は言った。
「衣川を挟んで、防衛線を張る。南東の観音山に陣を置き、地の利を生かす。少数が多数に勝つには、これしかない。」
五百が五万以上の軍勢に勝てるだろうか。しかし、“夢”を手放したくない。
依然、体の傷は癒えぬ。だが、戦いは刻々と近づく。
数日もしないうちに、南方から白い煙があがるのが見えた。観音山から真南、一関からであった。鎌倉軍が釜を焚いているのだ。その様はあたかも、狼煙のようでもあった。その煙の量は半端なく、大軍のありようをうかがわせた。
ここで、兼任は勝負をかける。
「相手は大軍。すでに我らが少数だと侮って、油断している。だからこそ、こうも平泉の真近で夕餉を喰っている。」
「静かに動け。旗を掲げるな。もう少しで日は沈む。今からいけば、一関には真夜中に着く。」
夜襲だ。




